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第7話 「撤収」
※この物語はフィクションです。
※日常に潜む分岐を観測しています。
俺は自称天才エンジニアである。
今日の夕会。
顧客が参加していた。
正直、嫌な予感はしていた。
顧客参加の夕会は、大体長引く。
話が拡散し、
論点が増え、
誰も責任を持たず、
時間だけが溶ける。
だが今日は違った。
上司が静かに口を開いた。
「本日の参加理由を教えていただけますか?」
一瞬で空気が整う。
顧客が話す。
上司は遮らない。
だが余計な枝葉が伸びそうになると、
自然に軌道修正する。
「つまり、要点はこの二点ですね?」
顧客が頷く。
整理された。
会議は加速する。
そして。
「本件はここまでで問題なければ、こちらで対応します。
本日はありがとうございました。」
撤収。
はやい。
無駄がない。
だが冷たくない。
その後、上司は顧客スレッドにフォローを書き込む。
会議で言わなかった補足。
角を立てない文章。
記録としても完璧。
俺は思った。
4話では“うそぉーーん?”だった人間が、
いまは完全に統率者だ。
振り幅どうなってんだ。
俺は自称天才エンジニアである。
だが今日もまた、主役は上司だった。
……くっ。
強い。
経験値+40。
ポンコツと統率は、同一人物である。




