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第6話 「出番なし」
※この物語はフィクションです。
※日常に潜む分岐を観測しています。
俺は自称天才エンジニアである。
今日もポンコツは多かった。
定常作業忘れ。
保存し忘れ。
遅延データ取得。
ヒヤリとする場面はいくつもあった。
俺は構えていた。
最悪の事態に備えて。
だが、その瞬間はあっさり訪れた。
ポンコツがDLしてきたファイルが遅延データだった。
ざわつく空気。
俺の出番だな、と一瞬思う。
その時。
SLが静かに言った。
「正規データ、連携しますね。」
数分後。
正規データ連携完了。
差分も問題なし。
終わり。
……は?
俺の出番は?
俺は椅子に座ったまま、ただ眺めていた。
処理は鮮やかだった。
焦りもない。
責任転嫁もない。
言い訳もない。
ただ、最短距離。
俺は小さく呟いた。
「おー」
それだけだった。
俺は自称天才エンジニアである。
だが今日、気づいた。
育てたつもりの部下が、
いつの間にか
俺の出番を消せる存在になっていた。
これは敗北か?
違う。
これは——
経験値の回収だ。
俺は静かにSLに言った。
「GJ」
それで十分だった。




