小さな身体に、いのちが宿りました。
アカネの死から129日――
いつものごとく、キャンプを張って朝ご飯を作っていたら、お寝坊さんのしまんが、口を抑えながらへろへろとやってきた。
「気持ち悪い……すっぱいものしか食べられない……あと、なんか最近血が出るやつが来なくなった……」
「へぇ~、まるで妊娠みたいだな……」
「あ、それ私もだよぉ~」
「へぇ~、しまんだけじゃなく、ゆきうもか……って、まさか―ッ!?」
に、妊娠したのか!?
ええ!?
だって、悪魔だよ?
異世界の女性は孕ませられないもんだろ普通。
そもそも不老不死だって聞いてたよー!?
ん?
「ていうか、不老不死って絶対嘘だよな」
「わかるてぃちゃん、大きくなってるよ」
「やっぱり?」
正直、それは気づいていました。
わかるてぃは背がめちゃくちゃ伸びてる。
ゆきうはおっぱいが大きくなってる。
あいらんの体はどんどん丸みを帯びてる。
完全に第二次性徴期のそれとしか言いようがない。
そもそも、悪魔とか不老不死だとか言ってるのは誰だ。小さな人間だ。
この世界の人間たちは、老化が非常に早く、すぐに死んでしまう。だからそう思ってるだけのこと。
結論。悪魔は、不老不死などではない。
そして、彼女たちは悪魔なんかじゃない。
「えっとー。みさ」
「はーい」
彼女はみさ。
アカネ崩御後に見つけたメスガキだ。
あいらん達より、少し発育が良い。体がむちむちしている。ちょっと落ち着いてるけどめっちゃメスガキ。
「みさは、大丈夫なのか」
「生理? ユウに会ってから来なくなった」
OH……
なんて明確な回答なんだ……
「はや」
「ん。なにお兄ちゃん」
彼女は、はや。みさと同じくらい発育が良い。ちょっと垂れ目な妹系。めっちゃいい子。
みさよりも、ちょっと前に出会っている。
「お前はなんか体に変化ないのか」
「……お腹が大きくなってきた」
「マジカヨ」
「あいらんのご飯が美味しいから、食べ過ぎかなって思ってたけど違うっぽい」
確定じゃねえかよ―ッ!?
ええ?
「しょうじあ。さすがに大丈夫だね?」
しょうじあは、わかるてぃよりはギリギリ年上なんじゃないかというくらいの小さな女の子。一番最近仲間になった。胸がまったく育っていない。そんな子と妊娠する可能性があることやってんのかよというツッコミは無しで頼む。
「何が? 生理? 無いよ?」
もう、そのまんまなんすね。別の生物じゃねえよ。これ、俺らと同じ人間だよ。魔法が使えるだけで。
さて、状況を生理……いや、整理しますと……はや。みさ。しまん。ゆきうの4人が孕んでるの? マジで? ヤバくね?
この歳で4人の父親ですか?
少子化対策って簡単ですね?
いや、そんなこと言ってる場合じゃねえ……今やるべきことはなんだ。出産、出産かあ……まず産婦人科に……ん? この世界にそんなもんないな。っていうか……
「いや、待て待て。出産なんて俺たちだけじゃ対応できねえぞ」
男が役に立たないなんてことは多々あるが、出産なんて最たるものだろ。
日本という男女共同参画社会においても、男では助産師になれないんだぞ。
つまり、俺にはどうしようもない。助けを求めるしかない。この世界の小さな人間ではどうしようもない。
悪魔を助けられるのは悪魔だけ、か。
「んー。となると、魔王軍の本部に行くしか無いか。どこにあんの?」
「「知らない」」
「誰も知らんのかよ」
魔王軍とかいう、謎の組織。今まで完全にシカトしてきた組織なんですが。
メスガキが妊娠したという理由で探すことになるとは。
今まで一度もヒント無かったんだが。マジで存在してるのか疑わしいレベル。
探すのは困難を極めそうだ……しかもタイムリミットがある……半年くらいで見つけないとヤバい。
「急いで探そう。みんなすぐに出発だ!」
「うっ……気持ち悪い。無理」
しまんがえづいた。つわり中なので、無理は禁物だった。
妊婦に無理をさせるわけにはいかない。困ったね。
「わかるわかる」
「背中さすったげる」
「よしよし」
妊娠中のメスガキが、みんなして優しくしている。お互いに辛さがわかる模様。
こんなとき、どんな顔したらいいのかわからないぜ。笑えばいいとは思えないぜ。
一緒に安静にしていてもらうのがいいだろう。
「どっかに家を作って、妊婦さんはそこで待機してもらうか」
「そうだね~」
「体を大事にしててくれ」
妊婦たちはパーティーを離脱した!
RPGでありそうで無いテキストだな。
ふんにゃ、つるや達は町を治めてるから不在だし。
まあ、あいらんがいるだけいいか。
「妊娠中って、ちゃんとご飯食べなきゃ駄目だよね」
みさが俺の顔をじっと見ながら言う。妊娠中じゃなくてもご飯食べなきゃ駄目なのでバツ。などと免許を取るときの試験みたいなことを言ってる場合ではない。
「もちろんそうだよ。ちゃんと食べてね」
「じゃあ、あいらんも残ってくれないと……料理がね」
ただでさえ食欲がなく、栄養に気をつけなければならない妊婦が4人。料理上手がいないと立ち行かなくなるか……。
「そっか。そうだね、じゃあ、あいらんもここに残ってくれ……」
「おっ。ほい」
あいらんはパーティーを離脱した!
これで残っているのは、わかるてぃと、しょうじあだけ。どっちもつるぺた。これで魔王軍の総本山に向かって大丈夫なのか……?
「ユウ……うっ」
「しまん……大丈夫か……」
大変そうだ。妊婦を置いていくのも辛いな……。付いていてやりたいが、それはできない。
しまんはいつも、クールでかっこよく、強さのある女の子。こんな弱ってる姿は見たことがない。一緒にいたい。
「ついていけなくてゴメン」
「いいんだよ、いいんだ。俺の方こそ気づいてやれなくてゴメンな」
ううっ……しまん……。弱々しいのカワイイ……。一緒にいたい……。強気な女の子が弱気なの可愛すぎる……ううっ……。
弱々しいしまんが、力を振り絞って話を続ける。
「アオハ地方、覚えてる?」
「覚えてるとも」
「あっちの方が、大きい人多くなかった?」
「多かった」
エール王国にいるメスガキは、俺の感覚では10歳~14歳。アオハに行ったときは、14歳~16歳くらいな感じ。
人間たちは別に同じだが。
「だから、そっちの方が、うぷっ」
「わかったわかった。そっちに向かってみるから。ありがとな」
よわよわしいしまんとは離れがたいが、お腹を撫でてから別れを告げた。
俺は小さなメスガキ二人と、魔王軍を探す旅に出た。
そろそろ完結させようと思っていたのになぜか旅に出てしまった




