55奪還
レオンは飛び続けながら、ナミに念話を送り続けていた。
『ナミ、答えろ。俺だ。』
諦めずに、何度も念話を続けた。
なんだかわからないが、焦りだけが募っていく。
くそっ
なんでもいいから答えてくれ、ナミ。
その頃ナミは、王宮の一室で、床に放り出されていた。
「なんだ、このみすぼらしい娘は?」
攫ってきたデイヴィの部下の一人が説明した。
「マーティン様の報告にあった、レオン様が、たいそう可愛がられている娘、とのことでしたので、連れてまいりました。」
「ほう、確かに、レオンのエネルギーが、ウザいくらい、まとわりついているな。」
デイヴィがそう言い終わった時、やっとナミの目が覚めた。
ここどこ?
ナミが目を開いて、周囲を良く見ると、彼女の前には、病的な真っ白い肌で、白髪の美男が、自分を見下ろしていた。
だれ・・・?
「ほう、気づいたようだな。小娘。」
ナミは声の主を見た。
でも、やはり見覚えがない。
誰なの、この人。
「ほう、これはまた。すごい魔力だな。」
デイヴィはそう言うと、床からナミの髪を鷲掴むと、体を持ち上げた。
「なっ・・・なにする。」
「ほう、魔力だけは、一人前か?」
デイヴィは、ナミの首筋をベロッと舐めた。
なっ、なん・・・やだ、気持ち悪い。
ナミは、身震いした。
「なんだ、その震えは? 小娘のくせに感じたのか?」
な訳あるかぁ!
やだ、やだ、やだ。
触るな、放せ!
ナミは、髪に手をあてて、デイヴィから逃れようとする。
バシーン
途端、デイヴィの平手打ちが、ナミの頬を襲った。
ゴムで叩かれたような痛みが走り、一瞬、気が遠くなる。
「俺様が、お前の血を飲んでやろうというんだ。大人しくしろ!」
デイヴィは、そう言うと、ナミの首筋を、もう一度舐めてから、牙を閃かせた。
やだ・・・いやだ・・・レオン!!!
ナミは、目を瞑ると、レオンを思いっきり呼んだ。
レオンは、体が物凄く強い力に、思いっきり引っ張られた瞬間、空中に、放り出されていた。
下を見ると、デイヴィが、今まさに、ナミの首筋に、噛みつこうとする、ところだった。
レオンは、目を大きく見開くと、魔力を手に集めて、それをデイヴィに叩き付けた。
彼の体が、後方に、勢いよく吹っ飛んだ。
ドッカーン
物凄い音を立てて、後ろの壁にめり込む。
ごほっ、ごほっ。
「レオン、どこから湧いて出た。」
レオンはデイヴィの声を無視すると、ナミを助け起こした。
「大丈夫か、ナミ?」
見ると、ナミの右頬と右目が、真っ赤に腫れ上がっていた。
レオンが鬼の形相で、デイヴィを振り返った。
「ほう、どうした。お前のそんな顔は、久しぶりだな。」
デイヴィは、やたら、レインを挑発した。
レオンは、それに答えず、剣を抜くと魔力を纏わせて、デイヴィに斬りかかった。
デイヴィの部下たちが、レオンの前に立ちふさがるが、彼はそれをすべて、一閃で斬り伏せた。
ハハハハハハ
「何を怒っているんだ。そんな人間の小娘・・・。」
デイヴィが全て言い終わらないうちに、レオンの剣が、彼の心臓を突き刺していた。
「お前、なんで、こんな・・・。」
デイヴィは、言葉の途中で、床に頽れると、白い砂山になった。
「レオン様!」
大分、遅れて、ハリスが、影の首領である息子のステランを連れて、デイヴィの執務室に、駈け込んできた。
そこには、窓からの風で、散らばった白い砂が、床の上にあるだけだった。




