表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

第5話 勇者来村

魔王が消滅してから1ヵ月後…



大陸の遥か西にあるこの村にはめったに訪れる人はいない。

しかし村人たちは、最近はよく人が来るようになった気がすると感じていた。

まあ、変なやつばかりな気もするなと皆が思っていたようだが。



「はあ、はあ…」

「ようやく村があった…」

「ここまで長かった~…」

「疲れたぁ…」


勇者パーティ、男2人女2人の4人組である。

ちなみに勇者たち(世界中がそうなのだが)は魔王が消滅した事をしらない。


道端に婆さんが座っている。


どうする


コマンド

》攻撃     呪文

 防御     特技

 話す     調べる

 逃げる



とりあえず攻撃。

婆さんが怒った!

「なんばすっとね!」


婆さん往復ビンタ炸裂!

痛恨の一撃!

勇者たちは死亡した…


コンテニューする?

》YES  NO


》YES


勇者たち、神の導きにより村の入り口にて復活。


「あ、あれ?」

「私たちどうしたんだっけ?」


勇者たちは村の記憶はなかった。



とりあえず村に入る。



道端に婆さんが座っている。


どうする


コマンド

》攻撃     呪文

 防御     特技

 話す     調べる

 逃げる


攻撃する。

いや、なんだか嫌な予感がする。

ここは慎重に…


婆さんを調べる。


「ぁは~ん、こん積極的なぁ~、久しぶりやがねぇ。若き日を思い出したとねぇ」


婆さんは興奮した。

婆さんは仲間を呼んだ。

爺さん二人と婆さん一人が現れた。


勇者、逃げる。

しかし婆さんに捕まった。

勇者、婆さんとベッドイン。


勇者の仲間、逃げる。

しかし他の爺さんと婆さんに捕まった。

勇者パーティ、そろってベッドイン。


勇者一行はショックにより死亡した。


コンテニューする?

》YES NO


》YES


勇者たち、神の導きにより村の入り口にて復活。


勇者たちは村に入る。


婆さんが道端に座っていた。


どうする?


「って、もうやめえええええい!」

勇者は誰かに向かって叫んだ。


「うわっ!びっくりした~」

「どうしたんだよ、急に」

「勇者がおかしくなった…」

勇者以外の三人が冷ややかな目で勇者を見ていた。

「え?ああ、ごめんごめん。なんか夢を見ていた気がする」

「「「…」」」


とりあえず勇者は婆さんに話しかけた。


「あの、すみません。今日この村に泊まらせていただいてよろしいですか?」

「ああ~?泊まるったって、こなとこに宿なんかねえべさ」

「ええ?宿屋はないんですか?」

「んだ~、普段こなとこに旅人なんてこなしゃ~て。あ~、タゴサクの所なら空き家があったんとな?今聞いちゃるから、待っとんねな」


よくわからない方言で矢継ぎ早にしゃべるおばあさん。

だがそういい残すと、一瞬で消えた!

いや目に見えない速さで走って行ったのだ。

しかも腰が曲がったままで。

走った後の砂埃だけが残っていた。


「…え?」

「はっ?」

「…消えた?」

「…どゆこと?」


勇者パーティは困惑した。

何言っているかわからない婆さんがしゃべっていると思っていた次の瞬間に、目の前で消えたのだから。

もちろん勇者たちには走っていった婆さんの姿は見えていない。


勇者たちはとにかく呆然するしかなかった。


しばらくすると

「待たせたのぉ」

婆さんが一瞬で目の前にいた。


「うわっ!」

「びっくりした~!」

「すまんすまん、驚かせてしまったようだねな」

「いえ、大丈夫です」


「タゴサクの所は空いてなかったんね。なんぢゃったらキースに聞いてみん?なんとかなるかもしゃ~なんとね」

「キースさんですね?行って聞いてみます。ありがとうございます」


勇者一行は婆さんに教えてもらった場所へむかう。


「あの、キースさんですか?」

「うん?ああ、そうだよ」

「私たちは旅をしているものなのですが、村の入り口のお婆さんにキースさんなら寝床をなんとかできるのではないかと伺ったもので」

「ああ、コンモリ婆ちゃんね。あんたらは泊まるところがないんだな?」

「ええ、そうです」

「わかった、ちょっと待ってろ」


そういうと、やっぱりキースも消えた。


「…ここって、消えるの流行ってるのかな?」

「…さあ…」

驚くだけ無駄だと悟った4人だが、自分たちで何を言っているのかもよくわからなくなった。


「おまたせ~!」

やはり一瞬で目の前に現れる。

「いえ、どうでしたか?」

「あそこの空き地を使っていいって許可を貰ってきたから、あそこにあんたたちの泊まる場所を作るわ」

「あそこにですか?ありがとうございます」


指を差した場所は雑草が生えているだけの何もない更地であったため、勇者たちはテントでも張ってくれるのだろうと思った。

どうせなら家に泊まりたいと思ったが、さすがに贅沢なので素直に感謝した。


「少しの間だけ時間もらえるか?」

「ええ、構いません。お手数おかけして申し訳ないです」

「な~に、困ったときはお互い様だよ」

「ありがとうございます」


そしてキースは作業を始める。

その光景に勇者たちは目を疑った。


キースは近くの森に行き一瞬で数本の木を伐採し戻ってきた上、なたを持って木を放り投げたと思った次の瞬間には、家を作る木材をカットしてしまった。

挙句の果てには、木材や釘を正確に投げ家の形を作っていく。

ものの数分後には家が出来てしまっていた。


「「「「………」」」」


勇者一同呆然である。


「よう、待たせちゃったな」

「…いやいやいやいや、全然待ってないですよ。てか何やったんですか!?」

「何やったって、あんたたちの寝床を作ったんじゃないか」

「ええ!それはわかります!でも、あんなの人間業じゃないですよ!」

「そうか?こんなこと誰にでもできるだろう?ほれ、そこに居るまだ小さい女の子ですら、俺位早くは出来なくても、30分くらいありゃできるぞ?」

「はあっ?いやいやありえないですよ」

「いちいちうるさいやつだな。まあ、いいじゃないか。」

「そりゃ僕達が文句言えるわけないですけど…いや、すみません。せっかく作ってくれたのに文句言ったみたいになってしまって」

「まあ気にすんな」

「ありがたく使わせてもらいます!」


勇者たちは、色々と腑に落ちない点はあるが考えても仕方ないと思い直して宿に向かう。

中に入るといつの間に作ったのやら、テーブルやイス、部屋にはベッドまで置いてあった。

 もはや何も言うまい…


肝心な事を聞き忘れていたことに気づいた勇者達はキースの所に戻った。


「そういえば、実は僕達は魔王を倒す為に旅をしています。ここから少し西に向かい海を渡った離れ島に魔王がいるんですが、そこを渡る船とかありますか?」

「ああ、あの離れ島か。あそこには、いい肉になる動物(魔物の事)がいるんだよな。いつも泳いで渡ってるから船があるかなんてわからんな」

「(…驚いたら負けだ)船はないんですね…作るしかないかな…」


突っ込まないと決めたはずの勇者であったが、聞き捨てならない言葉に突っ込んでしまう。

「ってあの島に行ったんですか?魔王がいる場所ですよ!無事なはずありません」

「魔王だかなんだか知らないが、別に何も大したことはないだろう?」

そもそも魔王はキースが倒してしまっているが、本人は魔王の事すら知らないので倒してしまった事すら知らない。


勇者がさらに言葉を発しようとした時、ふと畑に刺さっている棒が目に入る。

…魔王の杖?


「あれは…魔王の杖じゃありませんか!?」

「ん?ああ、あれってそういう名前のやつなのか?」

「そうですよ!あれはどこで手に入れたんですか!?」

「手に入れたっていうか、1ヶ月くらい前に俺の畑を荒らしたやつがいたからぶっ倒したんだが、あれだけ残して消えちまったんだよ。俺の畑を荒らした罰としてもらって苗木に利用させてもらってるんだよ」

「「「「…はああああああ?」」」」


勇者達は驚愕した。

魔王が村人に倒された。しかも一ヶ月も前に。じゃあこの旅はなんだったのか。いや、それ以前に村人が魔王を倒すなんて異常な事である。実際、勇者は聖剣を持っているとはいえ勝てるかどうかはわからなかった。むしろ負ける可能性のほうが高いのではないかと思ってさえいた。


「あは、あははははっ」

「「「…え?勇者?」」」

勇者は急に笑い出した。笑うしかなかった。

勇者の仲間は彼を心配した。



「キースさん!」

「おおう、なんだ急に」

「僕を弟子にしてください!」

「「「「…えっ!?」」」」

キースと勇者の仲間は驚いた。


「僕はもっと強くなりたいんです。いや、ならなければならないんです。キースさんのそばに居れば強くなれると思うんです」

「…いや、俺はただの村人で畑仕事しかしてないんだが…」

「それでも構いません!僕に畑仕事を教えてください!」

もう勇者も自分で何を言っているのかもわからなくなってきた。


勇者の仲間たちも、勇者につられてこの村に残り畑仕事に精をだすことになってしまったのである。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ