表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/56

20 親善試合

 三人が試合会場に着くと、前日にレオンたちを案内した、隊長さんが一番眺めが良い席で、待っていてくれた。

 レオンが隊長に気がついて、そこに座る。

 ナミとメリーもそのすぐ傍に座った。

「おはようございます。」

 隊長がレオンに挨拶する。

「ああ、おはよう。相変わらず青の国は、朝が早いな。」

「これは習性みたいなものですから。」

 隊長がメリーとナミに気がつく。

「これは、伯爵令嬢。お久しぶりです。」

 隊長の挨拶に、ナミが度肝を抜かれていた。

「伯爵令嬢!!」

 思わずメリーを振り返ってみた。

「あれ、ナミちゃんに言ってなかったっけ?」

 メリーは全く気にしていなかった。

「聞いてません。」

 ナミは少し拗ねた。

「私も普段全く意識してないし、自分でもたまに忘れるくらいだから、気にしないで。」

『そういうものなの?』

 ナミにはよくわからなかった。

「始まりますよ。」

 隊長がレオンの傍に座った二人に、声をかけたと同時に、赤の国と青の国の兵士が、闘技場に一人ずつ、剣を持って現れた。

 両脇には、審判役の兵士が、それぞれの国から一人ずつ、赤と青の旗を持って立っていた。

 試合開始の合図があり、剣を持った二人が中央で、戦い始める。

 青の国の兵士は力強く重い剣を、赤の国の兵士に打ち付ける。

 一方、それを青の国の兵士が、魔法障壁の盾と素早い剣の打ち込みで迎え撃つ。

 数十分にも及ぶ攻防の末、青の国の兵士が、赤の国の兵士の魔法障壁を粉砕して、重い剣を相手に打ち付け、一戦目は青の国が勝利した。

 二戦目、三戦目も同じような戦いの末、勝率は半々で五戦目を迎えた。

 最終試合、ようやくグレイとジミーの出番となった。

 ジミーは他の青の国の兵士と同じく、重い剣を携えて現れた。

 一方、グレイは、今までの赤の国のどの兵士よりも、薄くて軽い剣を持って、試合会場に立っている。

 その姿を見て、レオンが思わず目を瞠る。

 ナミがレオンの顔色を見て、念話をした。

『どうかしたの、レオン。』

『いや、あんな本気のグレイを見るのは久しぶりなんで、ちょっと驚いているだけだ。』

『あれが?』

 ナミにはグレイの何が本気なのか、まったくわからなかった。

 何回か練習相手になって貰っているが、それとどこが違うのだろうか。

 レオンは不敵に笑うと、

『よく見ておけ。良いものが見れるぞ。』

「どうかしたの、ナミ。」

 ナミが急に黙り込んだので、メリーが心配して、声をかけてきた。

「今、レオンが念話で、今から始まる試合をよく見ておけって。」

「今から始まる試合?」

 メリーはジミーとグレイを見た。

 ナミもレオンの言葉に従って、試合会場に神経を集中する。

 二人の前にいた隊長も、この会話を聞いて、これから始まる試合に、目をこらす。

 審判の合図と同時に、ジミーが渾身の力で、剣をグレイに叩きつける。

 グレイは、ジミーの剣を軽くかわすと、薄くて軽い剣をジミーが持っている剣の切っ先に向けると、その途端、信じられないことが起きた。

 グレイの剣が、固くて重いジミーの剣を、剣先から手元まできれいに両断し、なおかつジミーの手元から肩まで、薄皮一枚分、きれいに切り裂いたのだ。

 グレイは振り抜きざま、また元の鞘に剣を戻す。

 周囲は、一瞬の出来事に、シーンと静まり返る。

「グレイ様、すごい。」

 ナミがメリーを見ると、彼女の目がハートになっていた。

『そういえば、メリーちゃん。昔から剣が強い人が、大好きだったっけ。』

 だいぶ遅れて、赤い旗が二本上がった。

 今回は三勝二敗で赤の国に、軍配が上がった。

「相変わらず、信じられん、剣技だな。」

 レオンが独り言をつぶやく。

「あんなことが、出来るんですか?」

 隊長が信じられないものを見て、唖然としていた。

「相手が確実に自分に向かって来ると、わかっているなら可能だな。ただし、俺がやると薄皮一枚じゃなく、そのままきれいに真っ二つにしてしまって、あんなふうな芸当は、絶対にできない。」

 レオンは肩をすくめると、そう答えた。

「それにしても、すごい。」

 隊長はしきりに感心している。

「さて、隊長。食事後に、合同作戦会議だ。」

「いつもだったら、この後、午後にも、もう何試合かやるんですがね。」

「諦めろ。隊長クラスが本気でやると、午後が全部潰れて、会議の時間が無くなるぞ。」

「はぁー、そうなんですが、全力でやりあえる機会なんてそうないんで、やりたかったんですがね。」

 隊長は盛大に溜息をついて、レオンと食堂に戻っていった。

 ナミとメリーは、外で食事をするために、レオンと別れ、王城の正面に向かった。

 ゆっくり、メリーと歩きながら話していると、後ろから誰かが走ってきた。

「待って、メリー。」

 メリーが呼びかけられたので、後を振り返った。

 後ろからジミーが、満身創痍で二人を追いかけてきた。

「ジミー、大丈夫なの?」

 ジミーは、情けなさそうな顔で、メリーを見た。

「ごめん。せっかく応援してくれたのに、結局負けちゃって。」

 メリーが、きまり悪そうに、ジミーの視線を避けた。

『そういえば、メリーちゃん。最後の試合は、グレイばかり見ていて、ジミーの応援はしていなかったような。』

「あのね、今日は私とナミちゃん二人で行くから大丈夫だよ。」

 メリーが後ろめたさから、ジミーに休憩するように言うが、ジミーは、聞きいれない。

「心配してくれてありがとう、メリー。でも向こうの隊長さんに、かなり手加減しもらったから、大丈夫だよ。ほら、傷口も、もう塞がっているし。」

 ジミーがさっきグレイにつけられた、傷をメリーに見せる。

 二人が傷口を見ると、確かに今はピンク色になって、大分傷が治っているようだ。

 さすが人狼だ。

 治りが早い。

 ジミーはメリーに傷口を見せると、二人の後に続いて、歩き始めた。

 最初何度か、ジミーは戻ったほうがいいのではないかと、メリーは説得したのだが、結局諦めなかったので、最終的に二人はジミーと一緒に食事することにした。

 メリーはジミーを気にしながらも、さっきの試合について、ナミに話しかけた。

「ナミちゃんは、さっきの試合見てて、どう思った?」

 メリーに急に話を振られて、ナミは困惑しながらも、正直に感想をいった。

「私的には、どの試合もいろいろ勉強になって、よかったけど、最後の試合が一番参考になったかな。いつもレオンが練習相手出来ない時、グレイに見てもらうんだけど、あんな繊細な剣裁きをするとは、思わなかったよ。」

 メリーがうらやましそうな顔で相槌をうつ。

「いいな、ナミちゃん。グレイ様に剣の相手をしてもらえるなんて。私もグレイ様に指南されたい。」

 ナミがメリーを見ると、メリーの目がハートになっている。

 後ろからジミーが会話に入って来た。

「確かに、ナミがうらやましいよ。俺も出来るなら、あんな繊細な剣を使う人にたまには、指南されてみたい。」

 メリーがジミーを振り返った。

「ジミー、わかってるじゃない。見直したわ。」

 メリーがジミーを褒める。

 ジミーが喜んでメリーに同意して、さらにグレイの剣技を語った。

『ジミー、あんたやたらグレイを褒めてるけど、なんでメリーちゃんのハートマークの目が見えないの。どう見たって、メリーちゃん。グレイの剣技に魅了されてるよ。このままだと、グレイに横から、かっさらわれるかも知れないのに、どうして浮かれていられるんだ?』

 ナミはグレイに魅了されているハートマークの目をしたメリーの話とメリーに喜ばれて有頂天でグレイを褒めるジミーの話を、レストランに着くまで、延々と聞かされ続けた。

 レストラに着いた時には、違う意味で、ナミのお腹はいっぱいになっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ