第六話 パパとの会話と安心。
何言ってんだこいつ?と思ったが、パパは私がまだ言葉を理解できない赤子だと思っているからしかたない。だが、私は絶対に魔王にならないし、魔王になりたいとも思わない。
パパはゆっくりと私をベッドに下ろす。
「お前は、レイアの形見だ。絶対に死ぬことのない魔王に育てよう。そして、私を殺すのだ。永遠の命を持つ、私を」
永遠の命??不死身ってこと??
「あう、うう?」
(なんで、死にたいの?)
「…お前、俺の言うことを全てわかるのか?いや、そんなことないか」
自分の考えを否定するように首を振る。
いや、わかってるわかってる。全部わかるわ。
「お前もいずれわかる…永遠の命の辛さをな」
そう言って、パパはベッドから離れ、従者の男に扉を開けるように言って部屋を出て行った。
いや待てい!!今の言い方じゃ、私も永遠の命持ってるみたいじゃん!!いらないよ!?
部屋の隅にいたエミリーとマリアは、パパが出て行ったのを見てすぐに駆け寄る。
「お嬢様、ご無事ですか」
泣きそうな顔をしたエミリーが、私を優しく抱きしめる。
マリアは、もう泣いていた。
そんな一大事だった?大丈夫だよ、みんな安心してよ。
私は、なんだか温かい気持ちになって、みんなの思いに応えるようにエミリーの背中に手を伸ばした。
「あう!」
(元気よ!)
これから先、いろいろ不安すぎるが、この2人だけは安心できる存在だと思った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ディー、お前顔どうした」
銀色の髪を短く切って、黒色の肌を持ち、霞んだ青を瞳を輝かせた男が近寄ってくる。
なんだか憎たらしい笑顔を浮かべて。
「どうもしてない、いつも通りだ」
「どこがいつも通りだよ!なんかいいことあったんだろ?俺にはわかるぜ!なんたって、125年の付き合いだからな!!」
馴れ馴れしく肩に腕をかけて、当たり前のように隣を歩くこいつは、俺の右腕であり友であり魔王軍隊長であるクローブだ。
上半身丸出しで、下半身は黒地に金の刺繍が施してある履物を履いている。足はいつも裸足だ。俺には理解できんスタイルだが、当の本人はイケてると思っているので何も言わない。
「…俺を殺してくれるかもしれないやつを見つけた」
「まーたそれかよ!!お前今までそういう奴何人ダメにした!?強い奴が居なくなるから困るんだよ!俺が!」
「お前は遊び相手になってほしいだけだろう、俺は真剣に探しているんだ!」
「おーおー、そうかよ。ま、今の奴もどうせお前のことを殺せねーよ?お前、自分が思ってる以上に異常だかんな!」
おっ、韻踏んじまった!と一人で楽しそうに笑ってる奴の、肩に置かれた腕を振り払って執務室に向かう。
この館は、周辺国が反乱を起こさないように建てられたもので、本当の家は魔王領である暗黒大陸にある。最近はあまり帰れてないが、以前はずっとそこで暮らしていた。
ここにはヒト族と魔人族がおり、ヒト族は人質として預かっている隣国の姫やら王太子やらだ。正直必要ないし邪魔でしかたないが、人質を取るでもしないと反逆を起こすので仕方なく使用人として使っている。
娘の世話係につけた二人も、トゥヤーム王国の姫とその侍女だったはずだ。扉の前の男もどっかの国の王の次男だったはず。ま、細かくは覚えていないし興味もないが。
…そういえば、娘に名前つけてないな。
たしかレイアとは、女だったらメアリ、男だったらレイトにしようと話してはいたが…メアリは少し可愛すぎるな。
いろいろ考えながら執務室の扉を開ける。
すると、二人の男が手前のソファに寝転がっているのを見つける。思わず溜息が出そうになるが、それを抑えて、そいつらの横っ腹を蹴り上げる。
「おはようゲラン、グレン。もうすぐ正午だが、2人仲良くお昼寝か?」
「グフゥッ!!」「ブハァッッ!」
長い緑髪を一つに縛り、褐色の肌と金色の目を持つ男がゲラン、俺の秘書だ。短い赤髪に褐色の肌と髪と同じく赤色の目を持つグレン、魔王軍の副隊長だ。こいつらは昔森に捨てられていたのを俺が拾って育てた。が、育て方が悪かったらしい。柔らかそうなところを見つけては寝るようなぐーたら男達になってしまった。
「とりあえずお前達、そこにある資料の整理しとけ」
ゲランとグレンは、俺の机いっぱいに積まれた資料達を見てげっそりとした顔をした。
唐突のパパsideでした。新キャラ3人も出てきましたね。魔人族は大抵肌の色が濃い設定です。色白魔王様は特別ってことですね!