そんなもんか、世界。
「あなた……名前なんだっけ」
「あ、渡良瀬と申します」
「渡良瀬くんね。渡良瀬くんは小人……って呼んでるんだけど。この世界の人間ね。小人に召喚されたんでしょ」
「そうです」
さっきまでのアホアホティータイムが嘘のように、緊張感が走る。なぜ最初っからこうしてくれなかったんだと思わなくもないが。
「私も小人に召喚されたのよ。どうやってだかわからないけど」
「はい」
「小人は言ったわ。大きな身体を使ってこの世界の統一を手伝ってくれと」
「ふんふん」
わかる。
「私は思ったわ。なんでそんなことしなきゃいけないんだと」
「ふんふん」
わかる。めっちゃわかる。
「ていうか勝手に召喚してんじゃねーよ、このハゲじじい。お前を踏んづけてやろうかと思った」
「ふんふん」
わかる。ちょーわかる。
「だけど、このわけわかんない世界で生きていくうえで、言葉が通じる相手を敵にはしたくない」
「ふーん」
なるほどな。確かにそうだな。
俺もあいらんがいなかったら、ちゃんと生活できていたか怪しいものだ。
「どうしようかなーと思ったんだけど。とりあえず魔法で召喚されてるなら、この世界には魔法があるわけでしょ」
「おー」
冷静な判断だな。いきなり異世界に召喚されてよくそこまで頭が回るな。
漫画家だからですかね。さすがだな。
「だからね、召喚主にはまず魔法について調べる時間をくれと言ったわ」
「はえー」
すごいな。その発想はなかった。
「小人が魔法を使うところを観察して、実験してを繰り返したの」
「すげー」
マジで尊敬するわ。魔法なんてうっかりできちゃうパターンだと思ってたからな。アカネにも出来ないって言われてたし、すぐに諦めたぜ俺は。
「でも、よくわからなかった」
「よくわからなかったんだ……」
諦めて正解だった説。
やっぱ魔法は簡単じゃないんだよ。
「小人に聞いたら、なんとなくそうなるだろうと思ったらそうなると」
「なんとなくなんだ……」
うーん。魔法に理屈を求めてもしょうがないか……。出来ないものは出来ない。しゃあなし。
「で、なんとなく絵を描いてみたら描いた絵のキャラクターが現れた」
「ええええええええ!?」
そんなんで出来るやつだったん?
んだよー。魔法出来るのかよー。俺が出来ちゃったのは、子どもだけなのに。
「何人か描いてみて、登場した子達を召喚主に見せた。召喚主は喜んで、城で国民に向けてお披露目会を開いた。魔王率いる悪魔の軍隊、とね。これが小人たちに魔王軍と言われているものってわけ。私は悪魔を生み出す魔王ってわけね」
「そういうことだったのか」
魔王軍の正体は、ロリコンの漫画家ランドセルなめ男が描いたキャラクターの魔法による具現化。
どうりで華がある。現実の少女よりも。キャラが立ってると思ったら、まさにキャラクターだったってわけだ。納得。
そして、現実の少女を孕ませたわけじゃなかったことに安堵! あぶねー!
「で、召喚主は魔王軍による世界征服を目論むわけだけど」
「おお」
魔王軍ヤバいだろ。あっという間に世界征服できそうだが。なんでならなかったんだ?
「小人の寿命が短いのは知っている?」
「ああ。はい」
「魔王軍が侵攻を開始する前に死んじゃったんだよね」
「ああ……はい」
アカネ王女は若かったからまだしも。召喚主は禿げのおっさんなわけで。
それに彼女が乗り気じゃないってのもあるだろう。義理でやってるだけ。俺もそうだからよくわかる。
「で、手始めに召喚主の国を支配することになりましたと」
「あ~」
俺もそうなったもんなー。
「で、他の国を攻めるかというと、する理由もないし」
「あ~」
「で、悪魔たちは解散しました。みんなに自由にしていいよって」
「あ~」
「今じゃ好きなキャラクターを生み出して、自由にさせる日々です」
なるほどなあ。
この世界の謎が一気に解けたぞ。
つまり、全部この人のせいだ!
一言いってやらねば、気がすまないぞ!
「俺は悪魔がやりたい放題やってるから、わからせるために小人に召喚されたんだぞ。どうしてくれるんだ!」
「そのおかげでロリハーレムをねえ。お礼はないの」
「ありがとうございました!」
この人のおかげで俺は今幸せなのだ! やったぜ!
「私がカワイイカワイイ子たちを生み出して、その子達を……ギロリ」
「もうしわけございません!」
腰を45度に曲げて謝罪!
「で、妊娠させてどうしようって? どうしたものでしょうねえ」
「なにとぞ! なにとぞお力をお貸しください!」
土下座!
圧倒的土下座!
現状この人以外に頼れる人などいない!
助産師さんを描いてもらうしかねえ!
「う~ん。最近絵を描きすぎて、肩が凝ったなあ」
「お揉みしましょう」
「もうハーブティーが無いなあ」
「お淹れしましょう」
「なんかイライラするなあ」
「いくらでも殴ってください」
奴隷!
圧倒的奴隷!
そうしてでもやって欲しいことがある!
俺は両手をもみもみしながら、ヘコヘコとご機嫌を伺う。
「それでですね、お産を手伝ってくれる大人を描いていただけますかね」
「あ、ムリ。私は子どもしか描けないの」
「んだと、このアマ、ふざけやがって!」
なんだコイツよー!?
大人は描けないだー?
どんな漫画家なんだよ!
「これだからロリコンは!」
「私は誰にも手を出してないけどね。男の子にも」
「……」
やめよう。これは不毛な議論だ。どちらがロリコンかなんて。
「しかし、妊娠するとは思ってなかったな……あの子達も成長してるもんね……」
「思ってなかったですね……」
どうしたものやら、とお互いに顔をみる俺達。
「俺達だけでなんとかお産を……」
「無理ね」
「ですよねー」
ため息をつく俺達。まじでどうすりゃいいんだ。




