第10話 俺の相棒たち、ヤヴァくないか?
前方から聞こえて来た声の正体を探るべく、思いっきり腰を落とし、かつ通路の壁際に沿って進んで行く。
生身の人間だったころこの姿勢での前進したなら、10メートルも行かないうちにへばってしまいそうな姿勢だが今は何ともない。やはり魔物になったおかげか、進化したおかげなのだろう。
「〇△#・?&%%」
「/-&#!!}&」
二匹のゴブリンが何やら話しながらむこうに向かって歩いている。おそらくその二匹は上の階層から階段を下ってこの階層にやって来たのだろう。
何をしに来たのかはわからないが、この階層でうろうろされたくはない。
ベルトにぶら下げていたぼろきれを素早く足に巻いて、なるべく音を立てないよう、二匹の後をつけていくことにした。
足音は、ぼろきれのおかげでだいぶ消音できたのだが、上半身に着けているブレストプレートが歩くたびにゆれて、それがろっ骨にあたってポコポコ音が出る。
余ったぼろ布がもう少しあったので、下の方のろっ骨とろっ骨のすき間に、そのぼろ布を突っ込んで緩衝材にしてやったら、鎧が骨にぶつかる音が収まった。
ろっ骨の隙間が意外に便利なことに今さらながら気づいてしまった。
スケルトンになったおかげで、ゴブリンの嫌な臭いを嗅がずに済むが、敵の臭いを察知できない弱点でもあることに気付いた。
まあ、臭いで早めに気付けば対処できるくらいの敵ならば、気付くのが多少遅れても、なんとかこちらがやられる前にたおしきれる可能性が高いと思う。
二匹のゴブリンをこっそりつけていくと、どうやらあのゴミの山に用があるらしく、通路をそちらに曲がって行った。連中にとって必要なものがゴミの山の中にあるのだろう。
不思議松明で明るく照らされたゴミ山部屋。床にひれ伏すくらいに姿勢を低くしてゴブリンたちを上目で観察する。
思った通りゴブリンたちは、ゴミ山で何かを漁って拾ったものを持参した袋に入れている。連中の拾っているものがたまにキラキラと光を反射しているところを見ると、なにかの金属を回収しているようだ。
俺は、連中が一心不乱にゴミ漁りをしているのを良いことに、連中のいるゴミの山の反対側に回り込んで、少しずつ、ゆっくりと、手前にいるゴブリンを目指して近づいていく。
ゴミ山の側面から一匹のゴブリンがわずかに見えるところまで近づけた。そいつは下を向いてゴミ山にいる黒スライムを器用に避けながらゴミを漁っている。
今だ!
一気にゴブリンに近づき、右手の剣、ソード・ブラック・エクスキューショナーを振りかぶった。その動きでできた影に気づいたゴブリンがこちらに振り向き、一声叫んだ。
「グギャー!」
シュッ!
ゴブリンの上げた声とエクスキューショナーを振り抜いた風切り音が重なった。
勢いよくゴブリンの首から緑色をした血が噴きあがり、胴体と泣き別れた頭がゴミの山に転がって床まで転げ落ちていった。
振り抜いた剣の持ち手には、まるで硬いものを切った感触が伝わってこなかった。エクスキューショナー、切れすぎじゃないか?
仲間の叫びを聞いたもう1匹が、俺に気づいたが、俺の姿を目の当たりにしたせいか、あからさまに怯えている。
これをチャンスと見た俺は、一気にゴミ山の上でゴブリンとの間合いを詰め、両手を体の前でブロックするような構えを見せるゴブリンに左手に持つこん棒、ブラック・クラブ・リフレクターをたたきつけた。左手にはほとんど反動が伝わってこなかったのだが、
ゴキッ!
そんな音をたててブロック体勢を取っているゴブリンの両手があらぬ方向に折れ曲がった。目を見開いて俺の方を見るゴブリン。
一瞬だけ目と目が合ったような気がした。俺はかまわず右手に持ったエクスキューショナーを振り上げ、振り抜いた。
スッポーン!
今度はきれいにゴブリンの頭がすっ飛んで、遅れて残った首の切り口から緑色の血が噴き出した。
いまのところわが軍はいないが、まさに圧倒的じゃないか。
たおれ伏して、いまだに首から緑の血を流しているゴブリンの死体に早くもスライムが寄ってきている。近づいて来るスライムをたたきつぶし、切り裂いていき、ゴブリンの死体から布地を剥ぎ取った。
布地といっても、それはゴブリンの腰布なわけだから十分バッチいのだが、臭いを感じないので、貴重な布資源として回収しておくことにしたわけだ。この臭いで敵に先に察知されてはまずいので、忘れずにまたあの池に行って洗う必要がある。
二匹のゴブリンが持っていたのは見たまんまの布袋で、中からいろいろな金物が出て来たが、残念ながら俺が利用できそうなものは見当たらなかったので、中身をゴミ山にぶちまけて2枚の袋だけ回収した。
しっかし、俺の左右の武器たち、すごすぎ。ヤヴァくないか?
ゴブリン語は適当です。何かを文字変換したわけではないので内容は無意味です。
指輪などに刻まれている謎文字は、ちょっとだけ意味があります.。




