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JTQ  作者: あんにん
3/3

Req:2

 あれから2日後―――

 私、キネはこの間の依頼で受け取った依頼料700万円を銀行の口座に預け入れるところだった。

 場所は雑居ビルから徒歩10分の小さい銀行。

 そこで金を預け入れたらすぐに帰る予定、だったんだが・・・

 あいつと喋ってなければあんなコトに巻き込まれずにすぐ帰れたかもな。

 まあ、その後で600万ほど振り込んでもらったから文句は言えないんだろうが・・



 Req:2



 やはりあれだな、うん。

 毎回毎回思うが、周りの視線がうざったい。

 私が金を預け入れるのがそんなに珍しいのか?

 私はそう思いつつ依頼金を預け入れていく。


「今回ので総額6億7500万か・・」

 自分の通帳を見てそう呟く。

 さて、帰ろうかな。と思ったそのとき、私は久しぶりにそいつに会う。

「やあ、支店長。お元気で?」

「お、キネさんじゃあありませんか。お久しぶりですね」

 今、私と会話しているこいつはこの銀行の支店長、名前は・・思いだせん。忘れた。

 私の仲間で殺し屋を脱退後、この銀行の支店長になった。

「いつもありがとうございますねえ〜、キネさん」

「上機嫌だな・・、あ、そうか、私が預け入れるとその分おまえらの側も利益が増えるんだっけか?」

「ちょっとキネさん、あまりそういう発言は慎んでください・・(事実ですが)」

 なあんて会話をやりとりした後、私は銀行を出ようとした。

 その時。


 変なマスクを付けた2〜3人くらいの野郎が現れ、

「ここにある金を全てよこせ」

 と同時に、拳銃を窓口の女に付き付けた。

「・・・・・・・・・・!!!!」

 窓口の女は声にならない悲鳴をあげる。

 そして、周りの客どもは騒ぎ出す。

「うるせぇぇよ!!!」

 一人の男が銃を発砲する。一瞬で周りは静寂となる。

 私は「なんだ、銀行強盗か」と気にもせずに帰ろうとする。

「キネさんキネさん」

 野郎に聞こえない程度の声で支店長は私を呼び止める。

「なんだ?」

「なんだ?じゃないですよ、このままだと奴らに金を持っていかれます。助けてください」

 支店長はあわてた様子でいう。それに対して私は即座に答えてやる。

「嫌だね」

「な・・!」

「めんどうくさい。警察でも通報してそいつらに助けを求めろよ。あれだ。窓口の机の裏、だっけか?にそういうのあるだろ。それでも私に頼みを乞うということはイコール依頼を引き受けてくれということだ。そして、私に依頼を引き受けて欲しい時の条件は・・わかってるよな?」

「警察は、役にたたない・・」

 支店長はしばらく黙る。その間に野郎は窓口の女に手渡されたバッグを持ってずらかるところだ。

 支店長はそれを見てあわてたのか

「わかった。金は、出す。だから、金を、取り戻してほしい・・」

 しぶしぶだが金を払うことを了承した。

「よし、なら、契約成立だ。」

 本当はもう帰りたかったのだが、仕方ない。

 私は後ろを向き、野郎のところへ歩み寄る。

「後で金、口座に振り込んでおけよ」

 支店長は小さくうなずいた。


 ・・・・・・。




 野郎の前に立つと、当然だが

「何だテメーは?どけ」

 と言われた。

「私か?お前らに金を取り戻すよう言われたんだ。」

 続けて言う。

「だから、その金を置いて、さっさと消えな」

 すると男は私に拳銃を向け、言い放つ。

「うるせーな、テメー。殺すぞ?」

 私はすかさず携帯用拳銃を取り出し、野郎の頬擦れ擦れを狙って撃った。

 仮面の頬の部分が削り取られ、そこから血がつー、と垂れる。

「!!?」

 野郎の一人は何が起きたかわからず数歩後ずさりした。

 だが、もう一人の野郎が近くにいた女性を引き連れ、言った。

「おい、女。あまり調子に乗るな。今すぐそこをどけ。さもなくばこの女を殺すぞ。」

「!!」

 野郎は連れてきた女性に銃を突きつけている。

 女性はすぐにでも泣き出しそうな顔をしていた。

 どうやら、人質らしい。

 馬鹿な野郎どもだ・・・

 私は構わず拳銃を野郎に向ける。

「!!」

 野郎、人質の女性、周りの人から「は?」とでもいいたげな感じが伝わる。

「テメー。目が見えてねえのか?耳が聞こえてねえのか?そこをどかねえとこの女を殺すぞっつってんだよ!」

「構わないよ、殺したければ殺せばいいだろ。その女は私には関係ないし、私は金さえ取り戻せさえすればいいからな」

 今ので野郎のなにかが切れたようだ。

「舐めやがって・・!!!死にやがれぇぇぇぇぇえ!!!」

 野郎が銃を私に向けた。

 私は野郎共の左肩を拳銃でぶっ放してやった。

「ぐおお・・」

 野郎共は肩を手で被い床にうずくまる。

 その間に女性を離れた場所へ促し金を手にした。

「テメェ・・」

 野郎の一人が私の足を掴もうとする。



 パァン!!


「ぐあああああ・・・」

 ムカついたので手を撃ち抜いてやった。

 そして支店長に金を渡し、帰り際に野郎どもに言ってやった。

「人質なんて、私には通用しない。背丈があの女性と10センチ以上違うお前らなんか簡単に拳銃(こいつ)で撃ち抜けるさ。」

 私はそう言って、その場を後にした。



 後で支店長に電話して聞いたことによると、警察が来たのはそれから5分後だったらしい。

 ホント、使えねー奴らだ・・。

「それで、ちゃんと振り込んでくれたか?」

「はい、大丈夫ですよ。きちんと振り込んでおきました。後日、ご確認ください」

 それを聞いて電話を切ろうとするところで支店長に聞いた。

「支店長、変わったよな・・」

「・・・・・・・」

「昔は“組織”の中でも結構なレベルの腕前だったのにな・・」

「・・・・・・・」

 支店長は黙ったままだ。

「お前なら、あんな奴ら、いともたやすくなぎ倒せたはずだ」

「・・・変わらなければ」

「?」

「変わらなければ、ならない。普通の人間のように。暮らすためにはな、変わらなければならない。妻と子供と、楽しく円満に過ごすには、変わらなければならない。もう、殺し屋ではないからな・・」

「・・・・・・・」

 今度は私が黙りこんでしまう。




 そう考えると、私は変わったのか?変わっていないのか?

 分からない。

「じゃあな・・・」

 ピ。と電話を切り、窓から移る自分を見つめる。

「なあ、お前。私は変わったか?変わって、いるか・・?」

「私は、もう、殺し屋じゃあ、ないよな・・・」

 窓に映る自分にそうつぶやいた。





 

楽しみにしていた方がいましたら、遅れてしまい申し訳ございません。


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