覚醒
目的地は木々の間の茂みだった。馬車を止め、道のない草むらを私たちは歩いた。この世界で目覚めるまでの記憶がない私は節々が痛み、身体が思うように動かない。
「ごめんね。もう少しだよ。」
ジョージ君が私を気遣い、手を差し出してくれた。手をひかれて歩き出すと、不思議なことに次第に力がみなぎってくる。
「驚いたな。」
ジョージ君も目を見張る。私のの辿った場所に紋様のついた道が出来ているのだ。注いだ水が次第にコップから溢れるように、心も体も満たされ出した私の身体から溢れるように光が放たれる。
その輝きの中で私はこの世界の理を理解した。炎や水などを操る魔法使いという稀有な能力者が存在すること。その中で自分が光魔法使いなのだということ。大地と天と海を繋ぐことが自分の使命であること。
力が収まり、この世界でたった1人の孤独な私は責任の重さを投げ出したくなった。日本にいた時に、仕事に弱音を吐かず自分を犠牲にしたが、それ以外の選択肢を持てば良かったからだ。自然と感情が溢れ涙が流れた。
マダムシェリーは私のそばまで来て跪き、わたしにむかってまるで私を神様だと敬うように両手を合わせて祈りを捧げ出す。護衛にとついてきた少人数の従者たちもそれに倣う。
「やめてください。そういうんじゃないんで。」
私だって信じられない。でも私はただの私だ。私の拒絶と共に、手を繋いでいたままのジョージ君の低い声が響く。
「おまえたちの唯一無二の主は誰だ?」
その声にみな冷静さを取り戻す。
「陛下ただお1人です。」
ジョージ君は目で威圧して場を整えた。
「このことは他言無用に」
みんなの前で命令し、ジョージ君は私を見上げて微笑んだ。
「わかったと思うけど、エリーは特別な力を持っているんだよ。ねえ、エリー?僕とこれからのことを相談しようか。」
ジョージ君が優しく私に声をかける。この世界で私は彼にただただすがるしかない。
「よろしくお願いします!!!」
逞しく生きてきた私は、今いる世界で覚悟を決めた。




