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8 だだ漏れナミ

 お腹がいっぱいになって、ブルにお礼を言った所で、ナミはレオンの小脇に抱えられ、メリーと話す暇もなく、長い廊下を颯爽と歩く彼とともに、寝室に連れ戻された。

 ナミは、部屋に着いた途端、またソファーに投げ出されると、身構えた。

 だが、ソファーに投げ出されることはなく、綺麗にベッドメイキングされたベッドと、その下に畳まれた毛布の傍を通り、奥にある四つのドアのひとつを、開けた所に降ろされた。

 見ると、そこは浴室だった。

中には、今まで生まれかわってからは、見たことがなかった、前世懐かしの浴槽があった。

それも猫背で優雅に金色の装飾が施された逸品が、その浴室中央に鎮座していた。

「うわー、うわー、すごい。」

 ナミは思わず、感嘆の声をあげると、その浴槽に張り付いて、そこらじゅうを触った。

『浴槽だぁー。お風呂に入れる。すっごい。』

 ナミは、ただただ感動していた。

 この世界に生まれてからこの方、シャワーばかりで、水に浸かるといえば、川で泳ぐくらいだ。

もちろん、外だから水着も着けている。

「ナミ、ナミ、聞いているのか?」

 ナミは感動のあまり、レオンが話しかけているのに、まったく、気がつかなかった。

「えっと、なに?」

 ナミの態度に呆れたレオンは、直接ナミの手を取ると、傍で、光っているクリスタルに触れさせる。

 ナミの手が触れた途端、浴槽に湯気が立ち込めた。

 なんと傍の管から、お湯がなみなみと流れ出したのだ。

『すごい。お湯だ。』

 ナミは手を出して、その湯に触った、アツアツだ。 

 本当のお風呂だ。

『感動だぁーーー。』

 ナミのダダ漏れ感想を聞かされ続けたレオンは、ひたすら隣で、呆れていた。

『なんでこいつは、こんなもので、感動するんだ。相変わらず、かわった小娘だ。』

 レオンは、溜息をつきながら、ナミに話しかけた。

「ナミ、入り終わったら、出てこい。話がある。」

 ナミは半分も聞かずに、首を縦に振ると、お湯の止め方を聞く。

レオンは呆れながらも、もう一度、手で同じ所を触れば、お湯が止まるのを教えると、浴室を出ていった。

 ナミは持っていた、剣とフライパンを床の上に置くと、早速、服を脱いで、お湯につかった。

『極楽・ごくらくだぁー。すっごい。』

 浴槽であったまっていると、頭の所に、石鹸があった。

 泡立てて、体を洗う。

 洗いながら、自分の胸をしげしげと眺めた。

『もう少し、この胸、大きくならないかな。

そうしたらメリーちゃん見たいに、モテモテになれるよね。』

 

『うーん、いいにおい。』

 ナミは、何度も石鹸を泡立てて、体を洗うと、お湯を抜いて、もう一度きれいな湯を溜めなおす。

 そして、体がふやけそうなくらい、お湯を堪能したあと、ナミはバスタオルで体をふいて、さっきも着ていた服をきた。

『しまった。こんなことになるなら、混血児村を出る前にせめて、下着と洋服を持ってくるんだった。絶対に、明日はレオンに飛行の仕方を教わらなくっちゃ。』

 ナミは明日の予定をブツブツ言いながら、洋服を着ると、浴室のドアを開けた。


 部屋に戻ると、レオンがソファーで、ワインを飲んでいた。

『どんだけ、ワイン好きなんだぁ。そう言えば、レオンが食事してるのを、見たことないけど、なんで?』

 ナミは、ハッとなった。

『たしか、前世で見た映画では、吸血鬼は、人間の生き血を吸っていた。

私が無理やり、飲まされた飲み物は、鉄さびの味。ということは、レオンのワインって、人から搾り取った生き血!!!!』

 ナミが慄いて、後ろに下がろうとすると、レオンから見とがめられた。

「ナミ、本当に何度も言うが、お前は自分の考えが、ダダ漏れているのを自覚しているのか?さっきから、”胸が小さいだなんだ”とうるさいぞ。

それと、付け加えておくが、このワインは、紫炎ザクロという実から、採った果汁を発酵して作った飲み物で、人間の生き血ではない。

 さらに言っておくが、吸血鬼でありながら、食事をうまそうに食べるのは、ナミくらいだ。

 それと吸血鬼の力に目覚めた後は、”紫炎ザクロのワイン”を飲むのが食事で、普通の食事はしない。おい、ナミ聞いているのか?」


「なっ、なっ、なんで、お風呂で、考えていたことが伝わるの。胸が小さいって、なんてこと、聞いてるのよ。」

 まったく話を聞いていない、ナミに呆れながら、レオンはワイングラスを脇に置くと、彼女の傍に行って、抱き上げと、そのままソファーに座った。

『なっ、なっ、なんで私、レオンの膝の上にいるわけ?』

 ナミは、自分がレオンの膝の上に、抱き上げられている、というこっぱずかしい状態に、顔を真っ赤ににして、うろたえていた。

「ナミ、いいかよく聞け。俺がナミの声を聞いているのではなく、ナミが俺に、聞かせているんだ。」

「えっ、今なんて言ったの。私がレオンに聞かせているの?」

「そうだ。ナミ、お前の力は、吸血族の中でも、トップクラスだ。

だから、今のお前がなにもせずに、考えごとをすれば、それは全て、俺の中に流れ込んで、きてしまうんだ。」

 レオンから飛び出した、とんでもない情報に、ナミは言葉もでなかった。

「なっ、ちょっと待って。じゃ、さっきの例えば、浴室で考えてたことが、他の吸血鬼たちにも、聞こえていたってこと。

うそーーー、やだぁーーー、恥ずかしくて、生きていけない。」

 ナミは、両手を頬に添えて、真っ赤な顔をさらに赤くして、涙目になった。

「待て、ナミ。何を勘違いしている。今、ナミの声が聞こえているのは、俺だけだ。」

「えっ、だって、レオンに意識しなくても、聞こえるなら、他の吸血鬼にも、聞こえてるんでしょ。」

 レオンは非常に、疲れた顔で、ナミを見てから、説明を付け加えた。

「声が聞こえるのは、普通どちらかが、相手の血を飲んだことがある場合だけだ。

逆に聞くが、ナミ、お前は、俺以外の吸血鬼の血を、飲んだことがあるのか?」

 思いがけないことを聞かれて、瞬間、固まったナミだが、血を飲まされたことがあるのは、レオンにだけだし、もちろん、自分の血を飲ませたことなんかない。

「レオン以外の人の血なんか、飲んでことないし、他の人に自分の血なんか、飲ませたことはないよ。」

 レオンは、ナミの告白にホッと、胸を撫で下ろすと、

「明日、朝から”力の制御の仕方”と、”飛行の仕方”を教えてやる。それまで、あまり変なことは、考えるな。わかったな、ナミ。」

 レオンの説明に、ナミは頷いた。

 レオンは、ナミが納得したのを見ると、膝から解放してくれた。

 ナミはホッとして、レオンの膝から、素早く降りる。

 レオンはナミのその動作を見ながら、思い出したように言った。

「言い忘れていたが、着替えの下着は、その棚の上だ。」

 レオンは、そう言うと、さっきナミが使った浴室に入って行った。

『ちょっと、下着って、なっ、なっ、なっ・・・・。うえーん。

絶対に、明日中に”力の制御”と”飛行”の仕方は、覚えるぞ。』

 ナミは、浴室から響いてくる、笑い声を無視して、心に誓った。


『取り敢えず、着替え・・・。』

 ナミは、ハッとした。

 今、考えたことも、レオンに筒抜け?

 と考えていると、浴室から案の定、追加笑いが聞こえた。

 ナミはまたもや、真っ赤になりながら、下着と洋服を手に取ると、なんとか何も考えず着がえた。

 着がえただけで、ぐったりだ。


 以外に何も考えずに行動すると、なると難しい。


 ナミは主寝室にある、大きなベット脇の床に置いてある、枕と毛布を拾うと、ソファーで丸くなった。

 さすがに、フカフカ絨毯が敷かれていても、床では寒い。

 今日の起こった出来事に、精神が疲れ過ぎていたのか、直ぐにウトウトして、そのうち、熟睡していた。

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