44非常識
ナミは、さっきとは違って、だいぶ顔色が良くなったレオンを眺めた。
本人は、死んだように眠っているが、呼吸も荒くない。
よかったぁー。
さっきは本当に、どうなることかと思っちゃった。
ナミは、我に返ると安心したせいか、自分のお腹が鳴っているのに気がついた。
よく考えれば、今まで何も口にしていない。
ナミは台所に戻ると、戸棚を漁った。
干し肉が戸棚の中に入っていた。
ナミは鍋に水を入れると、干し肉を火にかけて、それを煮込み始めた。
ぼんやりしながら、グツグツいうまで、そこで鍋を掻き回しながら待った。
その後、煮込んだ干し肉とスープで空腹を満たすと、ナミは火を消して、レオンが眠る部屋に戻った。
ドアを開けると、レオンは布団から起き上がっていて、ベッドの背もたれに背中を凭れながら、ドアから入ってきたナミをみた。
「レオン、なんで起きてるの? 寝てなきゃダメじゃん。」
ナミは、レオンに駆け寄ると、彼を寝かせようとした。
「もう、大丈夫だ。さっきよりだいぶよくなったからな。ナミの血のおかげだ。」
レオンの笑顔にナミの心臓が跳ねる。
「レオン。」
ナミは嬉しくなって、レオンが寝ているベッドに座ると、首すじを差し出した。
「もう少し飲む、レオン。」
ナミの行動に、なぜかレオンがピキッと固まった。
「レオン、どうしたの?」
レオンは、ナミの白い首筋をジッと見ている。
こいつは、自分の首筋に噛みつけといっているのか?
首筋に噛みつくとは、いわゆる所有の印!
俺に伴侶になれといっているのか?
「なにを考えている、ナミ?」
レオンは何やら真剣に、ナミに聞いてきた。
「なにって、レオンに血を上げようと思っただけだよ。」
ナミはコテッと首を傾げる。
「今の行為の意味を知って、言っているのかと、聞いているんだ!」
レオンはさらに、ナミを真剣な目で見つめてくる。
「もちろん、そうだけど?」
いったい何を聞きたいんだろうか?
ナミは首を傾げた。
こいつは、やっぱり、今の行為がどういう事を意味しているのか、まったくぜんぜん、まるっきり理解していないのか?
レオンは、大きくため息を吐いた後、もう一度口を開いた。
「なんで首筋から血を吸えと、言っているんだと聞いている。」
レオンは、さらに畳みかけてくる。
「なんでって、普通、血って、首から吸うんじゃないの?」
確か、前世で見た映画では、そうだったけど、ここじゃ違うの?
そう言えば、最初、レオンから血を貰った時、指を口の中に突っ込まれたっけ。
それじゃ、本当は指からが、普通?
でも、あれって、相手の顔見て、指を口に突っ込むって、ある意味・・・。
ナミが考えている間にレオンから、さらに質問された。
「ナミ、獣人がなぜ首筋をさらすのか、意味を知っているのか?」
レオンが真剣に聞いてきた。
「えっ、それって、相手に敵意がないって、意味でしょ?」
レオンは、ナミの回答を聞いて、顔を手で覆って、しばらく項垂れていた。
こいつは、まったく、なんだって、こんなに無知なんだ。
何年この村に住んでいたんだ。
そう思うと、逆に、今言われたナミの行為が、はらただしくなってきた。
思わずレオンは、顔上げると、ナミをベッドに引きずり込んだ。
焦ったナミの声が、レオンの腕の中で聞こえた。
「えっ、ちょっ・・・何するの、レオン。」
気がつくとレオンに、両手を拘束され、のし掛かられて、身動きできなかった。
「ちょっ、動けない。レオン。離して!」
ナミが渾身の力を込めて、レオンを押すが、身じろぎ一つできなかった。
レオンの美麗な顔がナミを見下ろす。
「ちょ、冗談はやめ・・・。」
ナミは、レオンに抱き締められた。
心臓のドキドキと、ちょっと怖い感じが重なり合って、さらに、わけがわからなくなる。
「ナミ、さっきのが、どういう意味を示すのか、お前に教えてやる。」
レオンは、そう言うと、ナミを抑えつけたまま、スカートに手を伸ばした。
ゆっくり、スカートをめくられる。
ウソォー。
ちょっ・・・やだ・・・ダメぇ。
レオンの手が、ナミのスカートをめくって、両足を剥きだしにされた。
「やだぁ、レオン。」
レオンはナミの声を無視して、右足に手を添えると、太腿に口づける。
レオンが口づけている姿が目の前にあって、羞恥で泣けそうだ。
「ごめん、レオン。あやまるから、もうやめ・・・。」
レオンは、ナミの声を無視すると、そのままナミの太腿に噛り付いた。
レオンがナミの血を飲む音が部屋に響く。
羞恥のあまり、憤死しそうだ。
しばらく、するとレオンが手を離してくれた。
そして、ナミの顔目を覗き込むように呟いた。
「いいか、ナミ。お前はもう少し、常識というものををおぼえろ! これ以上、俺に、何かされたくなければ、もうちょっと考えてから、行動しろ。」
レオンはそう言うと、ナミを見た。
ナミは慌てて、ベッドから起き上がった。
「ご・・・ごめんなさい。」
ナミは、わけもわからず、平謝りすると、寝室から飛び出した。
ドアをバタンと閉めると、その場に頽れる。
何がいけなかったの?
ナミは唖然として、しばらく、そこから動けなかった。




