2 学校で
私たちは、かあさんの作った料理を食べ終えると、メリーの家に寄ってから、学校に向かった。
ナミが、歩いていると、ふとメリーとバチッと目が合った。
「私はナミちゃんが、うらやましいよ。」
おもむろにメリーが、ナミに話しかけた。
「はっ、なんでそんなこと言うの、メリーちゃん。」
ナミは、メリーに、急に、思っていなかったことを言われて、うろたえた。
「私から言わせれば、メリーちゃんの方がよっぽど、うらやましいけど。」
「どこが?」
「えっと、メリーちゃんのきれいな顔とか、その素敵な金色の髪、カッコイイお父さん、美人のお母さんとか、いろいろ。」
「はぁ、わかってないよ、ナミちゃん。確かにお母さんは、きれいかもしれないけど、食事ちょーまずいし。お父さんも外見はカッコイイけど、娘の私に、うるさく言いすぎだし。 私はナミちゃん家みたいな、料理上手なお母さんと、あんまり干渉しない、お父さんがよかった。」
「えっと、とうさんが、私にあまり干渉しないのは、メリーちゃんみたいに、きれいじゃないからだと思うけど。」
「ちがう。ナミちゃんのおとうさんは、ナミちゃんを、ちゃんと信頼してるからだよ。」
いや、メリーちゃん見たいにきれいだったら、うちのとうさんも、きっと、メリーちゃんのおとうさんくらい心配すると思うけど。メリーちゃんの様子だと、いってもわからなそうだし。
ナミがそんなことを考えて、歩いていると、後ろから、うちの二軒さきに住んでいる、腕白ジミーの声が聞こえてきた。
「おーい。ナミ。」
ジミーは後ろから走って来ると、いきなりナミの首に手をかけ、メリーから引き離した。
「ちょっと、何するのよ。」
ナミはちょっと、憤慨して、腕を強引に離させた。
「おい、あの噂は本当か?」
ジミーはイライラしながら、ナミに話しかけた。
「うわさって、なんの?」
ナミはなんのことを言われているのか、さっぱりわからず、キョトンとした表情でジミーを見る。
「メリーと、もふもふしたのかってことだよ。」
ジミーは、ジミーで察しの悪いナミにイライラしながら、答えを促す。
「えっ、なんで知ってるの?」
「したのか、メリーを、お前。女だろ、なんでだ!」
「なんでって、だってメリーちゃんが、犬になれるとか、知らなかったんだもん。」
「はっ、意味わかって、聞いてるのか?俺はなんで、メリーに求婚したのかって、聞いてんだ。」
「はっ、きゅうこん?」
「そうだ、求婚だ。」
「なんのきゅうこん?ヒヤシンス?」
「それは花だろ。ばか。けっこんを申し込む、求婚だよ。」
「えっ、もふもふって、そんな意味があったの。」
「知らずにしたのか、ナミ。」
ジミーはあまりのことに、頭を抱えた。
「信じられないくらい、無知。 何十年、人狼と一緒の村に住んでんだ。」
あまりの無知さに、ジミーは途方にくれながら、ナミを眺める。
「えっと、十五年くらいかな?」
「まじめに答えるな!」
ジミーは思わず頭を抱えた。
「ねえ、ジミー。」
いつまでたっても、二人で話しているのに苛立って、メリーは二人の会話に割って入った。
「あっ、はい。」
メリーの声に、ジミーは直立不動になると、真っ赤な顔で答える。
「なんで、そこで二人で、ひそひそ話してるの?」
メリーは、心底不思議そうに、首を傾げながら、尋ねる。
「いや、これは。 あっ、俺もう、砦にいかなきゃならないから、また。」
そう言うと、ジミーは砦に向かって、全速力で走っていった。
なんて解かりやすい、やつなんだ。
ジミーのバレバレの態度に、ナミは逆に呆気に取られた。
「どうしたのかしら、ジミー。」
メリーは、ジミーの突然の全速力の走りに、呆気にとられて、その姿をボゥーと見ていた。
あっ、ここにまったく、わかっていない人がいるか。
かわいそうに。
メリーちゃん、以外に鈍いから、ちゃんと言わないと、一生そのままだよ、ジミー。
ナミはひそかに、ジミーを憐れんだ。
「まっ、遅刻すると不味いから、学校に行こう、メリーちゃん。」
「そうだね。」
ナミたち二人は、真っ直ぐ学校に向かった。
ほどなくして、学校の門が見えてくる。
門の所には、どう見ても、ヤギのおじさんが立っていた。
毎朝思うけど、前世でいうヤギだよな、ここの先生。
「ナミちゃん!!!」
ナミは、メリーに、肘で小突かれた。
先生がナミを睨んでいる。
「お・おはようございます。ヤギじゃなくて、先生。」
「ナミさん、夜更かしですか、気をつけなさい。」
「はい、先生。」
ナミは背筋をのばして、返事をすると、慌ててメリーと教室に向かった。
教室は、木造の建物の戸をくぐって、すぐの階段をのぼり、突き当りの部屋だ。
メリーと短い会話を楽しみながら、ナミたちは、二人の教室に向かった。。
教室に行くと、いつも通り、混血児でいっぱいだった。
一番多いのが獣人で、次が魔獣と人が混じった吸血鬼とかで、ナミのような人間は、この村では珍しい。
「おはよう、メリーちゃん。」
メリーは、あっという間に、今まで仲間たちで話していた、獣人の男の子に囲まれた。
相変わらずモテモテだ。それもそうか。メリーは金髪碧眼の超絶美少女だ。
加えて、獣人のせいか、メリーの母親を彷彿とさせる巨乳に、腰はキュッと細く、逆にお尻は、大きくて、プリっとしている。
ナミがそんなことを考えていると、教室の戸が、横にズズッとスライドされた。
そして、教室にフクロウの顔をした先生が入ってきた。
「皆さん、おはようございます。」
フクロウ先生は、教室に入ると、教団の前に立つと、大きな声で話しだした。
「今日は、来週の卒業試験前の小テストを行います。」
「えぇー。」
教室にいた全員から、激しい抗議の声が上がった。
「静かに。落ちても、いいんですか?」
その一言に、教室はシーンと静まり返った。
すぐに、フクロウ先生から紙が配られ、小テストが始る。
「では始めます。」
フクロウ先生が宣言すると、教室のみんなは一斉に、筆記具を持って、問題にとりかかった。
試験が始まって、少しすると、なんでか急に、甲高い金の音が鳴り響いた。
この音って。なに???
ヤギ先生が教室に駆けこんでくる。
「皆さん、落ち着いて、荷物をまとめて下さい。まだ危険は、ありませんが、皆さん、同じ方向の人達は、まとまって、急いで家に帰るように。分かりましたか。寄り道せずに、とにかく、急いで自宅に帰りなさい。」
みんなはざわざわしながら、支度すると、帰り始める。
ナミは、カバンを持つと、メリーを振り向く。
メリーもうなずいて、ナミに倣って、と、カバンを持つと、二人は急いで、学校をでた。
「一体何だと思う、メリーちゃん。」
メリーは、不安を紛らわせようと、ナミに話かけた。
「うーん、良くわかんないけど、取り敢えず、急いで帰ろう、ナミちゃん。」
ナミも、いつにない様子に、メリーちゅん動揺、不安で胸がいっぱいになった。
ナミたちは、速足で小道を進んで、自宅に向かった。
小道の傍では、いつもなら色々な虫たちでうるさいくらいなのに、この時はなんの虫の音もしなかった。




