48長兄のたくらみ
レオンは、異母弟のマーティンを連れて、小屋を出ると、そのまま自分の城に向かった。
体が少しフラつくが、飛べない程ではない。
後からは、異母弟のマーティンが、ついて来ていた。
二人は短時間で、レオンの城に辿りついた。
二人が到着してしばらくしてからやっと、レオンの召使いたちが、城の中から現れた。
「あれ、クロウはいないの?」
いつも主人が帰ってくると、真っ先に駆けつける執事長の姿が見当たらず、マーティンが首を傾げた。
さすがに長兄も、クロウが、今、どこにいるかは、知らないようだ。
「今は、まだ魔国にいる。」
「えっ、クロウが魔国って、珍しいね。」
レオンは、それには答えず、メイドを一人伴って、まっすぐ食堂に向かった。
マーティンは黙って、ついて来た。
食堂はブルがいないので、レオンに、付き従って来たメイドが、棚からグラスを取ると、傍に置いてあった樽から、ワインを注ぎ、二人に差し出した。
レオンは、それを受け取るとメイドに下がるように合図した。
隣では、マーティンがレオンが飲み始めるとやっとそれに口を付けた。
「それで、長兄は、お前になんて言って、ここに来させたんだ。」
「なんの話? 何が聞いたいの、レオン異母兄さん。」
「お前に提示した報酬は、何だったんだと聞いているんだ。」
「別に報酬なんて、何も貰ってないよ。」
レオンの質問に、マーティンは、両手を上げると、首を傾げた。
「青の国が持っている穀物地帯、もしくはブドウ畑というところか?」
レオンは、マーティンを、さらに睨みつけながら、言いきった。
「やだなぁ、レオン異母兄さん。何言ってるの?」
「長兄から、本当にそれを、貰えると、思っているのか?」
レオンの断定的な問いかけに、マーティンは肩を竦めた。
「バカ兄貴がくれるとは思っていないけど、今なら奪い取るのは、簡単だと思っているよ。」
マーティンは、諦めて話し始めた。
「奪ったとして、維持できると思うのか?」
赤の国の人間は、とにかく、何かを育てるのに、向いていない。
それを上手にやれるのは、今の所、人間と獣人だけだ。
レオンのそんな問いかけに、マーティンは答えた。
「俺は維持できないと思ってるけど、周りは取れればそれでいいと、思ってるヤツばかりだよ。」
なるほど、マーティン自身は、そう思っていなくても、彼の側近や仲間がそう言うなら、無視もできないか。
レオンは、少し考えてから、マーティンに提案した。
「俺は、戦いが好きだが、面倒なことはしたくない。側近や周囲を納得させられるなら、レオン異母兄さんの案に、のってもいい。」
「そうか、わかった。」
レオンとマーティンは、明日の出発時間だけを確認した。
レオンは、通路でメイドを捕まえて、マーティンを客室に案内させると、自分も寝室に引き上げた。
流石に、ナミの血を貰ったとはいえ、精神的な疲労までは、回復できない。
レオンは、早々とベッドに入ると、体を横たえた。
頭の片隅には長兄との対談をどうすべき、全く考えつかなかったが、結局疲労には勝てなかった。




