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第13話 探検、1層上


 碁盤目(ごばんめ)状に通路が張り巡らされているこの階層を探検する目的は果たして何だろう?


 飲み食い不要の俺が、あえてリスクを取りに行く理由は何だろう?


 考えても仕方がない。いまは闇の眷属としての本能とでも思っておこう。


 少し先の交差路(こうさろ)にゴブリンが二匹現れた。そいつらも俺を見つけたようで、どうしようかと迷ったようだが結局手に持ったこん棒を振り上げ俺に向かって奇声(きせい)を上げながら走り寄って来た。


「グギャギャー!」「ギャギャギャー!」


 一度後ろを振り返り、何もいないことを確認した俺は迎撃態勢を取った。


 俺も頭蓋骨(ずがいこつ)を割られてしまうと、おそらく死んでしまうだろう。首から上を守る感じで、こん棒を顔の前に構えておく。スケルトンの俺が死んでしまうというのも変か? たおされるとでもしておくか。


 最初にこん棒を振り上げておどりかかって来たゴブリンの一撃を、受けの体勢がよかったためか左手のこん棒、リフレクターで難なく受け止めることができた。


 逆に、そのゴブリンは、持っていたこん棒をリフレクターの煩瑣効果か何かで吹き飛ばされて、その上こん棒を持っていた右手の手首があらぬ方向に曲がってしまっている。そいつは痛みに顔をゆがめて悲鳴を上げながら後ろにさがっていった。


 残った一匹はややおよび腰になり、手に持ったこん棒を突きだしてきた。腰の引けた攻撃だ。その突きをリフレクターで軽く払って、一歩踏み込み、エクスキューショナーをゴブリンの首めがけて一閃した。


 スポーン!


 そんな小気味良い音がしそうないい感じで、ゴブリンの頭が飛んでいき、後ろにさがって様子(ようす)をみていたゴブリンの足元に転がった。


 もう一度、そのゴブリンが何かわめいて、くるりと後ろを向いて逃げ出していった。


 まずい、仲間を呼ばれるとまずい。仕留(しと)められるうちに仕留めてしまわなくては。


 とっさに腰のベルトに差していたダガーナイフ、スティンガーを引き抜き逃げていくゴブリンに投げつけた。別に生前、野球選手だったわけでもナイフ投げや何かの訓練をしていたわけではないのだろうが、スティンガーはきれいな弧を描いてゴブリンの首の付け根辺りに、豆腐(とうふ)に釘を突き刺すような感じで申し訳程度に出っ張ったつばの辺りまで突き刺さった。


 俺のスティンガーを首筋(くびすじ)に受けたゴブリンは前のめりに転がってそれっきり動かなくなってしまった。


 ゴブリンがスティンガーの一撃を受けた時、すーっと、さわやかな風が体に吹き付けてきたような気がした。これがスティンガーの特性、吸血武器、ヴァンピック・ウェポンの力なのだろう。


 すぐに、駆け寄ってスティンガーを回収し、転がってこと切れたゴブリンの持ち物をあらためてみたが腰布しかなかった。


 それでも貴重な布製品なのでありがたくいただき、腰骨(こしぼね)くくりつけていた袋の中に突っ込んでおいた。もういちど取って返し、先に殺したゴブリンの腰布も回収したのは言うまでもない。


 ゴブリン相手だと、間合いの関係もあり、囲まれなければなんとか対処できそうだ。とにかく早期発見、早期対処が大切だ。



 あまり複雑な道順をたどってしまうと、階段のある場所まで戻ってこられなくなると困るので、今はこの階層に上ってきた時正面に見えた通路をまっすぐに進んでいる。


 途中、何度か交差路から左右に伸びる通路の先にゴブリンらしき姿を見かけたが距離があったせいか、こちらに気づかなかったようでそのうち見えなくなった。


 通路を一時間ほどまっすぐ進んでいったところ、正面に上り階段が見えて来た。最初の上り階段を上りきったところからここまで一本道だったわけで、階段のある場所が分かりやすい構造なのでありがたい。


 ここまでくる途中、罠のような物もなかったので、かなり親切設計だ。今度は、この突き当りから左にぐるっと回って、最初の階段のところまで戻ろう。いま碁盤の目の端の辺にいるのなら可能なはずだ。


 歩いているとゴブリンの他に大きなネズミ目に入った。遠くからしか見ていないので、本当にネズミだったのかどうかは分からない。


 実物は見たことはないがカピバラとかいう巨大ネズミに似た生き物かも知らない。


 モンスターたちの生態系がどうなっているのかを知ることは今後役立つこともあるのだろうが今は何とか強くなって生き?延びることだ。


 アンデッドは言葉使いが難しい。


 突き当りを左に曲がって、しばらく行くと、通路の上に瓦礫(がれき)が散らばり、右の壁に穴があいていた。


 穴をのぞくと、その先が洞窟(どうくつ)のようになっている。


 ここで、洞窟を探検してしまうと、探索範囲が広がりすぎて収拾(しゅうしゅう)がつかなくなる。しかも、今見えるその洞窟はいままで人工的に見えていた通路と違い、自然にできた洞窟のような感じだ。やはり、後回しにしたほうが良さそうだ。


 横道の洞窟は無視して、まっすぐ先に進んで行くことにした。


 謎たいまつに照らされる通路が続き、とうとう通路が左折する突き当りまで来てしまった。用心のため、角を曲がる前に通路の右脇から首を出して前方を確認したところ、何も動くものは見えなかったが何かの音が聞こえた。


 この音は、なんだ? かすかに金属音と、叫び声のような音が聞こえている。まだよく見えないが、通路を曲がったその先で、何かが何かと戦っているようだ。



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