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家には住んでみよ、ベッドは寝てみよう。

「ごめんくださ~い」


 恐る恐る、コテージの前で声を掛ける。

 本当のキャンプ場で声を掛けるのと同じくらいの緊張感。

 この世界では巨大建造物だが、俺にとってはおなじみの大きさだ。


「いないのかな」

「ですかねえ」


 小首を傾げるしょうじあ。薄いピンク色の長い髪、上品な顔立ち。小首を傾げるのが似合いますね……。

 それはともかく、勝手に入るわけにもいかないが……


「ちわーっ!」


 バーンとわかるてぃが勝手にドアを開けた。うーん。子どものすることですから、勘弁してやってください。

 わかるてぃは青髪のショートカットで、ボーイッシュな元気っ子。バーンとドアを開けるのがサマになっている。


「いなーい」


 居ないか。

 ま、家に居たって暇だからな。テレビもネットも無いから。本も無いもの。この世界に引きこもりはいないよ。


「どうしようかね」

「住んじゃう?」

「その発想はなかったな」


 誰も居ないなら住めばいいじゃない。斬新ですねえ。そういう考えじゃないと、子どもが生き残っていけないよな。

 悪魔の世界に法律なんて無いし。 


「じゃ、住むか……」


 三顧の礼なんて言うが、いつ帰って来るかもわからんしな。もうすぐ日も暮れるし。とりあえず住むか。とりま住む。


「じゃ、飯作って」

「食べてぇ~」

「寝よー!」


 シチューを作って食べて、ベッドで3人でイチャイチャしていると……


「うわああああああああ!!」

「どぅわああああああああ!?」


 突然ドアが開き、誰かが入ってきた。怖すぎるだろ!


「誰だお前ー!?」

「お前こそ誰だー!?」

「この家の主だー!?」

「そうでしたか、お邪魔してますぅー!?」


 なるほど、怖い存在は俺の方だった。

 そりゃ勝手に人の家に住んでたら、家主が戻ってくるのは普通だな。


「な、なんだお前。誰なんだ、どういうことなんだ?」

「ふむ……長い話になりそうだな。何か飲み物でも淹れよう」

「ありがとう……って私の家なんだよ! 図々しいな!」


 なんか悪いやつじゃなさそうだ。この状況で普通はノリツッコミできないよ。

 

「まず、自己紹介からか」


 自分から名乗ろうとしたが、遮られた。名前より先に言う事なんてある?


「それより先に、服を着てくれないか」

「あ、そう?」


 俺達は服を着た。丸裸だったからね。

 彼女は一旦家を出てくれたよ。悪いね。君の家なのに。


「もういい?」

「大丈夫だ、問題ない」


 彼女は「はぁ……」とため息をつきながら入ってきた。お疲れ様です。

 

「さて、何でも聞いて下さい」


 俺のようなデカい人間はこの世界にいないはず。気になるだろう。


「で、なんで勝手に家にいるんですか」

「えっ? そこ?」

「いや、そこでしょ……」


 不思議な人だな。


「誰もいなかったから住んでみただけですよ」

「とんでもない人ですね」


 あらー。そう思っていた時代が俺にもありました。


「いなかったら普通住むよな、わかるてぃ」

「冗談のつもりだったよ」

「そうなの!?」

「ちょっと引いてました」

「言ってよ、しょうじあ~」

「あんたら……」


 呆れられました。さもありなん。


「あんたがアホなのはわかったけど、何者なの?」


 アホ呼ばわり。初対面で。甘んじて受けよう。


「俺が何者かか。プロレスラーだな」

「え? プロレスラーにしては小さいわね」

「ち、小さい!? 俺を小さいと言ったのか?」


 この世界に来て、初めて言われたぜ。あそこじゃなくて体の話ですよね?


「プロレスって、バキでも空手家とかより大きい人たちでしょ」

「ば、バキ!? あんた何者なんだよ!?」

「いや、先にあんたが何者なのか教えてよ」

「ぐぬぬ」


 気になる……。


「で、プロレスラーがなんでこの世界に?」

「いや、俺はプロレスラーじゃない」

「は? 何なの?」

「待ってくれ。バキを知ってて、この世界、という言葉を使う相手だと思ってなかったんだ。そういうことなら説明が違う」

「ああ。なるほどね」


 よく見れば、確かに。彼女は普通の大人の女性で、見た目も普通の日本人っぽい感じ。

 あいらんやしまん達は、とにかく華があるというか。めっちゃカワイイわけなんだが。  

 この人は本当によくいる普通の女性だ。図書館の受付とか、薬局の薬剤師さんとかやってそうな。


「俺は日本人だ」

「でしょうね」

「エール王国のアカネ王女に、悪魔と戦うために召喚されたんだ」

「ふーん」

「俺は悪魔と呼ばれていた彼女たちを、倒すと言うよりわからせて、仲間にしていったんだ」

「へえ~」

「そのとき、この世界の小さな人間たちの娯楽が無いって話になって。俺達はプロレスをすることになったってこと」

「なるほどね」


 ふんふんと、軽く相槌を打っている。全然驚かねえな。結構な話だと思うんですけどねえ。


「それで? ここに来た理由は? エール王国からだと結構遠いよね」

「ああ。妊娠したんだよ。女の子たちが」

「えええええええええええ!!!?? って、たち!? ってことは2人も!?」

「4人」

「よ、4人!? 何やってんの!?」

「何って……まあ、その……」

「いや、ゴメン。言わなくていい」


 よかったー。言わなきゃ駄目かと思った。


「はあ……妊娠か……」

「出産する前に、なんとかしてくれる人を探してたんだ。よかったよ大人がいて」

「いやいやいや、私じゃなんともできないよ……」

「ええ……」

「いや、そりゃそうでしょ……私だって、あんたと一緒でこの世界に来ちゃっただけの普通の人間なんだから……」


 彼女のことを聞くターンが来たようだ。


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