49異母兄デイヴィ・キング
翌朝、レオンは、ハイブリッドであるナミの血を、再度実感するはめになった。
体中からエネルギーが溢れ出して、力の制御が出来ず。
あわや自分の寝室の壁を、ぶち抜きそうになったのだ。
なんとか、戦いの時のように、神経を集中して、それを回避したが、非常に危うかった。
その後、何とか起き上がって、マーティンと一緒に、朝食を済ませた。
すぐに、それから二人は、連れだって、赤の国の王都を目指した。
「どうしたんですか、レオン異母兄さん?」
レオンが、あまりにも静かだったので、マーティンから声がかかった。
「いや、何でもない。」
レオンは額に汗していた。
力の制御が追いつかないのだ。
ちょっと気を緩めると、エネルギーが体からあふれ出て、しまいそうだ。
その度に、ナミの制御する力の強さに、驚愕しっぱなしだ。
この力の何十倍ものエネルギーを、ナミは毎日、自然に制御していることになるのだから。
あいつは、ホントに規格外だ。
レオンが感心しながら、飛んでいると、前方に王都が見えてきた。
きれいに整備された古い街並みが続き、その中心に王宮が見える。
大きさは、レオンの城より一回り以上は大きいが、建物が華美なだけで、攻略しようとすれば、すぐにできてしまう点が、いつも気に入らない。
レオンとマーテインは、結界が張られているため、直接行かずに、王宮の門の前に、降り立った。
すぐに、門の脇にいた若い兵士が、レオンとマーティンに駆け寄って来た。
レオンは、ここで揉めるようなら、それを理由に、城に戻ろうと思っていたのだが、若い兵士が口を開く前に、王宮から迎えの執事が現れた。
「お持ちいたしておりました。レオン様。」
執事は、すぐ傍にいたマーティンを無視して、レオンにだけ挨拶した。
長兄の純血種好きは、相変わらずか。
レオンは、心の中で溜息をついた。
執事は知ってか知らずか、そのまま二人を、王宮の中に案内してくれた。
執事は王宮に入ると、東に位置するキラキラした部屋に、レオンとマーティンを通した。
そして、礼をすると、そこから下がっていった。
マーティンは、すかさず、棚にあったワインを勝手に開けると、瓶に直接口を付けて、飲み始めた。
「うめぇー。さっすが、バカ異母兄さんとこにある、ワインだなぁー。」
マーティンが瓶からラッパ飲みしているところに、先程退出して行った執事が戻ったきた。
開いたドアには、レオンの異母兄である真っ白な髪を肩まで伸ばした男=デイヴィ・キングが現れた。
「御主人様、こちらでございます。」
デイヴィが、執事に案内されて、部屋に現れた。
彼は、一言も発せず、部屋に入って来た。
まっ、ここは、デイヴィの王宮なんで、それはかまわないが、待たせておいて、一言もないとは、相変わらずだな。
レオンは何も言わないデイヴィを、軽く睨みながら、向こうが口を開くのを待った。
「俺は、魔国と青の国に宣戦布告する。」
二人は気が狂ったとしか思えない、発言をする長兄デイヴィを見た。
「なんだ。何か言いたいことがあるのか?」
「俺は協力出来ないよ。」
マーテインがワインを、ごくごく飲みながら答えた。
「お前には、かけらも期待していない。」
デイヴィは、異母弟のレオンを見た。
レオンは、目線を長兄デイヴィに向けると、顔色も変えずに断言した。
「私の領地を超えられるのは困ります。なので、お断りします。」
「どういう意味だ。」
デイヴィが、異母弟のレオンを睨む。
「領地に、長兄の軍を立ち入らせるのを、許可する気はありません。」
「なんだと!」
レオンは、それだけ言うと、ソファーから立ち上がった。
デイヴィは、いきなり帰ろうとしているレオンに、後ろから掴み掛ろうとして、魔力で跳ね返された。
ボワァー
バターン
すごい魔力が、部屋から廊下に溢れ出し、王宮の一角を破壊した。
デイヴィが真っ青な顔で、レオンを見ている。
「なんだ、その力は?」
レオンは、顔だけデイヴィに向けると、ニヤリと笑うと、そのままスタスタと、廊下を歩いて行った。
門を出ようとした所で、先程の執事が、後ろから、近づいて来るのに気がついた。
「お待ちください、レオン様。」
さっきとは、打って変わって、今度は必至の形相だ。
レオンは、追ってくる執事を振り向いた。
執事は、肩で息をしながら、レオンの前まで来ると地面に膝をついた。
レオンの目が見開かれる。
「お願いでございます。今のお力をどこで手に入れたか、お教え下さい。」
「何のことだ?」
「その力をお持ちの方に、お会いしたいのです。」
執事は今にも、地面に土下座せんばかりだった。
「お前は、デイヴィの執事だ。」
レオンはそう言い放つと、背を向けた。
「では、私がデイヴィ様の進軍を止め、さらにレオン様の味方だと、証明できれば、教えていただけるのですね!」
執事はレオンの背に、そう問いかけたが、彼はその声を無視すると、そのまま赤の国を後にした。
だいぶ遅れて、マーテインが飛んで来た。
「レオン異母兄さんも酷いなぁ。あの状態で、普通、置いていく?」
「ワインを堪能したかったんじゃ、ないのか?」
マーテインは、目を大きく見開いて、笑い出した。
「そうだね、確かに堪能出来たよ。」
マーテインはそう言うと、レオンの城の手前で、さっさと別れた。
先程の執事と言い、今回はなんだか、よくわからない会談だったな。
もっとも長兄のデイヴィは、いつもとブレないことを、言っていたが・・・。
レオンは、そこまで考えると、一端、自分の城に戻った。




