子どもらしいdamage
数日が過ぎ、シンシャの町の小さな人間たちとの関係もいい感じになっていた。
悪魔から命と財産を守る以外に、邪魔な石や木などの撤去。新しい道を切り開き、橋を設置し。飲み水の提供といった、インフラ整備が喜ばれた。
やっぱ魔法よりも腕力なんだよね。俺に期待されてるのは重機の役割なんすよ。
後は、塩ね。ここは海が遠いこともあり、人間たちは塩不足だった。逆に砂糖は栽培に成功しており、俺たちは砂糖が手に入った。砂糖があると煮物がうまくなる。
またこの町では果実も実っていた。柑橘は料理にも使えるからな。焼き魚にちょっと搾るだけでもだいぶ違う。
これで、あいらんはますます料理が上手に。それを食べたつるやちゃんは、人間と交流する意義を理解してくれた模様。
「悪魔だーっ!」
悪魔警報だ。
もともとは悪魔が来たところで何もやりようがなかったから、見張りはいなかったのだが。
今は見張りを立ててもらって、悪魔が来たらその連絡が魔法で町全体に聞こえるようにしてもらっていた。
「よっしゃ! どんな可愛い娘だろうねーっ!」
俺はるんるんと鼻歌まじりで、スキップしながら日が沈む方の門へ。
「くそがあーッ!」
男形だった。
一瞬ボーイッシュなだけか? と思ったが違った。がっつりオス。
「へー。ほんとに俺らよりデカいやつなんていんだ」
声も男。というかクソガキ。
会話をする気にもならんが……。
今は一人なんだよな……。
「はぁ~」
クソでかため息。
「つっても、デカいだけで人間だろ? 俺には勝てないぜ」
ドヤ顔クソガキ。
「はぁ~」
クソでかため息Ⅱ。
「くらえ、俺の――」
なんかしようとしてるが、ガキの遊びに付き合う気はない。
俺は左手で相手の右手首を掴み、右手で左耳をつまみ、右足で大外刈り。
「うおっ!?」
この時点ではダメージは無いので驚いているだけ。
ここで左手をぐいっと引っ張る。
ガキを巻き込む形で二人で倒れ込む。
「ぐえっ!?」
いわゆる柔道の巻き込みというやつ。俺の体重がガキの腹にのしかかり、息ができない状態に。もちろん詠唱しようとしていた魔法もキャンセル。
寝技……は男にするのも気持ち悪いので……。
とりあえずうつ伏せにし、背中にまたがって座る。基本、これで俺を攻撃するのは難しい。
「お、重い……」
これでわからせたか、というとまあ無理だろう。
なんだろう、拷問みたいなことが必要かな。
といっても相手はガキんちょ。男とはいえ俺から見たら子どもですよ。
ガキ相手の攻撃となると……
「いーち」
「ああーっ!?」
手の指をね。
一本ずつね。
「にーい」
「痛ってー!?」
爪を剥がしている……のではもちろん無い。
指を鳴らしてるだけ。
ポキっと。
なんだったら、喧嘩する前に自分でやるやつね。
これ初めての頃は痛いんだよね。小学校で指を鳴らすのが罰ゲームだったことあるんだよなー。
「さーん」
「うう……」
表情見えないけど、結構効いてるね。
この数を数えるっていうの、いいんですよね。全部の指でやるんだぞと。まだまだ痛いのは続くんだよというね。絶望ね。
「よーん」
「くっそ……」
高校生の長男が、小学生の弟と兄弟喧嘩してるときみたいな感じだな。
痛いのは痛いんだが、負けは認めたくない。
ま、こっちはわからせなきゃいけないからな。次こそ勝てるって思わせちゃダメなんよ。
俺には絶対に勝てるわけがない。それを叩き込まないとね。
「じゅーう」
手の指を全部鳴らした。
ま、ここで安心しますわね。
「痛かった……」
そう。過去形ね。
まだ希望があるって感じっすね。
「よいしょっと」
俺は前後を変えて、今度は片足を奪う。
「じゅういーち」
「ああ゛あ゛あ゛あ゛」
足の小指を鳴らす。
次は薬指。
「じゅうにー」
「くあっ、あっひいっ」
手の関節は鳴らしたことあっても、足はない人も多いかもしれない。関節をぐいっと押し込むと「ぱきっ」と鳴りますよ。痛いですよ。
「じゅうよーん」
「……」
親指だけはコツがいります。指を握って、引っこ抜くというか、フルーツをもぐ感じね。
「じゅう~ご~」
「ぎゃああああ!」
足の親指が一番痛いかもね。鳴らす方は気持ちいいよ。音がでかいし。
最初の頃はジタバタ逃げようとしていたが、もはや動きもしない。
「も、もう……」
ギブアップしようとしてるな。
ま、でもこの程度の言い方じゃダメよ。必死じゃないと。
「じゅうろーく」
「くっ……」
ま、ある意味覚悟はしてるよね。
全部の指を鳴らされるまではね。
「にーじゅーう」
「……」
耐えたぞ、ってことでしょう。
でもね、もう反撃の意思はないんすよ。これはただギブアップしなかったという薄っぺらいプライドを守れただけなんすよ。
もっかい方向を転換。
指よりも、鳴らすと痛いところがあるんだよね。
「にじゅー」
「!?」
顔は見えないが、恐怖と驚きが伝わりますね。
何すんだろーってね。
「いーち!」
俺は、右耳たぶを掴み、下に引っ張ってから、思いっきり右上に!
ビキッという音が鳴る。
「アッ――――」
未知の痛さで、驚いているのだろう。これ、痛いんですよ。
「にじゅー」
「や! やめてやめて」
左耳を掴んだら、必死さのある声が聞けた。
もっかい食らうのは心底嫌なんだろうね。
「はぁーん? 聞こえんなあ」
「そんな!?」
「なんかこう、まだ心の底から言ってないなあ」
わからせる、ってのはね、魂の屈服なんですよ。
「にー!」
「あああああああああああああ!」
痛いんですよ。ま、これで両手両足両耳が痛い状態ですよ。
しかし一切怪我はなく、血も出てないと。
「さって、次はもっと痛いところを……」
「やめてください。お願いします。どうしたらよろしいでしょうか……本当にもう痛いの嫌なんです、ごめんなさいごめんなさい」
よしよし。
わからせたな。




