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JTQ  作者: あんにん
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Req:1 Part.B

 あれから3日か経ちました―――



 Req:1 Part.B



 私はキネさんからの連絡を聞いた後、身支度を整えキネさんの住む雑居ビルへ来ました。

 それから、彼女に連れられて徒歩5分程度の自動車工場跡へ足を運びました。

 工場内はまだ夕方になり始めた頃だというのに、薄暗く、少し怖いです。

 工場内を歩きながら

「依頼どおり、お前の言っていた彼はちゃんと連れてきた」

 キネさんが煙草を吹かしてそう言いました。

「ありがとうございます」

 私は深々と頭を下げて感謝の言葉を言います。今の私ができる最大限のお礼はこれしかないから。

「あとは・・・、自分でどうにかしな。ここからはあんたがやることだ。私はあんたが殺すかどうか見物はするが介入はしない。」

「はい、わかっています。」

 その後キネさんは工場内の奥の方へ行き、大きなガラ袋を片手で引きずりながらやってきました。

「この中にお前の探していた彼がいる。今は薬で眠っているが、すぐに起こしてやる」

 そういってキネさんはガラ袋からガラクタを扱うかのようにばさばさと中身を出します。

 そこから―――見間違えることのない、彼の姿が見えました。

「ほら、起きな。」

 キネさんは彼を袋から取り出すと、お腹を蹴って彼を起こします。

 彼は咳き込んだあとに辺りを見回します。

「ゲホッ、ゲホッ・・ん・・?ここは・・どこ、だ・・?」

 寝起きだからなのか彼はまだ少しボーっとした顔立ちでした。

 ですが、いつもと違う場所、しかも、振った彼女の姿が目の前にあれば、目を覚ますのが普通でしょう。

「あ、彩・・・!!お前、なんで・・しかも、ここはどこだ!?」

 彼は見慣れぬ光景を前にただただ驚いていました。

「お久しぶり。」

「お前、ここはどこだ!俺はなぜここにいる!!説明しろ!!!」

 彼がパニック状態で私の両肩をつかみ、問いただします。私は何も答えません。

 それから、辺りをもう一度見回す彼は、キネさんの姿を見て歩み寄ります。

「テメェ・・!そうだ思い出した。テメェは昨日、俺の部屋にやってきた女じゃねえか!!おい、どこだここは!!なぜ俺はここに・・・・!!!」




 パァン・・・・



「うるせえ・・・!!黙れ糞野郎」

 キネさんは懐から拳銃を取り出し彼の足元近くに撃ちました。

 彼はそれきり黙ってしまい、床にしりもちをついてしまいました。

 私は、それから用意した包丁を、持参した旅行バッグから取り出しました。

 すると彼は、途端に言葉を発します。

「おい、なんだよ、それ・・・!!」

 彼は体を震えさせながら訊ねます。私はすぐに彼に言葉を返します。

「これ?これはね――――」

 私は包丁を振り上げて言います。

「あなたを殺すための道具」



 ズダンッ!!!



 私は勢いよく包丁を振り下ろします。彼の左腕が飛んでいきます。

「ぎゃアアアアあああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」

 彼が悲鳴をあげます。赤ん坊が大声で泣き叫ぶかのように。

「でも、すぐには殺さない。あなたには激痛に苦しめられながら、

 死んでもらうわ!!!!」

 私が痛みで耐え切れなくなって倒れこんだ彼の上に馬乗りすると、キネさんが訊ねます。

「それは・・ブッチャーナイフか?」

「あ、キネさんわかります?そうです、ブッチャーナイフです。私の祖父が精肉業者を経営しているので、こっそり拝借してきたんです」

 キネさんはそれだけ聞くと煙草を吹かしてまた黙ってしまいます。

 私はそれにはかまわずに彼を見下します。彼は痛みにこらえるので精一杯でした。

「痛い?痛いでしょ?ねえ!!!」

 そういってブッチャーナイフを床におき、私は彼のお腹に万能包丁を突き刺します。

「ぐあああああああああああああああああああっ!!!!」

 ゆっくりと、ゆっくりと、時々すりこぎの要領でこねくり回しながら突き刺し進めていきます。

 最後にグッと力をこめて押し込むと彼がまた悲鳴をあげます。

 1本突き刺しもう1本、もう1本と万能包丁を突き刺します。

 2〜3本目あたりから彼が吐血をし始めました。吐血しながらも彼はずっと悲鳴をあげていました。





 それからしばらく、彼は悲鳴どころか声すら出せないような感じでした。

 ただただ咳き込み吐血を繰り返すだけ、今にも死にそうな状態でした。

 それでも彼は時々「死にたくない・・」とつぶやいていました。

「死にたく・・・・ない・・・・・」

 彼はまたつぶやきます。叶わぬ夢を。変わらぬ現実を。みじめにつぶやきます。

 涙を、涙を流しながらつぶやきます。

 右手、両脚、男性性器を切断した上にお腹には数本の万能包丁。にもかかわらず、まだ彼はつぶやきます。

 私は、仕上げに掛かるため、ブッチャーナイフを手に取り、振り下ろす体制にはいります。

「私、本当にあなたが大好きだった。一緒に遊んで、一緒に笑って、一緒にHして・・・本当に有意義な時間を過ごせた。私、あなたとだったら結婚してもいいって本気で考えていたんだよ・・?」

 私は流れ出る涙をこらえながら、彼にいいました――――





  「さようなら」


 私は彼の頭にめがけブッチャーナイフを振り下ろしました。









 彼の頭は真っ二つになりました。

 彼は、彼は死にました。その瞬間、

 涙が、涙が止まりませんでした。

 声を、声を抑えられませんでした。

 なぜかはわかりませんでしたが、

 私は、大声をあげて、泣きました。

 キネさんの姿は、その時、もうどこにもありませんでした。









 その後、私は警察によって逮捕されました。

 誰からか通報があって来たのだそうです。

 キネさんでしょうか。誰なんでしょうか。

 わかりません。ですが、私にはどうでもいいことです。

 私は、やりたいことをやった。

 それだけですから。  



 〜Req:1 Fin.〜



ブッチャーナイフ

精肉業者が用いるナイフで、性質的には「叩き切る」という側面においてなたや斧に近く、汎用の刃物ではない。食用の獣肉を切り分けるという目的に特化した独特の構造・形状を持ち一般では利用されないナイフである。

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