21 かくされた真実
ナミは、食事を終え、三人で王城に戻った。
途中、ナミとメリーは、ジミーを無視すると、二人で雑貨をみたり、露店で買い物を楽しんだりしたので、結局帰りは、夕食の時間帯になっていた。
ジミーは、ナミとメリーを王城まで送った後、夜警のため、王城の守備隊がいる部屋に直行した。
二人は、王城で合同会議を終えたレオンたちに合流すると、王城の食堂で夕食を摂り、その日はそこで別れる。
「じゃ、明日ね。ナミちゃん。」
「おやすみ。メリーちゃん。」
ナミは、レオンと一緒に、寝室に向かう。
レオンはナミを気遣って、ゆっくり歩いてくれる。
赤の国では、そんなことはないので、それがけっこう嬉しかった。
いつの間にか、顔がにやけていたらしく、レオンに不審顔で見られた。
「何がそんなに嬉しいんだ?」
「えっ、別に何でもないよ。」
そういいながら、ナミは寝室に着くまで、にやけきっていた。
寝室に着くと、レオンはさりげなくナミを背後に庇うと、部屋の中に入り、周囲を確認する。
それが終わると、再度、通路を確認した後に、ドアを閉めた。
『今みたいに背後に庇われると、騎士に守られるお姫様みたいで、ときめくなぁ。』
ナミは斜め上のことを考えていた。
レオンはナミに、先にシャワーを浴びるように言うと、剣をすぐ傍に置いて、ソファーに座り込んだ。
いつも以上の警戒に、ナミはレオンに問いかけていた。
「どうしたのレオン。何かあったの?」
先程、人間の国の兵士が襲ってきて、まだ混血児村に残っていた赤の国と青の国の警備隊が襲われた、という連絡が入ったんだ。
さすがに、ナミの顔も蒼褪めた。
「本当なのレオン。それで被害は?」
「かなりの被害が出た。両国の兵士とも全滅だ。なんとか虫の息で、知らせに戻った兵士も、報告を上げると間もなく、亡くなったそうだ。」
「そ・・・そんな。」
予定では、もう少しゆっくりした時間に、出発する予定だったが、夜が明け次第、ここを発って、混血児村に向かう。
そう言って、レオンは心配そうにナミを見た。
ナミはレオンの不安そうな顔に笑いかけると、
「大丈夫だよ、レオン。ここ何日か、レオンとグレイにいろいろ教わったから、心配しないで。」
レオンにはそれが、逆にムチャをしそうで、心配なんだといわれた。
「ここで悩んでいても、仕方ない。」
「とにかく、早くシャワーを浴びて寝ろ。いや、その前に、瞬間移動で自分の剣を取り寄せろ。」
レオンはナミに、瞬間移動で、剣を取り寄せるように言う。
「でも、レオン。いいの?」
「問題ない。剣はすでに打ち直されて、俺の部屋にある。」
ナミは、レオンに言われるまま、父の残した剣を思い描いた。
まもなく、見たこともない剣が現れる。
失敗かと思っていると、レオンに剣を渡された。
「一応、シャワーを浴びる間も、手に取れる所に置いておけ。念のためだ。」
レオンはナミを浴室に武器とともに追いやると、この部屋に、すぐに結界を張った。
これで、ドアを破られて、攻め込まれることはないだろう。
その日は交代で、シャワーを浴びると、早々と眠りについた。
翌朝、ナミたちは、朝日が昇ると、すぐに青の国を後にした。
見送りに来た、隊長さんには、会えなかった、メリーに伝言を残した。
今日中に伝えてくれると約束してくれた。
「いくぞ。」
レオンの号令が上がり、隊員はみんな浮き上がると、南を目指して、飛行し始めた。
行きとは違って、風が逆向きのせいか、けっこうきつい。
レオンがナミの様子に気がついて、念話で指示を出す。
『ナミ、俺の真後ろを飛べ。』
『でも』
『混血児村は、まだ先だ。こんな荒野でヘバられたら困る。』
ナミはレオンの言葉に素直に頷くと、レオンの真後ろについた。
風の抵抗が少ない分、飛行しやすい。
ナミはホッとしながら飛行を続けた。
見ると、他の吸血鬼も、時々隊列の外と内を入れ替えて、疲れを軽減しているようだ。
森を抜け荒野に入ると、風がかなり強くなってくる。
来た時はわりと、追い風だったので、今のように真正面から吹いていなかった分、楽だった。
風の向き一つで、こんなに飛ぶのが、大変になるとは思わなかった。
油断すると、下に落ちそうだ。
ナミは気を引き締めると、しっかりと前を見て、レオンを見失わないように、飛び続けた。
グレイがナミを見て、レオンに念話する。
『よろしいのですか?』
『これくらいの状況に、ついてこれないようなら、城に戻す。』
『わかりました。』
今の状況は、ベテランでも辛い。
でもこれから戦場に行くのだ。
庇われなければ、ならないようなら、生き残れないだろう。
グレイは、もう何もいわなかった。
しばらくして、荒野を抜けると、強く吹いてくる風が、だんだん暖かくなってくる。
ナミにとっては、これでだいぶ楽に飛べるようになった。
寒さが和らいだ分、エネルギーの消耗が少なくてすむ。
レオンは荒野を抜け、混血児村近くの森に入ると、隊に地上に降りるように合図した。
全員、地上に降りる。
「グレイ、別働隊を指揮しろ。」
グレイは無言で頷いた。
「精鋭を何人か連れて、先に偵察に行け。あとのものは、このまま前進だ。」
グレイはレオンの指示で、精鋭4人を連れて、先に混血児村に向かった。
レオン、ナミとその残りの兵士がその後から、ゆっくりした速度で、前進を開始した。
『ナミ、いつでも、防御壁を展開できるようにしておけ。』
ナミはレオンの隣で頷いた。
グレイは森の中を低空飛行して、混血児村近くまでいくと、人間たちの様子を観察した。
『レオン様、村近くに着きました。人間の数一個中隊クラスです。でも様子が少し変です。』
『何が変なんだ?』
『何かを探しているようです。』
『それが何かわかるか?』
『さすがにそこまでは・・・。誰かを捕まえて、尋問すれば別でしょうが、どうしますか?』
レオンはしばらく思案した後、
『俺たちがそっちに合流するまで、そのまま偵察続行だ。何かいやな感じがする。絶対に俺達が着く前に、突っ込むなよ。』
『わかりました。』
ナミは急に黙り込んだレオンを隣で黙って見ていた。
しばらくすると、ナミにレオンが問いかけた。
「ナミ。お前、今混血児村に何か感じるか?」
急に自分に話がふられ、目を白黒させながら、ナミはレオンを見る。
すぐに混血児村に意識を向けると、ハッとした。
レオンはナミが何かを感じ取ったのを見て、目線で何を感じたのかを問いかけてきた。
「うまく説明できないんだけど、村の山側に何かのエネルギーを感じるの。」
「そこには何があるんだ、ナミ。」
「えっ、そこ。」
ナミは考え込んだ。
村の山側に、そんなエネルギーを感じるような施設はない。
自分の間違いだろうか?
いや、もう一度意識を向けるが、かなりのエネルギーを、山側の一点から感じる。
なにかあるのかと、問われると、そんな施設はない。
あるものといえば、
「昔の遺跡があったけど・・。」
「遺跡だと!」
「うん、小さいときに村のみんなとよく遊んだんだ。大人たちは、崩れるから駄目だっていってたけど、子供が通れるくらいの小さな穴があって、中に入ると、大きな部屋が地下に広がってる。」
「地下に他に何かないか?」
「ごめん、さすがに、小さいときに見ただけだから、憶えてない。」
レオンは、歩きながら黙り込んだ。
しばらくすると、隊自体の前進を止めた。
「ナミ、ここにいる混血児村の人間に気づかれずに、その遺跡に行く道はあるか?」
「それなら、あるけど。」
「じゃ、そこに案内してくれ。」
ナミは質問したかったが、レオンの様子に、何も言わずに、先頭になると、そこに隊の吸血鬼を案内した。
レオンは歩きながら、グレイに念話する。
『グレイ、そこにいる人間たちが捜しているものが、何かこれから確認してくる。』
『レオン様、心当たりがあるんですか?』
『ナミの話では、この混血児村には、遺跡があるようだ。』
『まさか!!!』
『当たって欲しくないが、そのまさか、かも知れん。なので確認してくる。』
『わかりました。こっちの人間たちに、何かありましたら、連絡します。』
『そうしてくれ、俺達はこれから、山側に移動する。』
『了解しました。』
辺りは、さっきまだ明るかったが、急に天気が悪くなり、雨がポツポツと降り出した。
どんよりとした空気が辺りに、立ち込めている。
グレイは黙って人間たちの行動を観察し続けた。




