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14 街でお買い物

 食事が終わると、ブルが声をかけてくれた。

 ナミはブルと朝食の後片付けをする。

 城の兵士たちが飲んだグラスを運び、自動グラス洗い機に入れる。

 セットすると、クリスタルが輝いて、水と光がくるくる回ってきれいになる。

『うーん、ある意味、前世の自動食器洗い機の魔法版かな。でも見てると、こっちの方が青い光がくるくる輝いて、イルミネーションみたいで、きれい。』

「ナミ、いつまでも見てないで、今度はテーブルを拭いてちょうだい。」

 ブルに、テーブルを拭く雑巾を渡される。

 ナミはそれで、左側からテーブルを順番にブルと一緒に拭いていった。

 数分で片付けが終わる。

「じゃ、行こうか。」

 ブルはヒラヒラしたエプロンを外すと、コートを上に羽織った。

「ナミ、その格好だと、飛行した時、寒いわよ。何か着てきなさい。」

「えっと、今はこれしか持ってません。」

「そうだったわね。」

 ブルは溜息を吐くと、城門にむかって歩き出した。

「街についたら、すぐにコートを買いましょう。」

 ブルはそう言うと、城門を出て、フワッと浮くと、ナミを振り向いた。

 ナミも慌てて、ブルと同じように、フワッと浮き上がる。

 ブルはナミが浮き上がったのを確認すると、飛行し始めた。

 ナミもすぐに、ブルの後に続いて飛んだ。

 ブルは、結構な速さで街を目指した。


 20分後。


 ガチガチッ ガチガチッ

 ガチガチッ ガチガチッ


 歯を鳴らしながら飛ぶナミと、それを気づかわしげに見ていたブルが、街に着いた。

「どう、初めての街は?」

「かなり寒いです。」

 ブルは愛嬌のある笑いを浮かべると、

「そうね。急いでコートが売っている店に行きましょう。」

 ブルは手短にある洋装店に入った。

「いらっしゃいませ。」

 可愛い顔をした女の子が、声をかけてくれた。

「何がお入り用ですか?」

 ブルは早速コートを頼んでくれた。

「これなんか、いかがでしょう。」

 店員が裏地がフカフカして、暖かそうなコートを出してくれた。

「取り敢えずこれと、もっと防寒に優れたものもお願い。」

「では、こちらは、いかがでしょうか。この間来た、青の国の商人から仕入れたものです。」

 さっきより、もっと裏地もふかふかして暖かく、防水加工もしてあるものだった。

「ナミ、まず着てみなさい。」

 ブルに言われ、ナミはまず、最初のフカフカ裏地を着てみた。

 丈もちょうどで、動きやすい。

「大丈夫見たいね。じゃ、こっちの防水で極寒使用のものも試してみて。」

 ナミは言われるまま、防水で極寒使用のものも着てみた。

 これはかなり本格的で暖かいし、動きが、さっきのものより動きやすく出来ている。

「両方、大丈夫なようね。」

 ナミは大きく頷いた。

「じゃ、フカフカ裏地は今すぐ着るから、こっちの極寒使用だけ、包んでちょうだい。」

「ありがとうございます。」

 可愛い顔をした女の子は、あっという間に梱包すると、代金を提示した。

 ブルは、懐から銅貨を五枚と銀貨を二枚出すと、少女に渡した。

「ありがとうございました。」

 ナミは、フカフカ裏地のコートを着ると、店を出た。

 手には、さっきの極寒使用のコートを持っている。

「あのー、ブルさん。さっきのお金は?」

「ああ、気しなくて大丈夫よ。代金はレオン様から必要経費で落とすように、言われているから問題ないわ。」

 ナミはホッと胸を撫で下ろした。

 この国のお金は、銅貨1枚が前世で言う千円で、銀貨1枚が一万円、金貨はなんと、一枚で十万円の価値がある。

 とは言え、働いていない、今のナミは、まったくお金を持って、いなかった。

 ブルはナミを連れて、今度は、街の中心に向かった。

 そこには、新鮮な果物が、所狭しと並べられた店がたくさんあった。

 その中をブルは、どんどん奥に歩いていく。

 どこまで行くんだろうと思っていると、一軒の店の前でブルが止まった。

「バークシャー、今日の紫炎ザクロはどう。」

「よう、ブル。久しぶりだな。クロウはどうした?」

 ごつい体型で、顔は色白の豚面おじさんが、そこにいた。

「なんだ、そのチビッ子は?」

 バークシャーは、ナミを眺めまわす。

「昔、私がお世話になった人の娘さんなの。」

 ブルはバークシャーに、ナミを紹介した。

「ナミ、この人は私の母のお兄さんで、バークシャー。この辺では、一番新鮮でおいしい紫炎ザクロ農園の農場主なの。」

「ナミと言います。宜しくお願いします。」

 ナミは、ちょこんと頭を下げた。

「おう、こっちこそ、よろしく頼む。」

 バークシャーは、ナミの頭をワシャワシャ撫でると、にこりとした。

 ブルは挨拶が済むと、手短にあった紫炎ザクロの実を手に取ると、一つ一つ吟味して、大きな麻の袋に、ポイポイと入れていく。

 袋が半分になった所で、ブルはナミを振り向いた。

 手に持った紫炎ザクロをナミに見せると、

「どっちが美味しいと思う?」

 いきなり質問してきた。

 ナミはそれを手に取って見た。

 正直わからない。

 ナミが迷っているのを見てとると、ブルはまた違う紫炎ザクロの実をナミに見せた。

「こっちでは、どっち。」

 ナミは迷わず、輝いて見える紫炎ザクロの実を指差した。

「こっち。」

 目を見開きながらも、また違う紫炎ザクロの実を、ナミに見せ、同じ質問をした。

 ナミは7回とも輝いて見える、紫炎ザクロの実を指差した。

「合格よ、ナミ。すごいわ。」

 ブルはとてもうれしそうに言うと、ナミに麻の袋を手渡した。

「ナミ、この棚に積まれている紫炎ザクロの実を、今みたい選んで、この麻の袋に入れてちょうだい。」

 ナミは大きく頷くと、ブルに言われたように、輝いて見える紫炎ザクロの実を選ぶと、ひょいひょいと袋に入れた。

 バークシャーが眼を剥いている。

「こりゃたまらんな。二人に高級な紫炎ザクロの実を、全て買い占められそうだ。」


 30分後。

 大きな三つの麻袋いっぱいの紫炎ザクロの実を選び出したブルとナミは、代金を払って店を後にした。

「助かったわ、ナミ。大分時間が節約できた。」

 ブルは二つの麻袋を軽々と持つと、先に立って歩く。

『なんであんなに、軽そうに持てるの。』

 ナミが後ろから麻袋を引きずるようにして、ブルについて歩く。

 後ろから、ブルを見ていると、麻袋の周りから、この間教えてもらった、魔法障壁と同じ、エネルギーの流れが感じ取れた。

『えっ、なんで? もしかして、同じようにすれば、麻袋が軽くなるの。』

 ナミは見よう見まねで、ブルのように、麻袋の周囲に、自分エネルギーを纏わせる。

『あれ、軽くならない。うーん、なんで。確か魔法障壁の時は、硬度をダイヤモンドにして、さらに軽さを考慮して、材質をプラスチックにしたんだっけ。じゃ、今度は、えっと。前世で言う、そう、重力を処断すれば、荷物は軽くなるはず。』

 ナミは重力処断をイメージして、エネルギーを麻袋の周りに纏わせる。

 途端に、麻袋の重みがスッとなくなった。

『やった!! これなら、いくらでも持てる。』

 ナミは軽くなった麻袋を手に持つと、ブルの後に続いて、市場を抜けた。

 最初は重そうに持っているナミを見て、ブルは市場を出たら、筋力強化の魔法を教えてあげなければと、思っていた。

 だが、次に、後ろを振り向くと、自分でどうにかしたらしく、今は荷物を軽々と持っている。

 ブルはそれに満足して、市場を抜けると、街の広場に向かった。

 広場にはいろいろな出店が並んでいた。

 ブルはナミを振り向くと、

「どれが食べたい?」

 ナミはビックリしたが、あたりのおいしそうな匂いを嗅いで、思わず前世の”焼き鳥”みたいな屋台を指差していた。

「あら、ナミはヒリヒリ鳥の焼き物がいいのね。」

「ヒリヒリ鳥?」

 ブルは、ナミに麻袋を渡すと、屋台に行って、二つ買ってくれた。

 どきどきしながら、串に刺さった鶏肉を食べる。

 味は、前世と変わらない鶏肉だったが、食べた後に口の中が辛さで、ヒリヒリする。

 なるほど、これがヒリヒリ鳥か。

 見ると、ブルも隣で食べていた。

「えっ、ブルさんも食べるの?」

「ええ、なんで?」

 ブルが怪訝そうな顔で、ナミを見る。

「えっと、ブルさんは魔法が使えるし、城にいるんだから、吸血鬼ですよね?」

 ブルがびっくりした顔でナミを見た。

「ナミ、確かに私の曾おじい様は吸血鬼だったんで、魔法を多少使えるけど、私はほぼ獣人よ。

 だから、紫炎ザクロの実ではなく、毎日普通の食事を食べてるわ。」

「ええ、じゃ、なんで空飛べるんですか?」

「それは、私がクロウと伴侶のきずなを結んでいるからよ。」

「伴侶のきずな?」

「ええ、獣人も吸血鬼も魔族も、伴侶のきずなを結べば、己の能力に応じてだけれど、相手の能力を使うことが出来るのよ。

 だから、私にも飛行くらいなら、可能なの。逆に、クロウも私のように早く走る能力が使えるわ。

 だけど、クロウは普通の食事をとることは出来ないし、匂いで敵を追うことも出来ない。」

「えっ、じゃ、吸血鬼でも伴侶のきずなで、食事をとるものもいるんですか?」

「理論上は可能なはずなんだけど、今までは、食事をとる吸血鬼を、私は見たことがなかったわね。」

「ふーん、そういうものなんだ。これおいしいのに。」

 ナミは串に刺さった最後の一切れを指して呟くと、それを食べた。

『ヒリヒリするけど、おいしい。あれ、今までって・・・。』

 ナミはブルの顔を見た。

「ナミは吸血鬼でしょ。なのに、おいしそうに食べてるじゃない。」

「レオンにもそれ言われました。でも紫炎ザクロのワインより、このヒリヒリ鳥の方がおいしいです。」

 食べて串だけになったものを見て、ナミが呟いた。

 ブルはニッコリ笑うと、

「もう一本買ってこようか?」

 ナミは喜んで頷いた。


 ナミとブルは広場で、ヒリヒリ鳥を堪能すると、麻袋を担いで浮き上がると、今朝と同じように飛行して、城に戻った。


 城では、ナミがいないせいか、広場の兵士が大きな声で噂話をしていた。

「おい、見たか昨日広場で、将軍の娘を。」

「将軍の娘?俺は孫って聞いたけど。」

「確かに孫かもしれん。朝、食堂で会ったが、普通に食事をしていたし、ありゃ孫だな。だが昨日は訓練で、将軍の魔法障壁を粉砕していたぞ。すごいのなんのって。」

「本当か?そりゃ。俺もみたかったなぁ。」

「おい、本人のお帰りみたいだぜ。」

 兵士がナミを指さして、仲間の兵士に教えている。

「あれがそうか?」

 兵士はナミをまじまじと見ている。


 ナミはその一部始終を聞いていた。

 吸血鬼の力に目覚めてから、聴力も異様に良くなった。

 遠くの囁きも良く聞こえる。


「将軍の孫ね。そんなに幼く見えるのかな。」

 ナミがぼそりと呟いた。

「ナミが幼いというより、レオン様が年上過ぎるからでしょ。」

 ブルの言葉にナミはびっくりした。

「えっ、レオンって、いったい、いくつなの?」

「さあ、くわしくはわからないけど、確かクロウより、かなりうえだったと聞いたことがあるわ。」

「えっ、ウソー」

『クロウより上って、レオンの年って?』

「力の強い吸血鬼になればなるほど、自分の全盛期の年齢を保っているものなのよ。

 だから力の強い吸血鬼を姿だけで年齢判断しようとしても無駄よ。」

「そうなんですか、知りませんでした。」

「まっ、気になるんなら、本人に直接聞いて見なさい。」

 ブルはそこで持っていた麻袋を担ぎ直すと、食堂にむかった。

 ナミもブルの後に続く。

 ブルは、食堂に着くと、麻袋を奥の樽の傍に置く。

「さあ、ナミ。大仕事よ。」

 ブルに指示され、ナミは買ってきた紫炎ザクロの実を絞る。

「あのー、ブルさん。なんでこの食堂で働いているの、ブルさん一人なんですか?」

「まあ、いろいろあるけど、一番の理由はクロウが嫉妬するからかな。」

 ブルからのあまりにも意外な返事に、ナミは呆気にとられた。

「シット?」

「そう、嫉妬。この赤の国で主食であるワインを作っているのは基本、人獣なのよ。だから雇うなら、人獣のそれも男になるから、それでいい顔しないのよ。」

「なんで、吸血鬼の彼らは、自分達で作らないんですか?」

「作れなくはないと思うけど、美味しくならないらしいの。」

「えっ、でもこうやって絞るだけですよね。」

 ナミは紫炎ザクロを絞りながら、ブルに問いかけた。

「確かに絞るだけだけど、おいしい実を絞らないと、おいしくならないわ。

 吸血鬼は材料の吟味が、上手く出来ないみたいね。

 そういえば、ナミは今回の買い出しの時、無造作に、おいしい紫炎ザクロを選び出していたけど、どうやって選んでいたの?」

「えっと、最初見せられたものは、わからなかったんですが、その後のものは全部、紫のエネルギーが輝いているほうを選びました。」

「紫のエネルギー?」

「はい、魔法障壁の時見たいに、紫のエネルギーが光っていたんで、そっちを選んだだけです。ブルさんは違うんですか?」

「私は人獣だから、紫炎ザクロの甘い血の匂いが濃い方を選んだだけよ。」

「えっ、血の匂い!!!」

 ナミは思わず、自分が絞っている紫炎ザクロを見た。

 ブルはおかしそうに笑うと、

「大丈夫よ。本当の血の匂いに近いわけで、血ではないから。でも確かに不思議ね。くだものなのに、血の匂いなんて。」

 ブルさんはそう言うと、その後もモクモクと紫炎ザクロを絞り続けた。

 ナミもそれに倣う。

 二人で、6樽作ると、ブルがそれを端から攪拌機で撹拌して、蓋をする。

「ヨシ、終了。ナミのお蔭で大分早く終わったわ。さあて、食事を一緒に作って、食べましょうか。」

「はい。」

 ブルはナミを厨房に立たせると、料理の下ごしらえを手伝わせながら、食事を作った。

 二人は食堂の端で夕食にする。

「いただきます。うーん、おいしい。」

 ナミは食べながら、ブルの顔を凝視すると、ふと思って聞いてみた。

「あのー。」

「なに、ナミ。」

 ブルは自分の顔をしげしげとみつめるナミを、不思議そうな顔で見返した。

「あのですね、なんでブルさんは、人獣なのに、人にならないんですか?」

 ブルは破顔すると、

「クロウが、寝室以外では、獣のままでいろって、うるさいのよ。」

「えっ、それはまたなんで?」

「なんでも、吸血鬼は人獣と違って、魔族に近いから、伴侶のきずなを結んでいても、強いものがその相手を横取りすることが、多々あるみたいで、心配だからって、きかないのよ。まっ私的には、こっちの姿の方が鼻が利くし、味も人の時より敏感に感じられるんで、仕事的に重宝するのこともあるから、基本こっちの姿でいる方が多いわね。」

 ブルはそう言うと、うふふと微笑んだ。

『どうもブルさんに、のろけられたらしい。

 でも、クロウが隠すほど可愛いって、何だかブルさんの人間の時の顔を盗み見てみたくなる。

 今度機会があったら、頼んで見よう。

 きっと女性限定なら、見せてくれるだろう。

 それにしても、あのクロウ、外見と相まって、以外に嫉妬深いなぁ。

 人じゃなかった吸血鬼は、見かけによらないって、こういうことをいうんだ、きっと。』

 少しすると、大勢の兵士が食事をとりに、ガヤガヤと食堂に入ってきた。

 ナミは、兵士にグラスを出す、ブルを手伝いながら、そんなことを思った。

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