51魔国の後片付け(2)
部屋を飛び出したクロウの後ろに、シンクが自分の部下である近衛兵を引き連れて、ついてくる。
「現状は?」
クロウが後ろに走りながら、問いかけた。
「王宮はあちこちで、仲間内による小競り合いが起きて、メチャクチャ。街はもっと悲惨だ。人間と魔国の兵との交戦が、そこらじゅうで起きていて、収拾がつかない状態だ。」
クロウは一瞬で、判断した。
「王宮は、カンナに任せて、私たちは、街に向かう。」
「分かった。」
一瞬、シンクが黙った後、クロウに報告した。
「王宮は、すでにカンナの手のものに、掌握されつつあるようだ。」
クロウはその報告を聞いた後、ニヤリと人の悪い笑みを浮かべた。
「なんだよ、何が言いたい、クロウ。」
「”伴侶の儀”を結んだのか、シンク。」
真っ赤になったシンクが、クロウに喰ってかかるように怒鳴る。
「お前たちが姿を消して、何百年もたったんだ。俺だって、そろそろ、報われてもいいだろ。」
シンクは真っ赤な顔で、吐き捨てるように言うと、部下に怒鳴った。
「てめら、行くぞ。遅れるなよ。」
全員が王宮の外に出ると、魔力で上空に飛び上がる。
クロウは、火の手が上がった箇所を見て、一瞬で状況判断をすると、近衛を二部隊に分けた。
「シンク。お前は王宮前の人間を一掃しつつ、負傷者救助をやってくれ。後のものは、私と一緒に、後方からこちらに向かってくる人間たちの排除だ。」
魔国の近衛兵は、初めて会ったはずのものが大半なのに、彼の命令に、瞬時に頷いた。
クロウは、改めて王宮に向かっているレオン様の部下に、今の自分の状況を念話すると、魔国の配下を連れて、今も煙を上げながら、交戦中の戦闘場所に向かった。
一方、王宮では、カンナが陣頭指揮を執って、紆余左右していた魔国の兵士を、扇で薙ぎ払いながら、掌握していた。
「カンナ様、西宮の制圧、完了しました。」
「北宮も制圧、完了です。」
次々と、カンナの手のものが、状況を報告にくる。
「後は、王がいる東宮と王子がいる南宮ね。さて、この二つは難しいわね。東宮は後にするにしても、南宮は、あいつらが戻ってくるまでに制圧しないと、不味いわね。」
カンナの呟きに、ブリジットが後ろから声をかけた。
「王宮にある隠し通路を使えば、いいんじゃーないかしら?」
カンナは、ブリジットの提案に、ガバッと後ろを振り向いた。
「ブリジット、知っているの?」
ブリジットは、カンナに気圧されながらも、頷いた。
「ええ、南宮に行く隠し通路なら、知っているわ。」
カンナは、満面の笑みでブリジットを見ると、ギュッと抱き付いた。
「ありがとう、助かるわ。すぐに案内して、頂戴。」
ブリジットは頷いて、歩き出した。
カンナは後ろから自分の配下を引き連れながら、後に続く。
ブリジットは王宮の庭に出ると、一番奥にある東屋に一直線に向かった。
東屋は、床に白いタイルが均一に敷き詰められ、壁際にびっしりと椅子が括りつけられていた。
ブリジットは東屋に足を踏み入れると、何かのステップを踏むように、床を蹴った。
一通り蹴り終えると、素早く、東屋から出る。
カンナが、唖然と見ていると、東屋の床が跳ね上がって、床の一部が開き、階段が現れた。
「何これ?」
「南宮に直接通じる通路よ。」
ブリジット以外、全員が唖然としながらも、中に足を踏み入れた。
中は、光のクリスタルが備え付けられ、灯りは必要なかった。
カンナは配下のものと、速足でブリジットの案内のもと、南宮に向かった。
かなり歩いた所で、ブリジットに手で、前方を遮られ、ここが出口だと教えられた。
全員が、剣を抜くと、ブリジットがそれを見て、扉を開けた。
中に雪崩れ込むと、そこは第一王子の寝室だった。
全員が一瞬、ビックリしながらも、カンナの指示の元、第一王子を捕獲、南宮を制圧した。
制圧完了後、カンナは、ブリジットの耳元で囁いた。
「この通路を何の目的で使っていたのか、後で教えてね。」
ブリジットは、真っ赤な顔で首を横に振った。
「絶対に教えないわ。」
彼女は、涙目でカンナをギロリと睨みつけた。




