9.土曜日の過ごし方
嫌な事は早々に終わらせたい派
目覚まし時計をかけなくても、自然と目が覚めてしまう。特に休みの日は、どんなに遅く寝ても、いつもと同じ時間に目が覚める。習慣のせいか、歳のせいか。ちょっと嫌だなぁ……と思いつつ、とりあえず起きて洗濯機のスイッチを押し、洗濯機に呼ばれるまで、ウトウトと軽い二度寝をする。
洗濯が終わり、濡れた洗濯物をベランダに干してから、朝食を作る。トーストと目玉焼き、コーンスープとヨーグルトの、簡単な朝食を済ませ、軽くシャワーを浴びる。部屋着を身に着け、リビングのデスクと対になっている椅子に座り、PCを立ち上げ、持ち帰った仕事に手を付ける。
今回は2件だから、すぐに終わるでしょう。
静かなリビングに、キーボードをカタカタと叩く音だけが響く。
…………………
……終わった~!
2件ともデータを送り、必要な書類は月曜日の朝に渡せばいいから、これで持ち帰った仕事は全て終わらせた。時計を見ると、もう少しで11時半になるところだった。
朝と同じように、軽く昼食を済ませ、朝食で使った食器と合わせて一気に洗い物を終わらせる。冷蔵庫と冷凍庫、食料品のストック棚、日用品の入った棚を確認し、必要な物をメモ用紙に書き出してから、駅前の商店街へと買出しに行く。
今日も外はありえないくらい強い紫外線と暑さで、嫌々ながら目的のお店に向かった。八百屋さんで野菜を買い、肉屋さんと魚屋さんで新鮮な肉と魚を買う。チェーン店のドラッグストアで日用品を買い足す。いつもならここで帰るところだけど、今日は鉢に入った観葉植物を買う為、花屋さんに寄った。
ひんやりと涼しい花屋さんに入り、様々な観葉植物を物色する。あまり大きなものだと運ぶのも大変なので、簡単に持ち帰れるものを探す。店内をウロウロしていると、少し変わった容姿の鉢植えを見つけた。
覗き込むと、鉢の縁に『ガジュマル』と書かれていた。
木の幹にあたる部分が、いくつかに分かれていて、土の上に立っているように見える。そこから伸びる枝と葉のバランスが絶妙さに一目惚れしてしまった。
「ガジュマルは、比較的育てやすいですよ。」
店員が笑顔で話しかけてくる。私はすぐに一目ぼれのガジュマルの鉢に指を指す。
「こちらで宜しいですか?」
私が頷くと店員は「ありがとうございます!」とガジュマルの鉢を手に取り、すぐに会計を始め、丈夫な紙袋に入れて渡してくれた。店員の話では、土が乾いたら水をたっぷり与えれば問題なく育つらしい。寒くなってきたら暖かい場所に置いて日に当てておけばいいみたいで、初めて観葉植物を飼う私にはぴったりだと思った。
鼻歌でも奏でたくなるほどご機嫌になり、重たい食材と一緒にガジュマルを連れてマンションに帰る。部屋に入ると、すぐにガジュマル以外をキッチンへ運び、冷蔵庫と棚にしまう。
ガジュマルはどこに置こう?
やっぱり日当たりの良いベランダ?
暑さに強い植物だから、真夏のこの時期には外に置いてあげるのがいいでしょう
あれこれ考えた結果、ベランダのテーブルの上に置くことにした。早速たっぷり水を与えて、イスに座ってガジュマルを眺める。
日差しは強く、セミの鳴き声は暑さを助長し、ジワリと汗を浮かばせるが、目の前のガジュマルは、青々と、そして生き生きとしていた。
――これからよろしくね
ふわりと小さな風が吹いた、ような気がした。
少しずつ何かが変わる
誰も気づかないように
小さな歯車が
静かに廻り始める
くるくると廻る
運命の歯車を
時間がこっそりと
いたずらのように
誰にも気づかれないように
廻し始めた
過去に傷を負った女
全てを知ってる男
何も知らない男
3人の運命の輪
静かに廻りだす
くるくると
その先には
何があるのか
誰も知らない
誰も気づかない
時間だけが動いている
新しい仲間が増えました。
ガジュマルちゃんは私も好きな植物です。