1 始業式6
そういえばそうだった。と今更になって思う。
一条が俺に話しかけてきたタイミングは俺がLHRが終わって帰ろうとした時だった。つまり、一条が俺に絡んで来たときクラスメイトのほとんどは教室に残っていたのだ。そんな特にすることもない空白の時間で久しぶりにバカな二人が大声で騒ぎ出せば当然注目は集まる。当然だ。高校生という人種はそういう騒ぎが何より大好きなのだから。
そんな訳でクラスメイトの大部分は帰らずに楽しく成り行きを見守っていたのであろう。
そこまで考えたとき俺が一条に向かって吐いた恥ずかしいセリフの数々がリフレインする。
“俺はお前らとはもう何の関係もないし関わる必要もない”
“あの時は俺が悪かったんだよ!お前らのせいなんかじゃない!”
うわぁ……恥ずかしい……これ皆に聞かれてたのかよ……立ち直れる気がしない……
やっと何故一条が居心地悪そうにしているのかが分かった。そういえばあいつは俺以上に臭いセリフを並べたててたな。今更思い出して内心自己嫌悪で一杯だろう。あいつにそれが分かるだけの分別があって非常に行幸だ。
「分かった?貴方達は今現在このクラスの人間大体40人程に迷惑をかけているの。」
「分かった。とってもよく分かったからもうその話は止めてくれ、胸が痛い。」
クラスの連中は明らかに迷惑でなさそうでむしろ積極的に楽しんでいる様子であるのだがもういい。
「そして一条君だっけ?貴方が一番に迷惑を掛けている人はクラスメイトでも貴方自信でもましてや私でもないわ」
そして俺をびしっと指差して宣言する。
「来栖君によ。」