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ふうりんは夏の風物詩  作者: むらかみ
2/5

一滴の水

朝目覚めてからしばらくは、昨日の余韻もあり、少しドキドキしていた。

俺はこんなにウブだったのか?

嫌、違う。

あんな美人とあんな出会い方をしたんだ。

そりゃドキドキするさ。

今考えればあの時に送っていけば違う展開もあったかも?


、、、な訳無いか。


いつものコンビニに寄る。


無意識に彼女を探してしまう。


レジを済ませてからも暫くキョロキョロしてみた。


しかし彼女が来る気配は無い。


はぁ〜なにしてんだろ俺は。


なんの期待してんだよ。


はぁ〜会社行こ。


朝はあんなに気にしていた彼女の事も夜になればスッカリ忘れていた。


もう10時か、、、


帰りの電車に揺られているとギュルル。


お腹の音がした。


腹減ったな。こんな時間だ。帰ってもご飯無いな。

あいつ遅くに帰ると露骨に面倒くさそうな顔するからなー。


、、、よっこいしょ!

誰かが横に座った。


誰だ!席なら沢山空いてるだろ。

わざわざ隣すわりやがって!


俺は自分の目を疑った。


彼女だ、、、矢野美優さんだ。


美優(前野さんですよね。)


俺は目を丸くして暫く彼女の顔をながめていた。

よく見ると30代前半か、、、嫌、でも、めちゃくちゃ綺麗だ。

唇はとてもやわらかそうでルージュの艶でいやらしく感じる。

香水の香りが俺を包み込む。


美優(前野さん!)


美優は少し語気を強めて言う。


一(、、は、はい!)


美優(やっと会えた!

私2時間もまったんですから!


一(お、俺を待っていたんですか?)


美優(そ!昨日の事お詫びしたくて。待ってました。)


一(そんな事の為にわざわざ待ってたんですか?)


美優(そ!今日はお仕事お休みだからぶらぶらしてたの)


見た目からは想像出来ないフランクさだ。

こんな美人は僕の感覚だとツンとしてると思うのだが。


美優は笑顔から急に真顔になると、

美優(本当に昨日は申し訳ありませんでした)

一(い、いやー別に謝るような事ではありません。

誰だって酔いたい時はあります。

気にしないで下さい。

それより無事に帰れました?

かなり飲んでいたみたいですけど)


美優(無事に家には帰れましたが主人に怒鳴られました。)


、、、ご主人か、、、。

そうだよね。既婚者だもんな。


美優(前野さんは既婚者?)


俺は左手の指輪を彼女に見せた。


美優はうつむき少し目をそらしてまた俺を見た。


プシュー電車が停車した。

俺の降りる駅だ。


美優(おりられます?)


一(いやっ。いつもは降りるけど今日はまだ行く所があるから。)


俺は嘘をついた。

今、凄くドキドキしていてこの空間が少しでも長く続いて欲しくて嘘をついた。


美優(じゃあ、私は用事があるからここでおりますね。)


えーーー!



美優(それでは、また顔みたら声かけちゃいますからね。)


彼女はニコリとするとなんの躊躇もなくおりて行った。


最期に振り返り小さく手を振ってバイバイと小声で呟いた。


俺は、次の駅でもその次の駅でも降りなかった。

彼女の言葉の温もりがここから離れる事を嫌がっていた。



あー明日、おきれるかな?

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