無能?
短め。
ノムから死神のなりかたを知らされた賢一。
その続きです。
「……また、死のうとは思わないのか?」
「僕達は自分で消えることはできないんだ。たまに、耐えられなくなって他の死神に殺してくれって頼む奴もいるけど。大抵叶わない」
「どうしてだ?」
ノムは小さく笑った。
「だって、これ以上人出不足になりたくないじゃないか」
予想外の答えが返ってきて、返事に困ってしまった。返事がないのをどう取ったのか分からないが、ノムは気をつかうように慌てて言った。
「あっ、でも全ての人が死神になる訳じゃないよ!」
賢一は顔をあげ、首を傾げた。
「うんとね、そのカマで魂を切ると、魂は霊界に送られる。そこで何に生まれ変わるか決まるんだけど―」
「天国とか地獄は?」
「そんなものは無いよ。あるのは、今いる現世、霊界、死神界の三つだけさ。死んだ魂はすぐに生まれ変わる。……ただ、生前の行いでいいやつに生まれ変わるか、悪いやつに生まれ変わるかは決まるけど」
「ふーん……。それで?」
「えーっと、それで、僕達が切った魂は霊道っていう、霊界へ行く道に送られる。そこから落ちる魂があって、それが、死神になる。……でも、霊道から落ちる魂は少ないから、僕達はいつも人手不足」
そう言ってノムが笑った。賢一も小さく笑った。
「……神様って、残酷だな」
賢一の呟きを聞いて、ノムは小さく笑った。
「神は絶大な力を持ってるけど、それは生み出す力だけ。人の人生に何かしらの干渉はできない。……だから、人間がよく「お願い神様!」って必死に祈るけど、神様は何にもできない。それで願いが叶ったって言う奴は、運が良かったか、何かしら努力をした奴だよ」
賢一は眉をひそめた。
「なんだ、神様って意外と無能なのか?」
「バカ!無能な訳ないだろ!生み出す力ってのはね、風とか雨とか、自然のものはもちろん、地球を回してるのだって神様の力だし、全ての生物に力を送ってるのだて神様なんだからな!」
ノムの怒り顔に慄き、賢一は少しむくれて頭を掻いた。
「……んなこと言ったって、そんなスケールでかい話、理解できねぇよ」
ノムは何か言おうと口を開けたが、無駄だと思ったのか首を振って溜息をついた。
「……ま、とにかく、神様をあんまりバカにしないほうがいいよ。生まれ変わりを決めるのだって神様なんだから。変なこと言って、石ころにでもされちゃうよ」
「まじか!……まぁ、いいや。先のことなんて分かんねぇし……」
それを聞いてノムは呆れたように笑った。