くつをはこう、ぼうけんに出よう!
えいたは買いものから帰るなり、おかしを食べると、すぐにまた家をとびだしました。買ってもらったばかりのくつを、友だちのしゅんくんに見せようと思ったのです。
「ねぇえいた、しゅんくんちよりも、もっとよいところへ行かない?」
走っていると、右足のくつが声をかけてきました。えいたは、びっくりして立ち止まりました。
「どこへ行きたいか、いってごらん」
こんどは左足のくつがいいました。りょう足とも、どうぶつみたいに目がふたつあって、ぱちくりと、まばたきをしました。
「ほんとうに?」
「うん、どこへでも行けるよ」
えいたはしんじられませんでした。けれど、どこへでも、といわれると、むねがはずみました。
「じゃあ雲の上につれてってよ」
「いいとも。えいたの好きなように、とんでみて」
いわれたとおり、えいたはジャンプしました。つぎのしゅんかん、
「あっ!」
と、声が出ました。たちまちけしきがかわり、広い雲の上に立っていました。
水たまりみたいに、雲のうすくなっているところから、えいたのすむまちが見下ろせました。おもちゃのようなまちをながめていると、えいたはもっととおくに行きたくなりました。
「月に行きたい」
「わかった。思ったとおりに、とんでごらん」
えいたは、えいやっ、と雲をけりました。
月のじめんはでこぼこしていました。えいたは、上手くちゃく地できず、ころびました。そのはずみで、ぽーんっ、とかたほうのくつがぬげてしまいました。
そこへ、どこからか、はい色のうさぎがあらわれました。
「このくつはきみのかい? かっちょいいナ」
うさぎはうしろ足で立っていて、えいたと同じくらいのしんちょうでした。うしろ足の先だけが白く、まるでくつをはいているみたいだと、えいたは思いました。
うさぎは、顔がくっつきそうなほどに、しげしげとくつをながめると、気に入ったのでしょうか、それをはいてにげだしたのです。
くつを失くせば、お父さんやお母さんにしかられるばかりか、なにより家に帰れません。
「くつをかえせ!」
「へへ、おれをつかまえられたら、かえしてやる」
えいたはひっしでおいかけましたが、うさぎの足にはかないませんでした。
えいたは、とっさにひらめきました。くるりとむきをかえました。
月はボールみたいな形をしていますから、はんたいの方へ走ればうさぎと会えるとかんがえたのです。
すぐに、うさぎはむこうがわからやって来ました。
「ああッ!」
えいたに気づくなり、うさぎは目をまるくしました。けれども、きゅうには止まれません。
「つかまえた!」
と、えいたはうさぎにとびつきました。
「これでかえれるぞ」
ぶじにくつをとりもどし、えいたは地球に帰ろうと思いました。すると、
「もういっちゃうの? ひとりはいやだナ」
とたんに、うさぎはしょんぼりとしました。
はなしを聞けば、うさぎはずっとひとりぼっちだったらしいのです。
いよいようさぎは泣きはじめました。
えいたはきのどくに思って、帰れなくなりました。どうしたものか、なやんでいると、くつたちがいいました。
「それならいっしょに地球にいこうよ」
えいたはさんせいしました。うさぎは、うれしそうにとびはねました。
「よぅし」
えいたは、うさぎとがっちりとかたをくみました。そして、
「いち、にの……さんっ!」
と、ふたりでおおきくジャンプをして、月をとびだしたのです。
つぎに気がついたときには、えいたはちいさなうさぎをだいて、公園のすなばにねころがっていました。
「やった! 地球にもどってきたぞ」
と、よろこんだのですが……
くつを見るとすっかりぼろぼろで、おまけに、つまさきにあながあいています。元にもどったようで、うんともすんともいいません。
「月まで行ってぼろぼろになった、っていったら、お母さん信じてくれるかなぁ」
うつむくと、うさぎと目があいました。そのまなざしにはげまされて、えいたは、家へとあるきだしました。




