17/22
第17話「上司の帰宅時間」
俺は自称天才エンジニアである。
理論は完璧。
ロジックは美しい。
想定外は想定済み。
――の、はずだった。
上司は帰るのが早い。
毎日。
定時付近で帰る。
仕事が早いからだ。
合理的。
そう思っていた。
その日。
顧客障害が起きた。
緊急対応。
夜9時。
上司、まだいる。
新人が言う。
「上司さんっていつ帰るんですか?」
「早いよ」
俺は答える。
「今日遅いですね」
新人が言う。
確かに。
22時。
上司が立ち上がった。
「そろそろ帰るね」
「今日は遅いですね」
俺が言うと、
上司は少し笑った。
「だって今日」
一瞬、間。
「ドラマ最終回なの」
「それで帰るんですか」
俺が聞く。
上司は当然の顔で言った。
「リアルタイムが正義なのよ」
俺は理解した。
この人、
たまに一般人になる。
どんなに仕事ができる人でも、
人間には「どうしても譲れないもの」があります。
ドラマ最終回とか。
スポーツ決勝とか。
ゲームのイベントとか。
ちなみに上司の場合、
仕事は終わらせてから帰るので、
結局めちゃくちゃ有能です。




