探しに行こう、見つけたくもないけど。
「勇者のグッズはないのか!」
「勇者様のグッズは!?」
「物販はあいらん選手としまん選手のものだけになりまーす。あと残ってるのは、あいらん選手のティーシャツと、しまん選手のバスタオル、あと両選手のブロマイドでーす」
「勇者様のブロマイドはなんで無いの!?」
「勇者のブロマイド欲しすぎるだろ」
「わしも、勇者のブロマイドがほしいのお」
おいおい、俺の人気が出ちゃったよ!
プロレスの終了後、物販コーナーには行列が出来た。
しかし、みんなが欲しがったのはなんと俺のグッズ。
俺のグッズなんか作ってねえよ。
もともと、俺がリングに上がる予定なんてなかったから。
「だから、わたらせゆのグッズも作ろうって言ったのに~」
まさか、あいらんの言うことが当たるとはな。
俺のグッズなんて誰が買うんだよ、と思ったけどお爺さんすら欲しがっているというね……。
「まあ、作るしか無いな……」
「わたらせゆパンツと、わたらせゆ抱き枕と、わたらせゆのお風呂ポスターを作ろう」
「いらねーだろ!?」
「いる。売れるよ、ユウのグッズ」
「まじかよ……」
しまんもそういうなら作っておきますか。
異世界ですから、俺の価値観は通用しないですよ。
この世界の人間のことはしまんが詳しいからね。
「しまん、本当に売れるんだね?」
「うん。人間たちは風呂に入らないけど、お風呂ポスター売れるよ」
「いや、じゃあ売れねえだろ!」
やっぱり、こいつらの言う事は危険です!
「つるやちゃん!」
「はい。どうしました?」
「物販で作る俺のグッズは、つるやちゃんが決めてください」
彼女が一番まともです。仲間になってくれてよかったです。
「はい。そうですね……子どもたちが遊べるような、小さいお人形を作りますね」
えっ……それって、キン消しってこと……?
俺が異世界でキン消しに?
そんなことあんだな。
ま、ここはつるやに任せて。
「さ、ゆきう。デビューに向けて練習に行こうか」
「えー。チョップだけでいいよー」
「いいわけあるかー」
ゆきうは圧倒的にパワーが不足している。
だから投げ技は厳しいんだが、なおのことテクニックを磨かなければならない。
もちろん、チョップとキックだけで闘うという意見は却下。
「ローリングエルボーとか、ローリングソバット(空中回転後ろ蹴り)とか派手な技を使ってジュニアヘビー級の闘い方を身につけるんだよ」
「ふぁーい」
ゆきうはホニョホニョとしているが、ちゃんとプロレスラーになってもらわんと困る。つるやちゃんはすぐにでもデビューできるし、技のバリエーションも期待できる。
ゆきうは……ボディスラムもできないからね……。
工夫をしなきゃいかんぜ。
「それよりさぁ~。おにーさんはどうするの?」
「は? 俺?」
俺は無敵なんだから、何もしなくていいよ。
「俺は別に鍛えなくていいでしょ」
「そうじゃなくて。対戦相手だよ」
「ええ?」
「おにーさんの対戦相手がいないのはどうするの?」
「はあ。いや、俺はいいだろ別に。リングに上がらなくても」
もともと俺が闘うつもりはなかったわけだし。
「駄目でしょ~。一番人気なんだから。グッズも作ってさ~」
「む……」
確かにそうだが……。
「俺がゆきうに勝ったところでな」
「面白くないよ~」
「だな。三対一でハンデ戦にするとか?」
「えー。おにーさんと闘うなんてやだよ~」
「俺もゆきうを投げるなんてできないなあ」
「「えへへへへ」」
なかよし!!
「ま、なかよしなのはいいが」
「そうだね」
「敵がいないのは困るな」
「そうでしょ~?」
「小さな人間を百人集めて……」
「試合になんないよ」
「だよな……」
まず関節技は不可能。小指でやることになる。人形をいじめてるような感じね。
ラリアットももちろん不可能。エルボーも当然駄目。
投げたら死んじゃうだろうし、蹴っても死んじゃうし、フライングボディプレスをしたら血の海になる。
プロレスとはいえない。
「悪魔を探しに行くしかないんじゃないかな~?」
「男の~?」
「そーじゃなーい?」
「え~?」
確かに悪魔を倒すために異世界に連れてこられたけどさー。
プロレスを異世界に広めたいけどさー。
なんでわざわざこっちからガキを探さないといかんのだ……。
「ほら、一緒に探しにいってあげるから」
「ええ~? いや、練習しないと駄目じゃん」
「いやいや、そんなことよりおにーさんの対戦相手探しの方が大事ですよ」
「そんなこといって。練習したくないだけだろ」
「そ、そんなことないですよ?」
そのキョドキョドとした目の動き。図星だろ。
ったく……。
しかし、こうなってくると前回みたいに勝手にやってきてくれたのは、ありがたいことだったな。
あいつを牢屋にぶち込んで、毎回俺と……いや、観客はそれじゃ納得しないな。あまりにも楽勝すぎたのだ。
それなりに強いやつを見つけてこないといけない。
「しょうがない、探しに行くかー」
「うんうん。いこいこ。ふたりきりで」
ぎゅっと腕に抱きつくゆきう。
まあ、こういうのも、いいかもしれないね……。




