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第8話 「締め忘れ」
※この物語はフィクションです。
※日常に潜む分岐を観測しています。
俺は自称天才エンジニアである。
今日は完璧だった。
ポンコツを受け止め、
SLは成長し、
上司は統率し、
顧客は撤収。
俺は観測し、
分析し、
構造を理解した。
1000点。
今日という物語は、綺麗に幕を下ろした。
――はずだった。
上司が静かに言う。
「資料、締めました?」
……は?
一瞬、時間が止まる。
俺の脳内ログが高速で遡る。
保存。
送信。
連携。
確認。
……締め?
あ。
締めてない。
内部資料の最終締め処理。
俺の担当。
完全に忘れていた。
上司がこちらを見る。
無言。
ほんの少しだけ口角が上がっている。
俺は言った。
「……今から締めます。」
キーボードを叩く。
Enter。
完了。
上司。
「うん。」
それだけ。
俺は自称天才エンジニアである。
だが今日、確信した。
ヒューマンエラーは、
巡る。
そして最後は、
必ず自分に返ってくる。
……くっ。
ほらな?
経験値+50。
天才は、締めを忘れる。




