54略奪
油断した。
レオンは、踵を返すと、赤の国の首都に、高速飛行で向かった。
後方からは、ハリスがレオンの後を追って来ていた。
事件は、小一時間ほど前に起こった。
雨がちょうどあがった所で、ナミはレオンの異母弟=マーティンによって、壊された実家を魔法で修繕していた。
修繕は、簡単だ。
家の外壁に手を這わせながら、昔の記憶を呼び起こして、その通りにイメージして、そこに手を這わす。
すると、ナミの創造通りに、壁が昔と同じような姿に直っていく。
この方法は、プロフェッサーサトウに教わった。
遺跡で家の修復用の板を捜していたら、なんで魔法で直さないのかと聞かれのだ。
つまり、逆を言えば、物は魔法で直せると気がついたのだ。
なので、一通り直して回った。
一息ついて、壁に梯子を掛けると、屋根に上り、今度は屋根を直し始めた。
こっちは、元通り、といっても、昔の記憶がないので、隣の屋根板と同じものを想像して、順番に直して行った。
ほぼ終わった所で、額の汗を拭った。
見ると寸分たがわず、同じような見事なものに仕上がった。
やるじゃん、自分。
誰も褒めてくれないので、自画自賛していたら、家のすぐ傍から、人の話し声が聞こえてきた。
誰もいないはずなのに、と思って下に降りた。
途端、知らない大人たちに囲まれる。
慌てて、逃げようとしたが、鳩尾に拳を食らって、そのまま地面に頽れた。
「どうやら、この娘で間違いないようだな。」
一人がナミを担ぎ上げて、空に舞い上がりながら、呟いた。
「ああ、レオン様のエネルギーがウザいくらい、まとわりついているからな。」
その隣をもう一人が、補うように飛ぶ。
「「「よし、行くぞ。」」」
後の三人も同時に舞い上がると、編隊を組んで、ナミを連れたまま、赤の国に向かった。
レオンは、朝目覚めた後、城を後にして、ナミがいる混血児村に向かった。
大分ナミの力が抜けて、コントロールがしやすくなった。
体調も依然と変わらないところまで戻っていた。
レオンが混血児村の遺跡近くまで来ると、なぜか部下たちが、村の中をウロウロしていた。
「どうした?」
「レオン様。今朝方、ナミ様が出掛けたっきり、戻って来なくて、捜しに来たんです。」
「なんだと!」
レオンは、周囲にナミの気配がないか探る。
集中して、捜すが見つけられなかった。
一応、念話をしてみるが、これにも答えがなかった。
レオンは、部下に、そのまま周囲を捜すように命じると、遺跡に向かった。
中に入り、ナミの行方を知らないか呼びかけると、通路にあったモニターに、コンが現れた。
ナミなら、今朝方、混血児村に現れた五人男に、連れて行かれたと、呑気に話すと、その時の様子を映し出してくれた。
「くそっ、油断した。デイヴィの手下だ。」
レオンは、コンに村にいる部下に、この事を伝えるように命令すると、すぐに赤の国に行く為、自分の城に戻った。
城に着いた途端、この間、王宮で会ったデイヴィの執事が、そこにいた。
「レオン様。」
レオンは、いけしゃあしゃあと、そこにいた執事を無視すると、城に入った。
「お待ちください。私はお約束通り・・・。」
レオンは振り返ると同時に、執事を殴りつけた。
そして、唖然としている彼を後に残して、自室で白銀の剣を鞘に納めると、そのまま庭にとって返した。
すぐに庭から飛び立つと、デイヴィがいる王宮に向かった。
見ると、後ろからデイヴィの執事が、ついて来ていた。
「何があったんですか? レオン様。」
「お前の主が、俺のものを、奪って行ったんだ。」
レオンの一言で、ハリスは全てを理解した。
二人は、物凄いスピードで、デイヴィがいる王宮に向かった。




