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つまらない日常







 ――あぁ、つまんねぇ……。





 「賢一さん。そろそろ学校行かないと……」


 ドアの向こうから母親が声をかけるが、聞こえなかったふりをする。賢一が返事をしないと分かると、母親は小さく溜息をついて階段を下りていった。

 賢一はフンッと鼻で笑って寝返りを打つ。


 学校なんて、何日も行っていない。出席日数を稼ぐために何度か行くが、行っても授業を受けずに屋上で昼寝をして過ごす。


 何故かって?……そりぁ、つまんねぇからだ。

 毎日のつまらない授業。つまらない奴ら―。毎日同じ事の繰り返しでうんざりだ。





 ベッドの下を手でさぐり、リモコンを見つけて電源を入れた。何か刺激のある番組でもやってないかとチャンネルを回すと、銀行の立てこもりのニュースをやっていた。


 「……これ、隣町じゃん」


 どうやら犯人は一人で銃を所持しており、女性を人質に逃走用の車を要求しているという。

 賢一はしばらく現場の映像を眺めていたが、飽きたので他のチャンネルを回した。どこも立てこもり事件のことばかりで面白そうなものはなく、やがて電源を切ってベッドの向こうにリモコンを放り投げた。

 次に、床に散らばっていたマンガを手にとってパラパラとめくっていたがそれも飽き、またベッドの向こうに放り投げると、溜息をついてムクリと起きあがった。

 できるだけゆっくりとパジャマを脱ぎ、壁に立てかけたピッチリ整えてある制服に腕を通す。

 その途中でドアがバタンと開き、鳩尾に何かが飛び込んできた。


 「おそよー、お兄ちゃん!」


 「み、未来(みく)!いちいち抱きつくな!」


 「えへへ。だってお兄ちゃん起きるの遅いんだもん」


 未来を引き離しながら時計を見ると十時を回っていた。


 「お前、学校は?」


 未来は頬をふくらませ、そっぽを向いた。


 「別にさぼりじゃないよ。お兄ちゃんじゃないんだから。……今日は熱があるから休んだの」


 そう言えば、引き離した時に掴んだ腕が熱かったような……。


 「バカ。熱あんならおとなしく寝てろ!」


 そう言うと、何も入っていない鞄を持ち、未来がバカと言われたことを怒っているのを無視して家を出た。


 お昼の朝ご飯を食べてから学校へ行くと、すでに四校時目が終わろうとしていた。教室に入ると、全員が一瞬こちらを見てすぐに目を反らした。


 「村越(むらこし)!今何時間目だと思ってるんだ!」


 「四校時目です」


 素っ気なく答えて席に着こうとすると、目の前に数学の教師で担任の井手(いで)が怒りをあらわにして立ちはだかった。


 「屁理屈言うな!お前はいつも―おい、村越!」


 つまらない説教なんて聞く気はない。

 教室から出る瞬間、チラッと教室を振り返ると、全員が冷たい目で賢一を見ていた。だが、どんな目をされようと、何とも思わなかった。怒りも悲しみもなーんにも。

 








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