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紫眼《しがん》の魔法使い。ウィルスに感染したVRMMOで巻き起こるデスゲームを生き延びろ!  作者: ぐーてん
第1章 全滅=ゲームオーバー=強制ログアウト=“死”
7/17

VRMMOとウィルス

 テレビの内容をまとめるとざっとこんな感じだ。

 それは今から半月程前のこと。

 アメリカに住む16歳の少年が自室でウィザード・コレクションをプレイ中に、のウィルスに感染した。



 発見当時は体中が紫の斑模様で埋め尽くされていて、感染していることは明らか。

 しかしウィルスに感染しているにも関わらずウィザード・コレクションをプレイしており、外部からの呼びかけにも一切反応しなかったため、その場に居合わせた政府関係者がゲーム内から直接少年とコンタクトを取った。



 話を聞くと、既に一週間はウィザード・コレクションの中でプレイしており、発症後1時間程度で死亡すると思われていた記録を大幅に超えていた。


「なぜ一度もログアウトしなかったのか?」


 その質問に対して少年は。


「ログアウトしたいと思わなかった」


 と簡潔に答えたそうだ。



 それを聞いた俺は、まず何かの間違いじゃないかと思った。

 だって普通に考えればそんなことはあり得ない,

 いくらフルダイヴ型のVRMMOといっても、所詮は脳がゲーム内で起きたことを実際に起きたことと錯覚させているだけに過ぎない。

 だから、お腹も空けばトイレにも行きたくなるし、眠たくなることだってある。

 ただ空腹はダイヴする前に大量に食べていれば一週間ぐらいなら我慢できるかもしれないし、生理現象も思い切って無視すれば最悪はどうとでもなる。

 睡眠だってVRMMO内で寝ていれば、現実と同じだけの睡眠効果があるとされている。



 ただ、だとしてもだ。

 一週間も体を動かさなければ何かしらの異常が出てきて当然のはず。

 それを無視してとなると、やはり異常としか言いようがない。



 ただそんな俺の疑問に答えるように、VRMMOと潜在意識の研究者達がある可能性を示してくれた。

 その中に『アーカイブ社』と呼ばれるウィザード・コレクションと専用のVR装置である『リンカー』を作った会社の人間がいたことは俺に更なる驚きを与えた。

 研究者たちは興奮気味に話を進める。


「ウィルスの目的は人が意識を司る部位である脳の“意識中枢”の破壊であると考えられています。その過程で肉体が機能を停止しますが、それが1週間もの間、一度も現実世界に戻らずにVRMMOをプレイできた理由になるでしょう。これはとても興味深い事例です」


「加えて機能を停止した肉体は冷凍保存状態に近い状態になりますからね、飲まず食わずでも死ぬ事はありませんよ」


 よほど今回見つかった少年の症例が珍しかったのか、研究者たちは目は輝かせながら熱く語っている。

 逆にアーカイブ社の男はその言葉を無表情で聞いていた。

 そして話がひと段落したところで、男が静かに語り始める。


「“リンカー”はこれまでのVR装置と違い、人の“潜在意識”をゲームの中に移すことを可能にした画期的な装置です。それによってかつてないほど、現実世界に近い仮想世界を生み出すことに成功しました」


 男の言葉は淡々としたものだった。

 しかしその反面、表情はどこか誇らしげでもあった。

 男は更に話を続ける。


「リンカーを使ってウィザード・コレクションの中に入ると、脳の意識中枢が“仮眠状態”になるので、それがウィルスに破壊されない理由ではないかと、我々は考えています」


 そして最後に男は笑えない冗談で話しを締め括った。


のウィルスに感染していれば、VRMMOの中で一生を過ごすことも可能になります」


 俺はそれを真顔で語ったこの男に戦慄した。

 まるでVRMMOの中で暮らしたければ、ウィルスに感染すればいい。

 そう言っているようにも聞こえたから。




 テレビはその後、アメリカではなるべくウィザード・コレクションの中で過ごしてのウィルスから逃れようとしている人々が急増中とのこと。

 それだけを告げて別の番組を映し始めた。



 俺は暫くの間その場に立ち尽くしていた。

 テレビの内容があまりにショッキング過ぎて理解するのに時間が掛かってしまったから。

 彼らの話をまとめると、


のウィルスに感染したら、ウィザード・コレクションをプレイすれば取り敢えず死ぬ事は無く、更にゲームの中で普通にプレイし暮らせるというもの』


 俺はそれを理解した途端、不謹慎ながらも思わず興奮してしまった。

 仮想が現実として成立する。

 それがウィルスによる副作用とは言え、良くも悪くも俺のすぐ傍にまで、それは確実に迫ってきているのだから。


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