よっしゃ、残念なお知らせだ!
第一試合、ふんにゃVSゆきう。
第二試合、あいらんVSしまん。
第三試合、ゆうしゃVSワカルティー。
つるやは、物販ブースと、俺が試合してるときの実況。
このパターンでプロレスをする興行は、数日起きに開催され、人気を博した。
俺のハーレム生活も順調だし、人間と悪魔たちの共存も、いい感じだなーと思っていたある日。
「勇者様、残念なお知らせです」
「えっ」
シンシャ王女に呼び出された俺は、なんか深刻なことを言われる模様だ。
なんだろう。
俺達がようやく建てた橋が水没したとか?
それともオスガキが山賊化して、徒党を組んで襲ってくるとか?
いや、悪魔がついに軍隊を結成して侵略を開始した?
ついに、勇者プロレス軍団VSオスガキ悪魔軍団の全面戦争が始まってしまうのか!?
それならそれで逆にアツいかもしれんぞ!!
さあ、残念なお知らせとは!?
「アカネが呼んでいます」
「うわー! マジで残念なお知らせだー!」
そっちかー。そっちの意味で残念なお知らせかー。
確かに残念だー。
だが、理由によるかも?
「なんで呼んでるの?」
心を入れ替えた可能性があるよな。
謝罪したいとか。そういうことなら、許してやらんでもないよ。
「ズルい、と」
「へ? ズルい?」
何が?
どういうこと?
「シンシャの町だけ市民の好感度が上がってズルいと」
「しょうもな」
え? あいつ好感度気にしてんの? じゃあ色々改めたほうがいいよ?
全市民、全国民、いや全人類から嫌われてんぞ。
「なに、羨ましいとか言ってんの? 市民たちは」
「そうですね、町の人々に噂があるようで」
「ほう。噂が。どんな」
「あの町中でイチャイチャしてるだけだった勇者が、向こうの町では熱狂の渦を起こしていると」
「それはゴメンって」
そうか、あの町の住民からすると俺たちってそんな感じなのかー。アカネ王女のことはともかく、あの町の人たちには悪い気もするな。
「じゃ、アカネの町でもプロレスやってくれと」
「そういうことになります。残念ですが、向こうに行っていただくのですが……しかし、こちらでもやってもらえなければ、暴動になりますので……」
困ったな―。人気者はつらい。
俺がプロレスやんないと暴動しちゃうんだよ、この町。やれやれ。
「そしてまた、アカネの町でプロレスをすれば、他の町からも呼ばれることでしょう……もう人気に火がついてしまうに違いありません」
「人気に火がついてしまうに違いないか……」
そうなるか……そうだよな……。俺はもはやこの世界のエンタメのカリスマだもんな……。
「ですので、アカネの町でプロレスをしたら、また町を移動してもらって、他の町が終わったらまた戻ってきていただいてと」
「あー、なるほど」
ほんとのプロレスの興行みたいにか。両国国技館から大阪城ホール、その後月寒グリーンドームみたいな。新渡良瀬プロレスリング旗揚げです。
「一日じゃちょっと物足りないので、15日くらい滞在してもらってから次の町に……」
「えーっ」
そんなに滞在すんの?
それじゃ大相撲じゃねーか。シンシャ場所、アカネ場所だよ。
まあいいか。確かに、2,3日ですぐに移動ってのもしんどい。ホテルがあるわけでもないし、腰を据えて滞在しないといい試合ができんか。
「じゃ、とりあえずアカネの町に行くか……」
「いきなり行くと、暴動になりますので……」
「あ、そっか。ラストの試合をやっとくか。いっそ引退試合にするか」
そろそろ1回くらい引退試合をやりたいものです。
プロレスラーは引退試合を何回もやるものですからね。
「ラスト5日だけ、やっていってください」
「5日もやんの!?」
そんなにやんなくても、納得するだろ……と思うが。
シンシャは本当は俺を逃がしたくないんだな。そりゃそうか。俺も別にアカネに会いたくはない。
「じゃあ5日だけやるか」
「1日目は、勇者VSゆきう&しまん」
「えっ!? 1対2のスペシャルマッチ?」
「2日目は、勇者VSあいらん&ふんにゃ」
「なんでシンシャがマッチメイクすることになってんの」
「3日目は、勇者VSワカルティー&つるや」
「おいおい、ワカルティーが普通につるやと一緒にやっちゃってんじゃん。謎のマスクマンだって言ってんのに」
「4日目は、勇者&ワカルティーVS他全員」
「スペシャルすぎるって。マジカヨ?」
「5日目は……」
「それを超えるマッチメイクあるかね? もう無理では?」
「勇者VS全員です」
「俺を絶対に負かせるつもりじゃねーか! それもうプロレスじゃないだろ!」
シンシャは俺の信者だと思っていたのだが?
まさかのドSだったか?
「勇者様が全員屈服させるところを見たいので」
「お、おう」
目がガチだ。こりゃ俺が負けるなんて微塵も思ってないぞ。
確かに、今まで俺は絶対に負けない試合しかしてなかった。むしろそれこそがプロレスじゃない。
試合前に負けること考えるやついるかよバカヤロー、というのは名言だが。負けるかもしれない試合に挑むのは、久々に心が熱くなるぜ!




