ジョージ君、現る。
しかし実際に部屋を出てみると、暗い廊下の中で思わず立ちちすくむ。幸いなことに先ほどの女性が私に声をかけに来て、もといた部屋のベッドへと促がした。
「無理をしてはいけないよ。体調を整えて明日にゆっくり話をしましょう。」
女性に笑顔で諭されて私が泣きそうになる。私がベッドに横になった時に
バタン!!
と部屋のドアが乱暴に開けられた。
「マダムシェリー!彼女が起きたのですね!!」
やってきたのは金髪碧眼の可愛らしい男の子だった。
孤児院と聞いていたが、彼は一目で上等な服を着ているのがわかる。目が合うと少年はにこりと微笑み、私の前まで歩いてやってきた。
「ジョージ.d.ヨハンと申します。あなたのお名前を教えてください。」
そして洗練されたあいさつをしてくれた。
おずおずと私も返事をする。
「初めまして。伊東えりです。」
握手を求められて、男の子に手を差し出すと少年は手にキスを落とす。
「エリー、美しい。ああ僕の運命の人。」
おませさん!見た目は天使なのに一風変わった男の子に、可笑しな気持ちが湧く。状況がわからない中で不安だが、気持ちが救われる。私は思わずニッコリ微笑み優しく応える。
私の手を離さず、両手に握りしめたジョージ君は不敵に笑った。
「これからお互いのことをよく知っていきましょう。あなたの望みを何だって叶えていきたい。」
マダムシェリーはやれやれと、眉間の皺に手を当ててため息をつく。
「ヨハン様、軽率な行動はお辞め下さい。先程からずっと目に余る行動ばかり。お父様にご報告しますからね。エリーさん、でしたね。あなたも決して本気にしないように。」
ジョージ君はマダムシェリーに不満そうな目を向ける。
「仕方ないだろう。僕だってこんな込み上げてくる気持ち初めてなんだ。」
そう言いながら美しい男の子は私を熱い眼差しで見つめてくる。そしてそっとかしづき、私の手を自分の頬に寄せる。
「手を離して下さい!ご自身の立場をご自覚下さいませ。」
マダムシェリーは青ざめた顔で私の手を彼からちぎるように引き離す。すると美少年ら不機嫌そうに腕を組み、首を振りながらため息をついた。
「はあ。もう君の孤児院への寄付はなくそうかな。慰問をしにきた僕にそのような態度を取るなんて。。。」
「ヨハン様、、、」
青ざめる可哀想なマダムシェリーさん。
「エリー、ひとまず君のご両親に挨拶をしたい。家まで送るよ。」
ジョージ君が私に潤んだ眼差しを向ける。見た目は子ども、頭脳は大人、なんて言葉が浮かぶ。
「ありがとうございます。助かります。実家は東京都日野市、、国営昭和記念公園を目印に向かっていただければ」
と住所を伝えるとジョージ君は考え込み、マダムシェリーは首を傾げる。
やはり奇妙なのだ。ここは私が住んでいた世界ではない気がする。マダムシェリーの髪の毛だって緑色なのだから。
「ごめんなさい。」
つい謝る。そして不安で押しつぶされそうになる。会社に働かされすぎておかしくなってしまったのだ。そんな私を気にかけて少年は私の頭を撫でた。
「大丈夫だよ。エリー。僕と外に出てみよう。」
声が出ず、年甲斐もなく頷いてしまう。なんて美しくて優しい少年なんだろう。




