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9 力の制御

レオンは、ナミの”ダダ漏れ会話”を聞きながら、シャワーでさっぱりすると、フカフカのバスタオルで、体を拭いた後、寝室に戻ってきた。

 見ると、なぜか、ベッドではなく、ソファーで丸まって眠るナミの姿が、そこにあった。

 だいぶ疲れているようで、レオンが抱き上げても、まったく起きる様子がない。

レオンはそのままナミを、自分のベッドに運ぶと、その隣で自分も眠りについた。

 夜中、すすりなく声で、目が覚めた。

『かあさん、とうさん、やだよぉー。目を開けてよ。うわーん。やだぁーーー。』

 見ると隣で、涙を流しながら、眠るナミがいた。

 どうやら、レオンが聞いた声は、ナミが心の中で、叫んでいる声だったようだ。

 レオンは、毛布に包まれているナミごと、自分の胸に抱きしめると、ナミの背中を優しく撫でた。

『大丈夫だ、ナミ。俺がいるから、安心しろ!!お前のことは、これから俺が守ってやる。』

『レオンが守ってくれるの?』

 ナミは無意識に、レオンの念話に答えていた。

『ああ、そうだ。だから今は安心して寝ろ、ナミ。』

 ナミは、レオンのその声に、安心したのか、レオンの胸に、涙でぬれた顔を埋めて、眠っている。

 レオンは、自分に縋りつくようにして眠るナミの背中を、優しく撫でると、そのまま胸に抱いたまま、眠りについた。



 朝日が大きな天窓を通して、部屋の中に届く。

 ナミは、温かいぬくもりに包まれながら、目が覚めた。

 何だか、ホカホカする。

 とても温かいので、そのぬくもりを触って見た。

 思っていたのと、違い以外と固い。

 なんでだろ。

 ナミは、ぼやぁーとしながら、目を開けた。

 そこには、固い胸板があった。

 よくわからないまま、目を上にあげると、そこには天使の顔・・・・。

『整った鼻筋に、ながーい銀色の睫毛、みずみずしい唇・・て、これレオンの顔。

へっ、なんで・・なに・・なにがどうなってるの・・・。』

『うーーん、朝からうるさいぞ。ダダ漏れ娘。まだ早い、もう少し寝ろ。』

 レオンは、そう言うと、ナミの頭を、自分の胸に抱き込んだ。

 ナミの顔に、レオンの裸の胸板があたった。

『なっ・・なっ・・なっ・・・・・・・。』

 ナミの顔は、熟れたトマトのように、真っ赤になって、そのまま硬直した。

『レオン、はな・・・は・・な・・、腕を話し、じゃなかった、離して。』

 ナミはどもりながら、なんとか、考えをまとめた。

『なんだ、トイレか。』

 レオンはあっさり、腕をナミの頭から外してくれた。

「ち・が・うーーー。」

 ナミは絶唱しながら、レオンの胸から毛布を跳ね除けて、起き上がる。

 毛布を跳ね除けて、起き上がった後、ふと見ると、そこには全裸で横たわる天使がいた。

『げっ、なんで裸なの??』

 絶句しながら、マジマジとレオンの裸を見ていると、レオンから、

『いい加減寒いから、毛布を戻せ、ナミ。』

 ナミは慌てて、レオンに毛布を掛けると、ベットから出ようとして、下に落ちた。


 ドスン


 さすがに、この音と騒ぎで、レオンの目も覚めた。

 レオンは寝るのを諦めると、毛布を退けて、起き上がった。

 再び、ナミの目の前に、全裸のレオンが立っていた。

 ナミは、朝日が輝く中、レオンの全裸を見たい、と思いつつ、見るわけにいかず、目線をレオンの足に向けた。

『あっ、足の指もきれい。』

 レオンはナミのダダ漏れ感想に、溜息を付くと

「棚からワインを出しておけ、ナミ。俺はシャワーを浴びてくる。」

 レオンはそう言うと、そのまま全裸で、浴室に向かって、歩いていく。

 ナミは誘惑に抗えず、後ろからレオンの姿を見た。

『あっ、お尻も素敵だ。』

 その途端、浴室から、笑い声が聞こえた。

『しまった。また変なこと、考えちゃった。』

 ナミは赤くなりながら、ワインが置いてある棚に近づくと、グラスとワインを出して、テーブルに置いた。

 でも、ちょっと、油断すると、朝の強烈な印象として、レオンの裸が、目の前に浮かんでくる。

 何か考えてしまう前に、ナミはひたすら、”むしん・無心になるのよ、ナミ”という言葉を唱えて、なんとか変なことを、考えない様に努力した。


 しばらくすると、浴室からシャワーを浴びた、全裸のレオンが出てきた。

 ナミは慌てて、目線をはずす。

『さっきから、まさか、わざとやってるわけじゃないよね。』

「いや、これが普段からの俺の生活スタイルだ、ナミ。それと、目線を外さなくても、もういいぞ。」

 レオンの声に、ナミが顔を戻すと、そこにはきちんと服を着た、レオンがいた。

 なんだか残念なような、ホッとしたような、両方の気持ちが交錯する。

 レオンは、そんなナミの心情など知らん顔で、テーブルに置いてあるワインを、グラスに注ぐと、飲み始めた。

 ナミはそのレオンの姿を、しばらく眺めていたが、そのうち、ナミのお腹が盛大に鳴りだした。

「少し早いが、そろそろ食べにいくか?」

 レオンは、グラスをテーブルに戻すと、ソファーの端に腰かけていたナミを、ひょいと小脇に抱えて、昨日のように歩き出した。

『レオン、昨日も言ったけど、私、食堂まで歩けるよ。』

 ナミは不満たらたらで、レオンに文句を言う。

 レオンは、ナミの短い足をチラッと見る。

『なっ、なっ、レオンより短いけど、ちゃんと歩けるよ。』

 レオンは自分に抱えられながら、逆上しているナミをほほえましく、眺めながら、食堂の戸をくぐった。


 そこには、熱く抱擁するブルとクロウの姿があった。

 クロウは、ブルの顎をくいっと持ち上げると、唇を重ねる。

『すっごい。男同士のキスなんて、始めて見た。』

『男同士とは、だれの事を言っているんだ、ナミ?』

『えっ、ブルさんって、男でしょ。』

『ナミ、お前、昨日ブルの本名を聞かなかったのか?』

『えっと、確か本名は、ブリジット・スコフィールドで、えっ、ブリジットって女性?』

 ナミはレオンを見た。

『そうだ、女性だ。ちなみに、クロウの本名は、クロウ・スコフィールドだ。』

『えっ、ファミリネームが一緒ってことは、二人は姉弟なの?』

『おのな、ナミ。あんなキスをする姉弟がいるか?』

 レオンは額に手をあてて、指摘する。

 ハッとして、二人を見ると、いつの間にか、フレンチキスが、今はかなり濃厚なディープキスになっている。

 でも、すごくいやらしいはずの光景が、なぜかコミカルに見えてしまう。

『じゃ、もしかして、二人は夫婦なの。』

『大正解だ、ナミ。だいぶかかったがな。』

 呆れ顔のレオンが答えた。

『ええーーー。』

 ナミは、心の中で、叫び声を上げた。

 その後、お腹も叫んだ。


 ぐぅーーーーーーーーーーー!!!!


 ナミのお腹の音に、二人の存在に気がついた、ブルがこちらを振り返る。

 そして、慌てて、クロウから離れると、ヒラヒラのエプロンを手に、厨房に戻っていった。

 すぐ厨房からは、トントントンという包丁のリズミカルな音と、何かを炒める、おいしそうな音が響いてくる。

 レオンは、ナミを小脇から降ろすと、傍の食堂の椅子に、腰かけた。

 それを見た、クロウが、どこからかワインを出して、レオンの前に置く。

「おはようございます、御主人様。本日はいつもより、大分早いようですが、何かありましたか?」

 なんとなく不機嫌な声で、嫌味っぽく尋ねてきた。

『まっ、これからって所を、私のお腹の音で、邪魔されれば、なんとなーく、不機嫌な気持ちになるのはわかる。でも、食堂であんなことしてるのが悪いのであって、けっして、私が悪いわけじゃない、うん。』

 レオンはクロウの質問を無視すると、ワインを飲み始めた。

 グラスを回しながら、じっくり味わう。

 そんな主人の冷たい態度をものともせずに、クロウは、レオンからグラスを差し出されれば、すぐにワインを注ぐ。

 一方、厨房では、ナミのお腹に応えるために、ブルが、山のようなご馳走を、作ってくれた。

 ナミは、ブルにお礼を言うと、食事を受け取り、すぐに食べ始める。

『うーん、おいしい。』 

 だいぶお腹が空いていたせいで、あっという間に完食した。

 最近、前にもまして、お腹が空く。


 私が完食したところで、レオンもワインを飲み終わったようだ。

「ナミ、取り敢えず、広場で”力の制御”と”飛行の仕方”を教えるから、やってみるか?」

 レオンの提案に、ナミはすぐに賛成し、うなずいた。

 レオンはグラスを置くと、ナミを小脇に抱えることなく、広場に向かった。

 ナミもブルに食器を戻すと、急いで、レオンを追いかける。

 ここで出遅れると、ナミはどこかに移動する度に、レオンに荷物のように小脇に抱えられる運命が、訪れそうだ。

 レオンはすたすたと歩くと、広場の中ほどで立ち止まり、ナミを待った。

 すぐにナミが走って、広場に現れる。

「レオン! 早く、”力の制御”の仕方を教えて。」

 ナミは息を切らせながらも、懇願した。

 何がなんでも今日中に覚えないと、昨日みたいな、こっぱずかしい目に、あい続けることになる。

 「わかった。ではナミ、そうだな。あそこに見える、木の葉を動かして見ろ。」

 レオンは、そう言うと、指をくいっと曲げて、木の葉を一枚、ふわっと浮かすと、自分の手元に引き寄せた。

 なるほど、簡単そうだ。

 ナミは、木の葉を動かそうと、目線を動かすと、指をくいっと曲げた。

 途端に、全ての木の葉がザワっと唸ると、ナミ目がけて、どっと襲いかかってきた。

「なっ、なんでぇーーーーーーーー。」

 ナミは気がつくと、大量の”木の葉”に埋もれていた。

 その姿を見たレオンは、ナミの隣で、腹を抱えて笑っている。

 ワッハハハ アッハハハ ドッハハハ

 最後には、笑いすぎて、涙目になっていた。

『く、く、くやしいーーーーーーーーーーー。』

 ひとしきり笑ったレオンは、なんとか、真面目な顔をすると、

「自分の思う通りに、木の葉を動かせるようになれば、”力の制御”の仕方は、自然と身につく。俺は執務があるからいくが、出来るようになったら、念話で呼べ、ナミ。次にお前が覚えたいと言っていた”飛行の仕方”を教えてやる。」

 レオンは、そう言うと、城に戻って行った。


 ナミはそれから三時間、ぶっ続けで、木の葉を動かす訓練を続けた。

 気がつくと、広場にあるほとんどの木が、丸裸になっていて、ナミの傍には、幾つもの、落ち葉の山が、こんもりと積み上がっていた。

『なんで、出来ないのよ!!!』

 やけくそになって、木の葉の山にダイブして、その中に寝転ぶ。

 今日はいい天気で、上を見上げると、空が青く輝いていた。

 ナミの頬を、風が通り過ぎていく。

 

「ナミちゃーん。」

 気がつくと、上からメリーが、ナミを覗き込んでいた。

「捜したよ、ナミちゃん。」

「メリーちゃん!!!」

「ナミちゃん、昨日はあんまり話せなかったけど、三日後に青の国から、”混血村の件”で兵士が来るんだって、だからナミちゃんも、私と一緒に青の国に行こうよ。」

「メリーちゃん、ありがとう。でも、ごめん。私はメリーちゃんと一緒には、行けないよ。」

 ナミは、メリーの誘いを断った。

「なんで、ナミちゃん。なんでダメなの?私のことが、嫌いになっちゃったから。」

 メリーが泣きそうになりながら、ナミに迫る。

「違うよ、メリーちゃん。どうやら私は、吸血鬼みたいなんだ。だからこの国で、この戦争を早く終わらせるために、自分の力を役立てたいんだ。」

「それなら、私と一緒に、青の国に行って、それをやろうよ。」

 ナミは無言で、首を振った。

「メリーちゃんも気がついてると思うけど、人狼の力と吸血鬼の力は違うから、人狼の国では、逆に、私の方が浮いちゃうよ。だから、私はここで、吸血鬼の”力の制御”を覚えて、ここで、がんばりたいんだ。 それに、私なら、レオンが”飛行の力”も使えるだろうって、言ってたから、すぐに覚えて、ちょくちょくメリーちゃんの所に遊びに行くよ。」

「ナミちゃん。なんでそんなに、この戦争にこだわるの?」

「私ね。混血村が今回、こんなことになって、あらためて思ったんだ。

 もう一回混血村を作ろうって。

 でも今度は村じゃなくて、もっと大きくして、この間のようなことがあっても、大丈夫なような強い、大きな国にするつもりなんだ。」

「ナミちゃん!!!」

 メリーは、びっくりした顔で、ナミの話を聞いた。

「そうすれば、あんな事態になっても、すぐに対応できる。

 昔よく、とうさんやかあさんは、平和を考えていれさえすれば、神様がいるから、”争い”は起こらないって、言ってたんだ。

 でも実際は、野心がある人達が襲ってきて、あっという間に、とうさんもかあさんも殺されちゃった。

 だから、今度は、”平和に暮らしたい。”って、思う人たちを守れる国に、するつもりなんだ。

 まだ、具体的にどうすればいいか、わかんないけど、そんな国を作りたい。

 それには、まず今の戦争を終わらせなくちゃ、ダメだから。

 私なりにこの国で、まず戦争を終わらせるために、がんばるつもりだよ。」

「ナミちゃん、すごい。私もそんな国、作りたいよ。」

 メリーはナミの手を、ギュッと掴むと、

「わかった。じゃ、私もナミちゃんの夢に協力するよ。そのために、私は、青の国に行って、この戦争が早く終わるようにがんばるよ。

 そして、一日でも早く、”平和に暮らしたい。”って、思う人たちを守れる国を作ろう、ナミちゃん。」

「「やくそくだよ。」」

 二人は、腕を組んで、額を合わせた。

 混血村で良くする誓いの儀式だ。

『必ずやり遂げる。』

 二人とも心に誓った。

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