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前世というものが本当にあるのかどうか、分からない。だけど、私の中にいるもう一人の私の存在を肯定するとしたら、もう一人の私は前世というものなのだろうと思う。
だって、普通に考えて自分の生きている世界と全く知らない世界がもう一人の私にはあるんですもの。
極端に言えばそうね、片方の世界では空が飛べるのだけど、もう片方は飛べない。それが常識!みたいなね。
それはそうと、まずは現在の私の話をするとね、ぶっちゃけ身分の高い貴族階級って言うか、王族だったりする。王女様。プリンセス。姫。言い方はまぁ色々あるけど、それ。
で、以前、多分前世って言われる私は一般人。あまり幸せでは無かったかな。男運も悪かったし。
そんなこんなで絶賛二度目の前世を満喫中な訳なんだけど、さ、二回目の人生ってなると色々達観してくる訳で、色々と難しくもある。
特に恋愛とかね。
でも幸いな事に恋愛以外は物凄く恵まれてて、多少の窮屈さはあるけど幸せだったりする。
父も母も放任主義で結婚も急かされ無いし。
日がな一日勉強と社交界に明け暮れのんびり過ごすのが私の日常だった。今日までは。
「……ま、…姫様!」
「んあ?」
私を呼ぶメイドの声でふと我に返って私は顔を上げた。
「もう、姫様!ぼーっと本なんて読んでないで、私の話をしっかり聞いて下さい!」
そう言ってぷりぷり怒るのはメイドのレイチェル。最近私付きになったまだ年若いメイドだ。
「うん、ごめん、ごめん。で、お父様がなんだっけ?隣の王子が結婚で、魔術師と、龍族と精霊も結婚だっけ?…みんな結婚なんて大変ね」
隣でレイチェルが話していた話の中から耳に入ったキーワードだけ並べて他人事の様にそう言えば言えばレイチェルは違う!と大きく首を振る。
「違います!私の話し全然聞いてないじゃ無いですか!よく聞いて下さいね、国王陛下が、姫様にお部屋へ来るようお呼びです。詳しい話は私は存じませんが、隣国の王子が姫様に結婚の申し込みにいらっしゃっているとの話しが城内では持ちきりなので、その事では無いのですか?」
はいぃぃ?
「いやいやいや、魔術師と龍族と精霊どこいったのってか、そんな話私聞いて無いのだけど…」
ですから、今お話ししてます!とレイチェルはピシャリと言う。
「とにかく!早く陛下の元へ伺って下さい!」
そう言って背中を押して来るレイチェルに急かされ、私は混乱しながらも渋々父上の部屋へと足を向けた。