21.手紙(優side)
自己嫌悪からの〜
鈴木さんに手紙を渡した次の日。
いつものように店を開けてしばらくすると、チリンチリンと来客を知らせる音が聞こえた。
「いらっしゃ…」
来客に声をかける途中、すぐに鈴木さんだとわかると、なぜか途中で声を止めてしまった。鈴木さんはそんな俺を気にせず真っ直ぐに俺の前に来て、無言で空色の封筒を差し出す。すぐにうちで買ったものだとわかる封筒を受け取り、鈴木さんの方を見る。
鈴木さんはお辞儀をして、すぐに店を出て行ってしまったが、それと同時に、俺は昨夜のことを思い出してしまい、顔が熱くなるのを感じた。そして、手の中の封筒に視線を落とすと、嬉しさと不安の混ざる複雑な気持ちになる。
彼女に嫌な気持ちにさせてしまったのでは
拒否をされてしまう内容だったら
もう店に来てもらえなくなるのではないだろうか
もう会えなくなってしまうのではないのだろう
そんな恐怖に怖くなりながらも、静かに封筒を開けた。
『 森林様
お手紙、ありがとうございます。
突然のことで驚きましたが、お手紙を読ませていただいて森林さんのことが少しわかったような気がしました。
色々な種類の雑貨、木彫りの動物達、お店の雰囲気、全てが私の好みに合っていて、つい足を運んでおりました。森林さんのお店に対する想いと、木彫りの動物達が森林さんの手によって生まれていたことを教えていただいて、なんだか納得できました。
お店全てに森林さんの愛情がたっぷりと込められていて、その居心地のよい空間に私は、仕事や生活の疲れを癒されていました。森林さんも、お店のように暖かくて優しいのでしょうね。そんな気がします。
また、お店にお邪魔させていただきますね。これからも宜しくお願いいたします。
今年の夏は猛暑続きで身体が悲鳴を上げそうですが、お互い体調には気をつけて、この暑さを乗り越えたいですね。
それではまた。
鈴木 静花 』
綺麗な文字で書かれたその手紙は、俺の恐怖を一瞬で吹き飛ばしてくれる内容で、思わず顔がにやけるのがわかった。早速、返事を書こうとコピー用紙に下書きを始める。
少しずつ…彼女に近づけてるのか?
嫌なら返事をくれる訳がない
ましてや、こんな内容なんて…
そんな勝手な思い込みで、俺の気持ちを少しずつ出しながら、拙い文章を書き紡ぐ。何度も読み返しながら、自分の満足いく文章になったことを確認すると、前回と同じ便箋に清書していく。書き終わると便箋を丁寧に折りたたみ、封筒に入れる。封筒の表には『鈴木 静花様』と書き、裏には『森林 優』と書くと、この前とは違う形の、葉っぱのシールで封をする。
明日は月曜日。鈴木さんは仕事だろうから店の前を通るはず。その時に渡そうと、レジの下の引き出しにそっとしまう。早く明日にならないか…と、高鳴る胸を抑えながら、今日の仕事が終わるまで、新しい商品を創りに没頭した。
お手紙のお返事嬉しいですよね




