43口づけ
ナミは、気がつくと、レオンを抱えたまま、混血児村の自分たち家族が以前に、住んでいた家の前にいた。
そこは、昔となにも変わっていなかった。
一瞬何かが、頭を過ぎったが、慌ててそれを振り払って、ドアを開けると、一階にあった両親のベッドに、レオンを運ぶ。
そして、そのまま青白い顔の彼をベッドに寝かせた。
「レオン。」
ナミは何度か呼びかけるが、何も返事が返ってこなかった。
どうしたら、いいの?
どうすれば、いいの?
ナミはレオンをベッドに運んだ後、どうしていいかわからず、部屋をうろうろした。
そこに急に声が聞こえた。
”よくやったな。”
”ドクターサトウなの?”
ナミは慌てて、腕を振った。
画面から、さっきより鮮明な声が聞こえてきた。
”この状況で、他にだれがいる?”
いや、そうなんだけどね。
そうだけど、いや待って。
彼なら、今のレオンをどうすればいいのか、わかるかも。
ナミは、腕の通信機に向かって、吸血鬼であるレオンを助ける方法を聞いた。
”単純なことだな。血を飲ませればいい。”
”あっ、そうか。”
ナミは前世で見た映画を思い出した。
血を飲ませたら、元気になったんだっけ。
そう言えば、ナミも最初、助けてもらった時、レオンに血を飲ませてもらったっけ。
ナミは、食堂に行くと、自分の指を置いてあったナイフで切って、寝室に戻った。
すぐに、その指をレオンの口に突っ込んだ。
何でか、レオンは、飲もうとしない。
指をさらに、口の奥に突っ込もうとするが、口を開けてくれなかった。
うっ、なにをどうすれば?
えっと、えっと・・・?
ふと映画のワンシーンが浮かんだ。
何の映画だったか忘れたが、死にそうな主人公に、ヒロインがマウス トゥ マウスで・・・。
ナミの顔は熟れたトマトになった。
いやいや、自分、何考えているの?
あまりのことに少し歯を食いしばりすぎて、気がついたら口の中を切っていた。
こうなったら、・・・。
ナミは、青白さを通り越して、真っ白になっているレオンの顎に手を掛けると、口を開けさせて、そこに口の中いっぱいに広がった、自分の血をレオンに口移しで、流し込んだ。
やっぱりダメェ・・・。
ナミがそう思った時、レオンの喉がなった。
その途端、ナミの舌にレオンの舌が絡みついて来た。
ウソー!!!
えーん、ちょっ・・・。
やっ・・・、ダメェー。
しばらくたって、散々に翻弄された後、我に返って、レオンを突き飛ばして、ベッド脇に頽れた。
もうダメ。
これ以上、血を飲ませるなんて、無理ぃー。
出来ないよぉー。
ナミが涙目で遠くを見ていると、ベッドで寝ていたレオンの目と目が合った。
へっ、目が合う?
「ナミか?」
「レ・・・レオン、私がわかる?」
レオンは、気だるげに髪を掻き上げると、ナミを見た。
「ああ、だいぶ怠いが、さっきよりは、格段に良くなったよ、ナミ。お前が俺に、血を飲ませてくれたおかげだ。」
「よっ・・・よかったぁー。レオンも父さんたちみたいに、なっちゃうんじゃないかと思って、私・・・わたしぃ・・・。」
ベツドでぐったりしているレオンに抱き付いて、泣いているナミを、彼は優しく撫でてくれた。
「俺はそう簡単には、死なないさ、ナミ。だか、今は少し疲れた。このまま、寝かせてくれ。」
レオンはそう言うと、目を閉じた。




