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雪待月  作者: 藤泉都理
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夢の男




 どうすればいいんですか。

 仮面の男性に尋ねた。

 ハッピーエンドが好きなのだ。

 しかもこれは夢。

 後味の悪い終わらせ方をしたくない。

 気持ちの良い朝を迎えたい。

 しかもなんたってこれは夢。

 きっと何でも、は言い過ぎだが、大方の事はできるはずだ。


「ふむ。いや。何もしなくていい。わらわの事はな。けれど。そやつ。そなたの後ろにいるでくの坊をここから連れ去って行ってくれ。そして、二度と此処には近づけないように村全体に結界を張っておくれ。願わくば、この村の存在を消し去ってほしい」

「嫌です」

「ふむ。嫌、か」

「嫌です。結界を壊して、この記憶喪失の男性と一緒に幸福になってください」

「今は幸福に見えぬか?」

「すみません見えません」

「ふむ。見えぬか」


 はいと断言すると、仮面の男性は鈴を転がすような声で笑い出した。


「ふふ。異なる血を混ざらせては力が薄まったようだな。わらわの心が読めなくなるとは」

「………」


 幸福だ。

 仮面の男性は囁いた。

 幸福だ、とても。


「村の為、と。天寿を全うできずに死んでいった村人を慰める役割を果たしている最中なのだ。なんぞ、これが幸福ではないと言える?」

「自己犠牲ってやつ、ですか?」

「どこがだ?わらわ一人ではない。村の者全員が犠牲者だ。そやつもな。可哀想に。わらわに心を奪われたばかりに。身体が朽ち果てても尚、彷徨い続けておる。そなたを探し出して、結界を解いてわらわをここから出せば、幸福にできると思い込んでおる。愚かなやつだ。そやつにもさんざん言ったのだがのう。幸福だ。幸福なのだ」

「………言い聞かせていません?」

「そう見たければ勝手にすればよい。ただわらわは、幸福だ。なに。村の者を全員慰め終えたら、こんな結界は破壊してあるべき場所を探すわ」

「この人はどうなるんですか?」

「輪廻転生の輪に戻りどこぞの相手と勝手に幸福になればいい」

「………なるほど」

「納得したか」

「はい。つまり、今すぐに村の人を全員慰め終えたら、結界を解いて、この人と幸福になればいいんですね?」

「………は。はは。ふふふ。そなた。自らにそのような力があると思っておるのか?わらわでさえ未だ叶わぬというのに」

「できますね」


 夢だから。











(2023.11.10)




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