4.雑貨屋
雑貨屋さんの店長さん視点のお話です。
店の奥で商品の整理をしていると、チリンチリンと客の来店を知らせる音が聞こえ、急いで戻り、店内を見て回るお客様に声をかける。
「いらっしゃいませ。ゆっくり見ていってくださいね」
そう声をかけると、柔らかい笑顔を向け、軽く会釈をしてくれる。その仕草がすごく上品で……綺麗で……無意識に目を奪われてしまう。
開店当初から来てくれている彼女は、近くに住んでいるのか、よく店の前を通っている気がする。まぁ、この店自体が暇で、納品のない日は作業をしながら店の外を眺めるのが日課になっているから、自然と外に目が行くのは仕方ないにしても、いつも来てくれる彼女は特別だった。
艶やかで綺麗な長い黒髪
品位のある薄化粧
落ち着いた印象の服
無口で静かな立ち振る舞い
控え目だけど、どこか品のある雰囲気の彼女を見るたびに胸が高鳴った。いつも無言で、選んだ雑貨を購入する時も、身振りと表情だけで会計を済ませ、会話はなくとも表情だけで通じ合えるような気がしていた。会話が苦手な人もいるわけだから、と特に気にすることもなく、だたいつか彼女の声が聞ければいいな……と思っていた。
また彼女が来てくれますように…
そう願いながら、商品を綺麗に並べる。彼女が商品を手に取って、嬉しそうな顔を見せてくれることを想像すると、仕入れにも力が入ってしまう。
いつの間にか、彼女が好んでくれそうな商品を買い付けたり、作るようになっていた。
そして、まだこの時の俺は、彼女の事を何も知らずに呑気な妄想に浸っていて、いつか彼女と話せる日が来ることを楽しみに思っていた。
まだ序章ですが、ゆっくりとお話は進んでおります。
もどかしいかもしれませんが、お付き合いいただけましたら幸いです。