3 戦火の中
自宅に向かっていると、急に轟音が聞こえてきた。
何だか物凄く、いやな音だ。
ナミはメリーと顔を見合わすと、走り始めた。
だんだん音が、近づいて来る。
涙が込み上げてきて、泣きたくなってきた。
とにかく、二人で、走り続けた。
息がきれそうなくらい走っていると、前から心配した、二人の母親が、走ってきた。
二人で目を合わせてホッとする。
よく見ると、ナミのかあさんは大きなフライパンを、メリーのおかあさんは剣を持っている。
「「(お)かあさん」」
二人はほぼ同時に、それぞれの母親の胸に飛び込んだ。
そして、思いっきり、泣いた。
「「よかった。さっ、帰ろう。」」
その声が聞こえたと同時に、武装した兵士が、背後から襲ってきた。
慌てて、逃げようとしたが、あっという間に、囲まれてしまう。
二人の母親が、娘たちを背に庇って、その兵士たちに立ち向かう。
そんな母親のうしろで、二人は手を繋いで、震えていた。
次々に襲ってくる兵士たちを、ナミのかあさんはフライパンで、メリーのおかあさんは剣で、なぎ倒す。
兵士たちの方が最初、ビックリして、後ずさっていた。
そのうち、あとから来た兵士が、何かを娘たちの方に向けた。
ハッとしたナミのかあさんが、二人を抱えると、兵士たちがいる輪の外に、投げ飛ばす。
その途端、物凄い轟音が響いて、二人の母親がいた所が、あっと言う間に、剣とフライパンだけを残して、真っ黒に炭化した。
どんなに目を凝らしても、あとには、何も残っていなかった。
「「うそ。」」
「「イヤー、うそだぁー、(お)かあーーさん・・・・・。」」
二人が泣き叫んでいると、今度は、兵士が二人の傍に近づいてきた。
その時、兵士たちの後ろから、二人の父親が走ってきた。
メリーのおとうさんは、途中から狼になって、兵士たちをなぎ倒し、物凄い勢いで、ナミたちの傍にきた。
少し遅れて、ナミのとうさんも、それに続いて、走ってきた。
「大丈夫か?二人とも。」
ナミは涙でいっぱいになりながら、とうさんに抱き付く。
「とうさん、かあさんが・・かあさん・・うっ・・・。」
泣き過ぎて、声にならない。
メリーも同じような状態だ。
ナミのとうさんとメリーのおとうさんは、一瞬、悲しい顔をすると、二人で顔を見合わせ頷く。
ナミのとうさんが、二人を抱き上げると、メリーのおとうさんの背中に乗せた。
「とうさん?」
ナミは不安でいっぱいになった。
とうさんは、ナミの声を無視すると、
「行ってくれ。」
一言言うと、後ろから迫ってきていた、兵士に向かって、走っていった。
「やだぁー、とうさん。」
メリーは泣きながら、ナミの体を抱きしめて、彼女のおとうさんの背中に、ナミの体を押さえつけた。
「メリーちゃん、お願い。離して。」
「だめだよ。ナミちゃん、ダメェーーー。」
「やだぁー。はなしてぇー、とうさん。」
ナミのとうさんの背中が、涙と敵の兵士で、見えなくなる。
その時、突然メリーのおとうさんが、立ち止った。
見ると、ナミたちがいる直ぐ脇から、また敵の兵士が向かってきた。
『メリー、二人で森に逃げるんだ。』
メリーのおとうさんが、森の方に視線を向けた。
メリーは、泣きながらうなづくと、ナミの手を引いて、森に向かって走り始めた。
メリーのおとうさんは、それを確認すると、足止めのために、敵の兵士に向かっていった。
森は、二人の目の前だ。
ドッガーン ドカーン
轟音が、メリーのおとうさんがいたほうで、響いた。
でも、メリーもナミも怖くて、後ろを振り向けなかった。
真っ直ぐ前を見て、森に駆け込もうとした直後、後ろにグッと、引っ張られた。
二人して、後ろにひっくり返る。
二人はいつのまにか、ニヤついた、いやらしい顔をした、兵士に取り囲まれていた。
兵士たちは、二人を捉えると、地面に押し倒した。
乱暴に服に手をかけられる。
あまりのことに、ナミの頭の中は、真っ白になった。
心臓が物凄い音を立てる。
体全体の血が、真っ直ぐ心臓に集まってくる。
とたんに、周りのことが、はっきり感じ取れるようになった。
まず、かあさんの存在が感じられない、メリーちゃんのおかあさんも同様だ。
とうさんがさっきの場所で、血まみれになって、倒れているのが見えた。
もう息が、心臓の音が聞こえない。
冷たい感じしか、伝わってこない。
少し離れた所には、メリーのおとうさんが、お腹にぽっかりと大穴が空いた状態で、横たわっていた。
頭の中の色が、あせていく。
最後に隣にいた、メリーの悲鳴が聞こえた。
ナミの頭の中は、爆発したように真っ白になった。




