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第二話 逃走中
「はぁ、はぁ、はぁ……」
逃げなきゃ。逃げなきゃ。逃げなきゃ。逃げなきゃ。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
遠くに。先に。どこまでも。果てまで。
「はぁ、はぁ……」
聞こえてくる自分の息づかいで、どれだけ逃げ続けているのかが分かる。
透き通った海を彷彿とさせるような青い空。慣れない太陽の光に、一瞬視界がグラリと歪んだ。
それでも逃げなきゃいけない。できるだけ、遠くまで。
そうじゃなきゃ奴らは撒けない。魔力の香りはどこまででも嗅ぎつけられてしまう。後ろにはまだ、奴らの香りが迫ってきているんだ。
「早く、逃げないと……!」
そして見つけないといけない。
世界を救うために。世界を守るために。自らの危険を顧みず、逃がしてくれたあの方のためにも。
奴らに立ち向かうことのできる人材を。世界を救うため戦う人間を。
「世界を壊すなんて、させるもんか……!!」
ぐっと力を込めて飛ぶ。
強い意志を持った呟きは、どこまでも続く空の青に、溶けて消えた。