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少女の恋を受け止められるほど、男は大人になれやしない。

 シンシャの町を後にして、アカネの町へ行き興行を行い。

 その後も多くの町を訪れた。

 エール王国から、アオハ地方にも行った。

 行く先々で、産業を起こし、建設を手伝い、プロレスをする。

 悪魔も増え、オスガキ軍団VSメスガキ軍団という人気の興行もできた。

 プロレス観戦だけでなく、握手会のようなファンサービスも好評。

 なにもかも順調に、日が過ぎていったのだが……。


「え? シンシャ?」

「はい、お久しぶりです、勇者様……」


 さすがにそろそろ戻ってきてくれという要望に答えて、シンシャのいる町にやってきたら。

 

「ちょっと遅すぎませんか?」

「いや、そ、そうかもな……」


 シンシャは変わっていた。

 人柄……とかそういうことではなく。

 なんというか……。


「悪魔は不老不死と聞きますが、勇者様もおかわりないですね」

「シンシャはだいぶ、その……」

「だいぶ、時が経ちましたからね」


 いや、そこまで経っていない。

 確かに、久しぶりではあるが、1年も経っていないはずだ。

 なのに、シンシャはもうおばさん……いや、おばあさんと言ってもいいくらいになっていた。


「ああ、よかった。死ぬ前にもう一度、プロレスを見たかったんです」


 ああ……なんてことだ。

 なぜ気づかなかった。いや、なぜ気づけなかったんだ。

 シンシャの町を離れてアカネに再度会った際。随分と印象が異なると思ったんだ。

 なんかキレイになったなぁ、くらいでそれ以上考えなかった。

 あれは、歳を重ねて女らしくなっていたんだ……アラサーくらいに。そしてアカネはシンシャの姉。

 シンシャがこの感じだと、アカネは……生きてることを願うばかりだ。


「ずっと勇者様の居た頃が恋しかった。青春の思い出です」


 シンシャはシワの多い顔で静かに微笑んだ。

 なんということだ。

 なんと儚い存在だったのか。

 小さき人間たちは、ただ小さくて弱い存在じゃなかった。寿命が短かったのだ。

 俺にとっては、この世界に来てからの間の、たった数日の出来事。

 だが、シンシャにとっては……


「勇者様より素敵な男性が現れたら結婚するつもりでした。だから、結局独身なんですよ」

「そっか。そりゃ間違えたな。そんなやついないよ」

「ふふ、本当に」


 本当に間違えてるよ。こんな素敵な女性が独身で亡くなっていいわけがない。

 あんなに男が好きだったのに。

 もっと早くここに戻ってくるべきだったんだ……。

 いや、落ち込んでいる場合ではない。


「じゃ、頑張ってプロレスやらないとな!」

「はい。町の人々も、とても楽しみにしています。あのときの興行中に生まれた子たちなんて、勇者様たちのグッズだけでファンになっていますからね」

「まじか……」

「いつか勇者様たちに会えることを夢見て、みなさん頑張っていたのですよ」


 確かに、町は驚くほど発展していた。まず人口が増えて、町として大きくなっているのだが、それだけじゃない。

 以前来ていたときは、人々はもっと貧しそうだった。今はみな血色がよく、太っている人もいたし、服装がまるで違う。ただ着られればいいというものじゃなく、ファッションになっている。

 俺たちのプロレスの衣装を作ったことが、影響しているんだろうけど。それにしても確かに頑張ったんだなー。

 

「この町の女の子たちの名前は、シマンとか、アイランとかばっかりなんですよ」

「へえ!」

「プロレスを見ていた子どもたちはみんなもう大人になって家族を持っていますから」


 それはとても嬉しいことだ。

 悪魔と呼ばれ、恐れるだけの存在だったのに。娘の名前にするほど、好きになってくれたのだ。

 最初は俺だけが人気だったけど、最後はみんなのグッズが売れてたもんなあ……。

 それにしても。


「シンシャは、女性に優しくなったのか?」

「お恥ずかしいことです。でも、それはあいらんさん達のおかげですよ」

「そうなのか?」

「魔法も使わずに、力をあわせて自分よりも大きな男に勝つ。そんな女性がいるわけですから」

「そうか……」


 俺が負けた試合が、シンシャの女嫌いを直していたとは。

 一回の試合が人生を変える。やはり一番スゴイのはプロレスなんだよなあ……。


「いつか勇者様がいらっしゃるときのために、プロレス会場を建てたんですよ」

「え!? マジで!?」

「案内いたしますね」


 立ち上がろうとすると、お城の人たちが何人もやってきた。人望ができたんだなあと思うと同時に、 一人で歩かせるわけにはいかない体になってしまったんだなあとも思う。


「そのまま椅子に座ってな」

「え?」


 俺は椅子ごとシンシャを両手で掴み、胸に抱えるように持ち上げた。


「まあ! すごい!」


 シンシャは手を叩いて喜んだ。別に喜ばせようと思ったんじゃないぜ、この方が早いんだよ。

 ただでさえ、この世界の人間は小さすぎて遅いんだから。


「あちらに見えるのがそうです」

「おお! マジですごいじゃん!」


 プロレスをしていた野原に、ミニサイズの日本武道館みたいなものができている。

 中に入ってみると、真ん中に大きなリング。周りに極小の椅子がびっちり。

 大きさは、そうだなあ。

 幼稚園の体育館というか……。ちびっこ相撲道場というか……。うまく説明できねえなあ。

 リングが9畳くらいで……その周りに階段が2段くらいある、ってとこでしょうか。それでもこの世界の人間だったら、相当な人数が収容できるんじゃないか?

 

「こんなとこで試合ができるの嬉しいよ」

「こちらこそ、試合が見れるのが嬉しいです」

「よっし、また5連戦させてもらおうかな!」

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― 新着の感想 ―
ギャグだと思って読んでるのに、ちょっとせつなくさせるのずるい。 最高。
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