表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/62

絶対死ぬなよ、ぶっ殺すぞ。

「よかった! まだ生きてた!」

「なんですか、失礼な」

「よかった! まだこんな感じだ!」

「あなたは……本当に変わらないですね」


 アカネ王女が生きていた。しかもクソ生意気なまま。顔の皺は増えたけれども。


「よかった……よかったなあ」

「なんですか、気持ちの悪い」

「嬉しいなあ……」


 いや、シンシャの町から急いで来てさ。

 頼むから生きててくれって、それだけ祈りながら走ったんだよ。


「なんですか、この……ぐふっぐふっ」

「だ、大丈夫か!? アカネ!」


 し、死ぬな! 死なないでくれ!


「……大丈夫です」

「よかった~」

「本当に気持ちが悪いですね」


 罵ってくれ。もっと罵ってくれ。俺はお前が生きていることが嬉しいんだ。よくぞシンシャより長生きしてくれた。


「アカネ……、召喚してくれてありがとな」

「なんですか、お別れの挨拶みたいな。縁起でもない」

「はは、そうだな」


 本当に。お別れに来たわけじゃないからな。


「明日、プロレス。見れるよな?」

「……なかなか歩くのが大変なので」

「俺が運ぶから。大事に運ぶから」


 見てくれ。頼むから、プロレスを見てくれ。


「悪魔を倒してもらうために召喚したのに、まさか悪魔たちを従えるとは思いませんでした」

「ん? まあな」


 いまさら何を。


「この町に、いえ、この国に平和が訪れたのは、勇者様のおかげです」

「……」


 なんか、嫌な予感がするな。

 感謝なんかしないで、罵ってもらえる?


「人口はあのときから倍以上に増えました」


 すごいね?

 寿命が短い分、繁殖が早いね?

 それって俺のおかげなん?

 そんなことよりさ。


「すっかり町も発展して……治安だけでなく、経済的にも、文化的にも……」


 死亡フラグじゃね?

 これ、死亡フラグなんじゃね?


「明日のプロレスが終わったら私は……」


 完全に死亡フラグだ―――ッ!

 阻止しろお―――ッ!

 

「うおおおおい! 言っちゃ駄目! それは言っちゃ駄目!」

「最後くらい話を聞いてくれても……」


 最後って言うな―――ッ!

 どうすりゃいいんだ、この状況は!?


「もう、思い残すことは……」


 目を伏せるな! 何やってんだ!

 お別れじゃないって言ってたじゃないか!


「最初にお呼びしたとき、本当に失礼いたしました。最後にお詫びできてよかった」

「言うなって! 待てって! 最後にプロレス見てからにしろって!」


 お前からそんな殊勝なセリフ、聞きたくないんだよ!

 プロレスで負けた俺を罵ってくれよ!


「あの、別にプロレスにそこまで思い入れは無いです」

「最悪だ!」


 どんな悪口でも嬉しい自信があったのに!

 興味ねえのだけはやめてくれよ!

 俺は国王とか勇者とか無双とか、そういうのはどうでもいいけどレスラーなんだよ! 


「もうわかったから、とにかくプロレスを見て欲しいの。最後でいいから」


 懇願する俺。

 頼むよマジで!

 見て! プロレスを! 見て!


「そんなことより、この町をよろしくお願いしますね……」

「そんなことより!?」


 いや、立派なお姫様ではあるが!

 俺はプロレスを見せたい一心で、駆けつけたんだぞ?

 アカネは虚空を見つめた。どうする、もうここでプロレスやる? 強制的に見せる?


「まさか悪魔に統治されることになるなんて……」


 感慨深く吐露するアカネ。

 そうなんだよな。悪魔が治めることになりましたね。

 まあ、悪魔なんて呼び方、もはや誰もしてませんが。アカネ以外ね。

 厳密に言うと、俺がこのエール王国を治めることになったんだよね。それぞれの町に悪魔が一人はいるって状態だ。信長の野望みたいにね。

 ちなみにシンシャの町には、ふんにゃが。このアカネの町には、つるやが常駐します。内政の数値が高そうな二人だよ。

 いや、俺たちの統治スタイルはどうでもいいのよ。


「そんなことよりプロレスをですね」

「そんなことじゃないですよ、町の統治が一番大事なことです」


 いや、そうかもしれんけども……。

 そもそもプロレスをしてくれと言われたのは、シンシャだもんな。アカネから頼まれたのは悪魔の討伐なんすよ。

 だからこそ、プロレスを見て欲しいんじゃないですか。

 シンシャの町の人々くらいさあ。子どもの名前にするくらい、悪魔のことを好きになってくれた町の人々みたいにさ。

 俺たちのファンになって欲しいんだよ。アカネにも。


「この町にはつるやが常駐するから大丈夫だって。それより今はプロレスを見ることに集中しようぜ」

「つるやさんが治めてくれるなら、安心ですね……」

「おい、目をゆっくり閉じるな!」

「あとは……任せました……がくり」

「安らかに逝く気マンマン!?」


 なんで逝き急ぐん!?

 あんたらただでさえ寿命短いんだからさあ。

 長生きしようとしましょうよ!


「……どうせあなたが勝つんでしょう?」

「え?」


 なんか今までと雰囲気が違うな。なになに? なんですか?


「プロレスってあなたが勝つお芝居でしょ?」

「なんだとお――ッ!?」


 こいつ、俺たちのプロレスをなんだと思ってんだ―ッ!

 俺が勝ってるのは強いからであって、シナリオじゃねえよ!


「このアマ、八百長だと思ってるってのか――ッ!?」

「八百長だなんて言っておりませんが……お芝居でしょ?」

「芝居じゃねえ――ッ!」


 あったま来た!

 んだコイツよー!?

 

「だって、ねえ?」


 このクソババア……腹立つ顔しやがって……。


「シンシャのとこでは、俺だって負けてるんですけど!?」

「たまには負けないと、面白くないですものね。じゃあ、明日は負けるのかしら」

「はあ!? 勝ちますけど!?」

「明日は勝つんですね。それはよかったですね」

「てめえこら、ぶっ殺すぞ!?」


 明日まで生きてて欲しいと思っていましたが、今すぐ殺したいんですけど!?

 生でプロレスを見たことが無い奴みたいな意見言いやがって。


「アカネ! お前がマッチメイクしろ!」

「試合の対戦カードを選べるということですか?」

「そうだよ。なんでもいいよ。やってやんよ!」


 その代わり、明日まで生きてろよ、バカヤロー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ