42エネルギー変換術式
グレイたちが、シールドを張り続ける中、またもや人間の兵士が、グレイたちの前に現れた。
まずい。
この状態では、反撃もままならない。
グレイは、自分の体を盾にするように人間に背を向ける。
メリーがグレイの腕の中でもがいた。
でも、この術式が作動いている時に、シールドの外に出れば、今度は彼女が金縛りになって、動けなくなり結局撃たれるのは、明らかだ。
「グレイ。離してください。」
「術式が停止するまでは、だめだ。」
「うっ・・・。」
人間の兵士が打った弾丸がシールドを抜けて、グレイの背に当たった。
「グレイ!」
メリーの心配そうな声が、グレイの腕の中で響いた。
「大丈夫だ。今、シールドの強度を上げた。」
術式でいつも以上に力を吸収され、シールドの強度が弱かったようだ。
グレイは、力を振り絞るように、エネルギー放出を強くした。
ふと周囲を見ると、エネルギーの渦が白く輝きながら、術式に吸い込まれていく。
それと並行して、体から力が、予想以上に抜けていく。
これは、かなりまずい。
このままでは、術式が消える前にシールドが消え、生命エネルギーを吸い上げられてしまう。
グレイがそう思った瞬間、どこからか轟音が鳴り響いた。
何か重いものを、何度も固い壁に叩き付ける音だ。
一体、なんの音なのだろうか?
全員がそう思った時、その音が突然、まったく違う音に変わった。
ピキピキピキッ
パッリーン!
ガラガラガラーン
その音が鳴り響くと、ともに術式が跡形もなく、消えてなくなった。
全員が唖然と空を見上げた。
今まで輝いていた術式が、信じられないことに、なくなっていた。
全員、何が起きたのか一瞬わからなかった。
グレイたちが我に返るより先に、メリーと彼女の私兵たちの方が、判断が早かった。
メリーを先頭に私兵たちが一丸となって、人間の兵士に斬りかかると、彼らはすぐに、斬り伏せられていた。
グレイたちは、ホッと力を抜くと、シールドを解除した。
途端、全員が魔力切れ寸前だったようで、その場に頽れた。
傍らに走ってきたメリーに、グレイは支えられた。
「大丈夫ですか、グレイ様?」
「ああ、君たちがいてくれたおかげで、助かったよ。」
メリーは嬉しそうに微笑むと、彼を支える手に、さらに力を込めて答えた。
「私も先程、グレイ様に助けていただきましたから、お互い様です。」
グレイたちは、メリーの私兵と一緒に、再度、王城を目指した。
途中、グレイは、他の二部隊と念話で連絡を取り合った。
彼らはグレイたちほど王城に近くなかったので、グレイの念話後、シールドを張って、術式の範囲外に出られたようだ。
彼らも術式が消えたので、こちらに向かうと言って、念話が切れた。
結局、最後は全員が王城で集まることになった。
王城に着くとそこは、死体の山が散乱した酷い状態だった。
どれが獣人でどれが人間か、わからないものさえあった。
死体を見慣れているグレイたちでさえ、目をそむけたくなるようなものも・・・。
たまに人間の兵士を見かけるが、先ほどのような術式がなければ、単に銃を撃って来るだけなので、なんていうことはない。
グレイたちはあっさり片付けながら、先に進んだ。
行けども、行けども、死体の山と、残った人間の兵士しかいなくて、いい加減捜索をあきらめようと思ったところに、まだ全身が傷だらけながらも、息がある兵士を見つけた。
「おい、大丈夫か?」
グレイの部下が、全身血だらけで、わずかに息をしている兵士を助け起こした。
「ジミー!」
メリーが急いで、傍にかけよる。
「何があったの、ジミー?」
どこかで見たことがある兵士だと思っていたら、グレイとこの間試合した相手だった。
ジミーは、どうやら先輩兵士に庇ってもらったおかげで、人間の兵士から撃たれた時、致命傷を負わなかったようだ。
グレイの部下が応急処置をしたせいか、少しだが息が落ち着いてきた。
「先輩は?」
ジミーは、ふらつきながらも、起き上がろうとした。
メリーが起き上がろうとしたジミーを止めた。
「今はまだ、無理よ。」
それでもジミーは、起き上がろうとする。
すぐ隣で応急処置を終えたグレイの部下が、首を横に振った。
「この辺りで息があるのは、君だけだ。」
グレイが、周囲を見て、生命エネルギーを確認して、呟いた。
「そんな・・・。」
ジミーは、がっくりとその場に項垂れた。
結局、王城をくまなく捜索したが、周囲で生き残っていた獣人の大人は、両手で数えられるほどしか、いなかった。




