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蒼い旅路  作者: 古城正紀
2/4

1.全ては出会いか別れから

ーーーーーーーーーー


「すいませーん・・・」


 カナトは取引所らしきとこに着き、入ってみたが人の気配がない。今日は休みだったりするのだろうかと思ったが、カナトはとりあえずもうちょっと大きな声で呼びかけてみる。


「すいませぇーーん」

「なんだい、うるさいね」


 いた。失礼だけど、愛想の悪そうな婆さんだった。


「あの、こういう者なんですけど」


 そう言ってカナトは自信無さげにタグを見せた。


「んん?あんたワンダラーかい」


 婆さんのカナトがワンダラーであることを不思議に思っていない様子から、ここが取引所であることを確信し、鞄の中のインプとの戦いの戦利品を取り出してカウンターの上に乗せ、婆さんに見せてみる。


「これ、どれくらいで売れます?」

「んー・・・こりゃ討伐報酬込みでも15ゼニスくらいかねぇ」


 驚愕の値段だった。悪い意味で。いやだって15ゼニスってパン1つ買えるかどうかって値段なんだもの。


「そんなに安いのか・・・はっ」


 カナトは死ぬ思いで得たものだったからか、つい口に出してしまっていた。


「魔物石がないならどこもそんなもんさ、あきらめな。」

「まぁ魔法石を自分のために使うってんならそれはそれでいいが、あんたその様子じゃ魔物石をとれなかったんだろう新米みたいだしねぇ」


 う・・・なかなか鋭い。


 そう、魔物石が高く売れるということはカナトも知っていた。魔物石は武器に取り付けたり、アクセサリーとして身に着けたりすることによって魔法の不得意なヒトでも誰でも、自分の体力と引き換えに特殊な能力を使うことができるようになるのだ。ただし能力の使用回数に限界はある。

 まぁ武器やアクセサリーの素材となるという意味では魔物の牙や爪なんかも同じ事なのだが、決定的な違いは魔物石は1匹の魔物に対し必ず1個しか存在しないというところだ。つまり持ってきた魔物石の数が魔物を倒した数の証明としやすい。牙や爪じゃ1匹から何個も取れるから実際何匹の魔物を倒したのかがわかりづらいのだ。魔物を倒して得たもの売る時、討伐報酬なるものを加えてもらえるのだが、魔法石以外のものはそういう理由もあって討伐報酬がほとんどないから比較的安値の取引となる。


「じゃあえっと・・・売ります」


 激安ではあるが、持ってても仕方ないのでカナトはしぶしぶ売ることにした。


「まぁちょっと待ってな」


 そう言うと婆さんは今いる受付の裏側にあるらしい部屋に入ってなにやらガサゴソし始めた。


 (ガタッ・・・ガサガサ・・・あったあった)


 音が止むとなにやら手にもってこちらに戻ってきた。


「ほれ、こいつはあたしが新米ハンターにいつもくれてやるもんだ。とっときな」

「あ、でも俺ハンターじゃ・・・」

「いいんだよ、ワンダラーだってハンターのうちじゃないか」


 そう言って15ゼニスと一緒に白い巾着袋をカナトに手渡した。中の物は小さそうだけど重みを感じる、何が入っているのだろうか。


「ありがとう、おばあちゃん」

「なぁに気まぐれさ、それにおばあちゃんじゃないリンナだ」

「最近は・・・新人は特に、新しくできた取引所でお世話になってるみたいだからねぇ。あんたみたいなのはめずらしいのさ」

「この町は取引所が2つあるんですか」

「そうさ、うちは見てのとおり小さいからね、この街のハンターたち全員を相手にするのが難しくなったのさ。街からは移転しないかと言われたが・・・ってそんなことはあんたにゃどうでも良い事さ。まぁせいぜいくたばんないよう気をつけな」

「あ・・・えっとその、ありがとうございましたリンナさん」


 取引所が静かなのには理由があるようだった。気になるけど、初対面であるカナトはそれ以上軽々しく聞くべきではないかもしれないと思って店を出た。

 辺りは暗くなり始めていて、適当に寝る場所を探すことに。今日の稼ぎは少なかったし節約のために宿はあきらめて野宿しよう。街の中だし魔物に襲われることもないだろ。そういえばリンナさんからもらった袋の中身はなんなんだろうか。カナトは気になって袋の口を広げてみる。


「石・・・?魔物石か?」


 小さめだったが、ただの石を渡したりはしないだろう。とりあえずカナトは巾着袋ごと腰のベルトにひっかけてお守り代わりに持っておくことにした。それから適当な露店で明日の朝ごはんを買い、しばらく海岸沿いを歩いていると屋根とベンチのある休憩所みたいなところがあったので、そこで寝ることにした。


 いざ寝ようとすると考え事をはじめてしまって寝れないってことよくあるだろ?今日の俺もそうだった。インプとの戦いとかいろいろ思い出して、なんか無力感を感じて不安になって・・・でも俺には目的がある。なんとか・・・やって・・かない・・と・・・・・・。


ーーーーーーーーーー


「あのー生きてます・・・?」


 ん?姉ちゃん?あと少し寝かせてくれよームニャムニャ。


「あーのー、あーのー!」

「もうすこし、ねかせて・・・」

「寝坊助さんですかね・・・仕方ない」


ーーーーーーーーーー


「んん、よいしょっと」


 いつの間にか寝ていたらしい。カナトは背伸びをしながら辺りの明るさに目を細める。


「ふあぁぁ、そういや姉ちゃんに一度起こされたような・・・夢か?」


 姉ちゃんがこんなとこにいるはずない。そう不思議に思っていると誰かの気配を感じ、隣のベンチを見たら赤いケープを羽織った女の子が寝ていた。


「ええ!」


 カナトはかなり焦った。どこかで見た顔だったからだ。そうマハニ定食を食べたところの・・・。


「店員・・・さん?」


 こんなことってあるか?っていうかなんで寝てるんだ?いや、俺も人のこと言えないけども。でも女の子だぜ?こんなところで寝てちゃ何があるかわかったもんじゃない。そんでいつから寝てるんだ?俺が寝始めた時にはいなかったはずだけど。いやとりあえず、ここは起こした方がよさそうだ。


「あのー?」


 反応がない。とはいえ女の子だからトントンして起こすのもなぁ。お店で働いていたときはもっと隙の無い子かと思ったけど・・・。とりあえず俺はもう少し近づいて声をかけてみる。


「起きたほうがー」


 ん?近くで見るまでわからなかったけど、この子、若干耳が尖ってる?


「エル・・・フ?」


 カナトは、エルフの耳はもう少し尖っているイメージを持っていたが、どちらにせよここらへんじゃめずらしかった。ここは異種族間闘争の前、元々はカナトらヒューマンが主に住んでいた地域なうえに、エルフのいた地域は他の種族の中でも最も遠い場所だったからだ。


「キュウ!」

「おわっ!」

「ななななんだ!?」


 ベンチの背もたれの影から急に小動物が現れて、カナトは思わず後ずさった。


 なんというか、犬というか猫というかイタチ・・・?よくわからないがすごく可愛らしい生き物だ。


「君・・・何?」

「キュウキュキュー!」


 まぁしゃべれないよな、うん冷静になろう。いろいろなことがたて続けに起こって混乱した自分を自問自答で落ち着かせていると、その小動物がいきなり飛びかかってきた!


「うおぉおお!?」


 俺は驚いてベンチの向かいにあるテーブルの脚に足をひっかけて、こけた。


 ドスンッ!!


「キュウキュウー!」

「いてて・・・なにすん」

「レオくん・・・?」


 カナトは誰かの名前を呼んだ声がした方を向くと、いつのまにかあの子が起きていた。


「あ・・・」

「あ・・・」


ーーーーーーーーーー




 




3/16 今後の展開を考え語りの部分等を変更

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