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4 目覚め

 頭の中が真っ白になった後、心臓に集まっていた血液が、逆流を始めた。

 次の瞬間には、だんだん逆流を始めた血液が、音を立てて、エネルギーの塊に変わっていく。

 体中にエネルギーがみなぎってきた。


『ゆるせない。』

 心の中で叫んでいた。

 ナミの中の力が、内から外に向かって、広がっていく。

 とうさんの周りにいた兵士、メリーのおとうさんの周りにいた兵士。

 自分が許せないと思っている人たち、全てに向かって。

 とんでもない、エネルギーが混血児村を襲った。

 誰も彼もあっという間に、白いエネルギーの塊に、飲み込まれていく。

 ナミはそれをジッと、遠い意識の外で見ていた。

『おい、小娘。いい加減にしろ!!!』

 ナミの頭の中にに、直接呼びかけるものがいた。

『だれ?』

『俺が見えないだと!ふざけているのか。』

 よくわからないが、強い意識が強引に、ナミの中に流れ込んできた。

『お前たちを助けにきた、俺たちを、今、お前は攻撃している。』

『私たちを助ける?』

『そうだ、お前たちを助けに来たんだ。今すぐ、その力の放出を止めろ!!』

『本当に、ほんとうに、助けに来たの?』

『ああ、我がスパロウの名に誓って。』

 男から確固たる意識が、感じ取れた。

 ナミは、全身の力を抜いた。

 とたんに、立っていられないほどの疲れを感じて、倒れそうになる。

 そこに先程の男が現れて、ナミを受け止めてくれた。

『だれなの?』

 ナミはその場で、意識を手放した。


「まったく、とんでもない力の持ち主も、いたものだ。」

「レオン様、大丈夫ですか?」

 色素の薄い茶髪でがっしりした男が、きれいな銀髪の美男に声をかけた。

「ああ、とっさにシールドを張ったおかげで、なんともないが、我が隊の状況はどうだ?」

「新人が何人かやられましたが、後はレオン様のおかげで、エネルギーが届かない範囲に、退避しましたので、けがをしたものはおりません。」

「そうか。では当初の計画通り、敵を殲滅し、負傷者を救出して、城に戻るぞ。といっても、敵はほぼ、この小娘が殲滅して、しまったようだがな。」

「なにものですか?」

「おおよそだが、恐らく”始祖の血”を引いた混血児では、ないかと思う。」

「えっ、”始祖の血”って、まさか初代様ですか?」

「そのようだな。なんとも面倒なものと、関わってしまったようだが、しかたがない。とりあえず、そこのもう一人の小娘も連れて、城に戻ろう、グレイ。」

「この娘ですか。 どうやら人狼のようですが、よろしいのですか。」

「ああ、妙にこの小娘が、気にしていたからな。」

「わかりました。」

 グレイは、裸で横たわっているメリーをマントで包むと、肩に担ぎあげた。

 二人は、部下に後を頼むと、城に向け、空を高速で、飛んで行った。

 緑色に生い茂る森をはるか上空を飛びながら、北を目指す。

 そうやって、高速でしばらく飛行すると、眼下に城が見えてくる。

「こんなものを、俺の城に、連れ帰ることになるとは、出てくる時は、思わなかったぞ。」

「レオン様」

 二人が着くと、すぐに城から侍女たちが、レオンを迎えるために、広場に集まって来た。

「すぐ傷を手当出来るものを、俺の寝室に用意しろ。」

「畏まりました。」

 次に、傍にいた侍従が、娘を運ぼうと手を差し出すと、

「おい、こいつは俺が運ぶからいい。それより早く用意を急げ。」

 侍従は慌てて下がると、青い顔をして、飛んでいった。

 レオンは、グレイを振り向くと、

「その小娘は、お前にまかす。」

 そう言うと、自分の寝室に、歩いていった。


 グレイは途方にくれた。

 人狼をまかすと、言われても、一体どうしたらよいのやら。

 その辺の侍女に、任せようものなら、あっという間に血を吸われて、干からびさせること、間違いなしだ。

 仕方ない。 

 グレイは諦めて、人狼を自分の部屋に運んだ。

 その頃、レオンは自ら娘を運ぶと、自分の寝台に横たえた。

 侍女の一人が手に濡れた布を持って、けがと埃で汚れた体を拭くために、娘に近づいた。

「貸せ。」

 侍女はあまりのことに、硬直して動けない。

「聞こえなかったのか?その布を寄越せといったんだ。」

「ですが、御主人様がこんなことをなさる必要は。」

 侍女は布を手放さない。

 じれたレオンは、強引に侍女の手から布を奪うと、全ての使用人に、下がるように命令する。

「聞こえなかったのか、お前も下がれ、クロウ!」

 モノクルを掛けた灰色が特徴の、執事長は、その場を動かない。

「出来ません。」

「さ・が・れ!!!」

 レオンは、言葉に魔力を込めて、再度、命令を下した。

「畏まりました。」

 クロウは少し青ざめながら、部屋を出て行った。

 全員が下がったのを確認して、レオンは娘の傷の手当をする。

 レオン自身、なんでこんな小娘一人の為に、そんなことをしているのか、わからなかった。

 だが、この娘に、他のものの手が触れるのを、我慢できない。

 レオンは娘に、大きなけががないことを確認すると、裸のままベッドに寝かせ、その上に毛布を掛ける。 

 その後、娘の血で汚れた布をまとめて、魔力で燃やし尽くす。

 これで娘の血を、手に出来るものはいない。

 そのことに、少しホッとする。

 レオンは自分用のワインを手にして、部屋の横にあった椅子に座り、娘が目覚めるまで、そこで飲みながら待った。  

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