三匹目の贈りもの
山の日暮れ。細いそま道を、ひとりのお坊さんがおなかをすかして歩いていました。もう何日も食べものを口にできず、ふらふらで森の中をさまよっているのです。
きょうも空腹で夜を過ごすのかと、お坊さんはため息をつきました。
この姿を、くまさんと、うさぎさんと、にわとりさんが木かげから見ていました。みんなも、ききんで食べるものがなく、うえていたのです。
でも、おおくの人たちを助けた、えらいお坊さんが苦しんでいるのに胸がいたみます。動物たちはそれぞれ食べものを探しに出かけました。
夜になって、お坊さんは火をたきました。
そこへ、三匹があらわれました。
くまさんはかきの実を、にわとりさんはきのこを差し出しましたが、うさぎさんだけは何も見つけられず、うしろの方ではずかしそうにもじもじしていました。
くまさんはかきをむき、にわとりさんは枝のさきにきのこを差して、たき火で焼きはじめます。
うさぎさんは、しばらくみんなの働きをみていましたが、意を決したかのように前へ進み出ていきました。
「わたしは、お坊さんのために何も見つけられませんでした。だから、これを食べてください」
言うなり、前にいたにわとりさんを、ぽんと火の中へけり込みました。
くうゎっくうゎっくわー。
「やっぱ、焼き鳥はうめぇな」
「ちょっと塩あじが足りないんじゃない?」
「焼き鳥のたれ、切れちゃっててさ」
と、みんなはおなかいっぱいごちそうになりました。
ひとりが犠牲になって、多くが助かりました。
こういうのって、功利主義的に正しい?
(で、おしまい)
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